「紅き久遠−−使徒再来、そして・・・」

 


パート1
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「・・・再び、我らが、こうして顔を合わせることになろうとは、な・・・」
「よもや、このような事態になるとは・・・」
「しかも、こちらの陣容は大幅に縮小されてしまった」
「確かに・・・。その我ら自身さえも半数以下だ」
「もはや、我らの命運は尽きたか・・・」


今より約一ヶ月前−−−誰とも判らぬ闇の中、不気味な声が集っていた。


「各国政府へのパイプは、新生ネルフによって、今や完全に寸断された」
「さらに言えば、延命措置として身体に埋め込んだ筈の、この機械も・・・
20年余りの時間には耐えられなかったと見える・・・満足に機能しておら
ん・・・」
「研究施設も同様だ。完動する機器は少ない。補繕に割く資金も、人員も既
におらん」
「それが、今回の人類再生から、我らがこのように会すまでに半年以上かか
った理由でもある」
「我らの身体に在るこのサイバーメカ・・・、動作保証は、あと一ヶ月もな
い。すなわち・・・」
「すなわち・・・『死』、か・・・」
「もはや、それを回避する術はない・・・」


暫しの沈黙が、その場を支配する。


「では何故、ここに集った?」
「・・・我らの取るべき道を、協議すべく、だ」
「道とな・・・。それはまた可笑しなモノ言いよの。フォフォフォ・・・」
「このまま死を待つか、・・・潔く自害して果てるか」
「潔く? 裏死海文書にこの身を捧げてより、そのようなセリフは、我らの
間には存在せん」
「・・・確かに・・・」
「では、もう一手の遂行を」
「ふむ・・・」
「我らをこの事態に追い込んだネルフ・・・憎っくき碇ゲンドウの係累に、
死を・・・!!」
「・・・だが我らの戦力は無きに等しい・・・どうする?」
「アレを使う・・・」
「・・・しかし、アレは破棄する予定だった筈のモノだ・・・」
「・・・ほんの数時間の攻撃が可能であれば、それで良い。ネルフとて、も
はや、エヴァを保有しておらん。きゃつらが、アレを防ぐ手だては無い」
「御意」
「異議無し・・・」
「では作戦の遂行を。必要なDNAを手にせよ。アダムの因子を・・・」
「奴等に死を」
「碇よ・・・我らが恨みの深さ・・・貴様の裏切りの代償、とくと味わうが
いい」



* * * * * * * * * * * * * *



シンジの周りで不穏な事態が起きてから一週間が過ぎた。ミサトの精力的な活
動にも拘わらず、依然、リツコの行方は判らない。セイジとヒカリは、意識不
明のままだ。

シンジはこの一週間、冬月を補佐する形で、寝る間も惜しんでネルフに詰めて
いた。誰もが、その潜在的な執務能力の存在を疑わない程に、シンジは以前と
は違う頼り甲斐のある姿勢を、スタッフたちに見せていた。そんなシンジを、
冬月は頼もしそうに眺め、彼にあらゆる事象を教示して、この一週間を過ごし
てきたのだった。

その日の午後、ミサトとシンジは冬月から呼び出しを受けた。打つ手が皆目無
くなっていた二人は否が応も無く、司令室へ急ぐ。


「何でしょうか、司令。どうして此処へ? 指令所では話せないことですか?」
「ふむ・・・。まぁ、そういう事になるか。他の皆には、まだ話せんからな」
「一体・・・?」
「葛城くん・・・、君はゼーレの事を何処まで掴んでいる?」
「・・・!」
「知っているのだろう? 使徒のことも、補完計画のことも、ある程度は?」
「・・・はい。加持から託された情報を元に・・・私も調べましたから・・」


冬月は一回肯いてから、苦い顔をし、言葉を押し殺すように吐き出していた。


「補完計画・・・。あれは間違いだったのだな。今の君たちを見ていると、
それが良く判るよ・・・。人は進化の果て・・・袋小路に在った訳ではな
かった・・・。補完は必要なかった・・・。そうだろ? シンジくん?」

「はい・・・。そう思います。あの時の・・・あの一体感は、補完計画だっ
たんですね? ある意味では理想の形かもしれない・・・。でも、思った
んです。他人が判らないから一つになりたいと願うのが人間なんだって。
何時までも適わない夢だからこそ、それが生きていく鍵になっているんで
す。逆に、完全に一つになってしまったら、今度は、きっと一つではなく
別々になりたいと、心から希求するようになっていたでしょう・・・」

「なるほど・・・。人とは、そういうものなのかも知れんな・・・」



冬月は、再び頼もしそうにシンジを眺めた。強くなったな、それが心からの
実感だった。しかし、今は感慨に浸るときでは無い。



「赤木くんと、あれから色々と話した・・・。MAGIによれば、シンジく
んがこの世界の復興を心から望んだから、我々も復活できたと、そういう
事らしい」
「そんなことが・・・僕になんか出来るとは思えません」
「フム・・・。しかし事実だ。第一使徒アダムの因子を持つチルドレンの君
だからこそ、可能だったのだ・・・」



ミサトが驚きの表情を浮かべる。シンジも驚愕したようだった。



「使徒の因子?」
「そう、だ。チルドレンとは使徒の因子を持つ者のことだ。エヴァが何であ
るか知っているね?」
「使徒を模して作られた人造人間・・・ですか?」
「その通り。つまり、エヴァは使徒だとも言えのだよ。そのエヴァを起動す
るには、全ての使徒の始まりでもある・・・アダムの因子を持つものが必
要だった・・・」
「・・・!」



冬月が語る真実は、二人にとっても重く深いものとなって耳に響いていた。



「でも、司令。他にも因子を持つチルドレンは・・・たくさん居たじゃない
ですか? シンジだけが復興を望んだからといって・・・」
「たくさん?」
「2−Aのクラスの子たちは・・・みんな、適応者ですよね?」
「・・・葛城くん・・・君は、そこまで知っていたのか・・・」
「ええ」
「形だけなら、そうだ、葛城くん。しかし、使徒の因子と言っても、第一使
徒アダムの因子を持つ者となると、ゼロといって良い。遺伝で伝わるもの
でも無いのだよ。まさしく神の気まぐれな選択に因る仕業としか言いよう
がないな・・・」


シンジには未だ事の次第が、飲み込めない。使徒の因子って何だろう? と
独り言を呟いている。


「鈴原くんも、そういう意味では真のチルドレンではない・・・。そして仮
にアダムの欠片を持っていても、自我が確立され切った大人では起動は適
わない・・・。エヴァは・・・エヴァの起動には、いや覚醒と言うべきか。
すなわち暴走こそがエヴァの真の起動に当るのだが・・・それには精神汚
染が不可欠だったのだよ・・・」
「そんなことが・・・」


精神汚染が必要だった・・・その事実は、辛い思いを殺して、レイやアスカ
を戦場に送り出したミサトにとって、衝撃以外の何物でもなかった。


「自我は必要だ。しかも完成されていない自我が。その微妙なバランスを満
たすのが14歳を上限とする少年・少女たちだったのだ・・・」
「そんな! リツコはそんなこと一言も!」
「精神汚染を受け付けない程、自我が完成された大人がダメな理由は其処に
ある・・・。ユイくんやキョウコくんがエヴァに取り込まれたのも、おそ
らく其処ら辺が原因だったのだろう・・・」
「なんてことなの・・・。じゃぁ、私たちは、使徒迎撃に名を借りて、シン
ちゃんたちを、わざと精神汚染に追い込み、真の目的は、使徒を撃退する
のでは無く、エヴァの暴走を狙っていたってことなの? あんな・・・あ
んな補完計画のために・・・!?」


そんなミサトの激昂にシンジは、彼女の腰に手を回し、微笑んで見せる。


「大丈夫だよ、ミサトさん。僕は、もうそんなこと位じゃ、自分を見失しな
ったりしない・・・・ミサトさんが、居てくれるし・・・ね」
「シンちゃん・・・」


ミサトは思わず、シンジの肩に自分の頭を預ける。冬月は好ましそうに其れ
を眺めていたが、咳払いをしてから口を開く。慌てて身を離す二人に微笑み
かけながら・・・。


「すまんな・・・話を続けるよ・・・」
「はい・・・」
「さて、と。この世の復活がシンジくんに依って為されたとするならば、だ」
「はい」
「シンジくん、君は葛城くんのようにゼーレという存在を知っていたかね?」
「・・・いいえ」
「なれば、君がこの世界の復興を望む際、ゼーレを除外して望んだ謂れは無
いのだな・・・」
「司令、其れって・・・」


ミサトは、冬月が言わんとしていたことに、ようやく気付く。


「そうだ・・・葛城くん。ゼーレを知らないシンジくんは、ゼーレごとこの
世界を呼び戻した・・・。そういうことなのだよ・・・」
「じゃあ、一連の事件は・・・」
「まず間違い無く、奴等だろう・・・」
「なんてこと!」
「結局、僕がこの事件を引き起こした・・・ってことですね?」
「それは違うぞ、シンジくん。確かにゼーレを蘇生させたのも君なのかもし
れん・・・。しかし、私たちの命を呼び戻してくれたのも君だ。君なんだ
よ。君がいなければ、今の我々の存在もない・・・。そこを忘れないで欲
しい」
「はい・・・」


冬月は傍らの引き出しからディスクを取り出すと、ミサトに渡す。厳重に封
印されていたものを、冬月がこの一週間かけて、解除の上、コピーしたもの
だ。


「そこに、碇が知り得たゼーレの全てのデータが在る。それをMAGIに分析
させ給え。赤木くんが拉致された場所の特定に役立つ筈だ・・・」
「! ・・・ ありがとうございます!」



* * * * * * * * * * * * * *



ミサトは、リツコが拉致されたその日の内に、リツコが指示した通り、ミサ
ト自身をMAGIへの直接アクセス権限に追加登録していた。更に言えば、
リツコをそのアクセス権限から外してもいた。それこそがリツコの指示の真
意であったのだ。自分が何らかの形で指揮を執れなくなった場合、或いは失
踪した場合・・・自分自身の権限を無効にさせること。それがミサトに伝え
られた指示だった。

リツコのアクセス権限を無効・再登録に出来るのはミサトのみ。逆にミサト
の登録を抹消出来るのはリツコのみ。単純なだけに、有効な防御手段であっ
た。

ミサトは、さっそく冬月から与えられたディスクを最優先で処理するよう、
指示を出すため、MAGIのシステムをリツコの部屋で立ち上げた。情報が
ゼーレおよびエヴァの真相という極秘事項に関わるものであるため、やはり
指令所からのアクセスを避けたのだ。

リツコを助けるためとは言え、今までリツコが知り得ていて、みんなが知ら
ない事実を、指令所で明らかにしていいものか、迷いがあった。ミサトにと
ってリツコは何があっても親友だ。その自信がある。しかし職場のみんなは
どうか。無用に、みんなのリツコを見る目が変わることだけは避けたい。そ
れが指令所でアクセスしないミサトの、個人的なもう一つの理由でもある。


「でも・・・いずれ全てに決着がついたら、リツコ自身の口から、みんなに
は説明させなきゃいけないわね。特に・・・マヤには、ね」


それまでは、本当に私たちの過去は終わらない。みんなが本当に、心の底か
ら笑えるようになるには・・・。

今までだって、シンちゃんが戻ってきてから、ホントに幸せだった。でも、
それは私、葛城ミサトだけが感じている「本当」に過ぎないのかもしれない。
ネルフのみんなが、本当に幸せになるためには、何が真実だったのか、ゼー
レが何なのか、辛くても、知らなくちゃならない。

知った上で尚、ネルフという機関を好きでいられれば、そして、みんながお
互いを信頼できれば、それが一番いい。私は、ここにいるみんなが好き。マ
ヤも青葉くんも日向くんも冬月司令も・・・みんなが幸せでいて欲しい。

それぞれが、それぞれの幸福を掴んでいって欲しい。だから。だからこそ、
そのためにも、今回のゼーレとの対決は避けられ得ないんだ。そして負けら
れない。何よりも真実の未来を手に入れるために・・・・!


「待ってなさい、リツコ・・・すぐに助けに行くからね!」


今回はゼーレに先手を取られているが、ネルフとて再生後、いたずらに時間
を過ごしてきた訳ではない。内部の保安、戦自・政府とのパイプ、MAGI
の体制、全てが、以前を上回る環境を整えている。今のネルフは、あの時の、
戦自が攻めてきた場合のように簡単にやられはしない。

必要以上に自分を鼓舞するミサトであったが、彼女は、一つ忘れていた。今
のネルフが、エヴァに代わる戦力を保持していない、ということを。




一方のシンジは、先ほど冬月から聴かされた話を反芻しながら、ネルフ病院
にセイジを見舞っていた。息子は肩と大腿を撃たれ、出血が酷かったため、
未だ安静状態からは抜け出せないものの、生命の危険は脱していた。


「まだ眠ったままか・・・」


顔色が落ち着いているセイジの姿を見たシンジは、ホッした様子で、ベッド
の隣に座る。セイジの赤毛を眺めている内に、記憶の中で、ずっと昔にアス
カを見舞った時のことを思い出していた。


「あの時の僕は、最低だったんだよな・・・、アスカ・・・」


ミサトの所に戻ってきてから、アスカを此処まで感じたのは久しぶりだ。ア
スカの長い豊かな髪の感触を思い出す。

そしてアスカの墓が荒らされていた事に思いが飛ぶ。アスカの願いで火葬に
ふしてから、シンジとセイジは海に出向いて遺骨を散布した。魂は天に還え
ったが、彼女の身体の名残は、ダイビングなど彼女が昔から好きだった海に
・・・アスカの瞳と同じ色の海に、還えしたのだ。

だから、あの墓所を掘り返した所で何が出てくる訳でもない。敵は−−−お
そらくはゼーレは−−−その事を知らなかったって事だ、シンジは独りごち
た。


「アダムの因子、か。アスカも持っていたんだ。エヴァの起動に必要なキー
を。じゃあ、もしかしたらゼーレは、それに委員長は・・・」


シンジがそこまで考えを進めた時、ジオ・フロント内に警報が鳴り響いた。
ネルフにとっても、第三新東京市にとっても、実に久しぶりの警報発令であ
った。

ミサトはゼーレの施設、研究所等の所在地分析結果をプリント・アウトし終
わった時に警報を聞いた。警報の大きさにビクッとする。昔は日常茶飯であ
った筈なのに、これだけ時間が空くと、この元作戦部長の自分が驚いてしま
うとは、全く情けない・・・と苦笑する。

自分の中の危機感の減退に忸怩たる思いを感じながらも、この数ヶ月がそれ
だけ幸せな時間だったことに思い至ると、決意を新たにする。絶対に、また
幸せを掴んでみせる。みんなと一緒に。

打ち出されたプリントを掴み取ると、指令所へ足早に向かいながら、携帯で
日向マコトを呼び出す。まるであの頃に逆行したような気分であった。


「日向くん? 葛城よ。一体何事? 警戒体制を飛び越して、一気に第一種
の警報を流すだなんて、使徒戦争の時にだって一回もなかった筈よっ!」
「あ、葛城さんっ、新東京湾に未確認物体が! そのパターンが・・・・」
「いいから続けてっ」
「は、はい。パターン・・・青。・・・し、使徒なんですっ!」
「な・・・!!!」


指令所へ向かうエレヴェーターでシンジと行き会う。シンジもミサトから使
徒襲来を驚愕の思いで聞いた。使徒? カヲルくんが最後だった筈だ。僕が
この手で・・・。あれで最後だった筈じゃなかったのか・・・?

ミサトはミサトで、物凄い勢いで戦略を組み立てていた。しかし、エヴァが
無い今、使徒をどうやって迎撃するのか、効果的な手段は見つからない。

シンジはミサトの思いあぐねてる表情を敏感に捉えると、携帯を取り出す。


「あ、ケンスケ? シンジだけど・・・うん、委員長は今のところ、大丈夫
だよ。え? いや、違うんだ。ケンスケに助けてほしいんだ・・・ネルフ
に来てくれないかな? うん、そうだよ。また使徒が来たんだ。・・・・
判った、ユミちゃんも一緒でいいよ。・・・うん、頼んだよ」


シンジがケンスケとの通話を終えた時、二人は指令所に入った。ミサトはシ
ンジを振り返る。


「今のは?」
「ケンスケを呼んだんだよ」
「・・・何故?」
「猫の手も借りたくなると思って。それに、きっとミサトさんの力になる筈
なんだ」
「え?」
「ケンスケの戦自に対する情報網は・・・スゴイんだ。ヘタしたらネルフよ
り詳しいかもしれないよ。冗談抜きで・・・。戦力の展開や確認時に、き
っと、いい考えを聞かせてくれるよ」
「シンちゃん・・・」


ミサトはシンジの真意を読み取った。これからとんでもなく忙しい時間が来
る。人手は足りない。作戦参謀的な陣容も無い。それを少しでも軽減させる
ように。私が、より動きやすくなるように・・・。そして何よりもケンスケ
くんを信頼して。

シンジは出来る範囲のことを、可能な限り迅速に対応してくれてる。しかも
ミサトから指示されるのでなく・・・自ら動いてくれる。理想的なサポート
だ。最良のパートナーなんだ、私たち。生活の上でも、仕事の上でも。「い
けるっ」、具体策は何も無いままだったが、ミサトにはそう信じられた。


「司令、今より私、葛城三佐は、現再興プロジェクト部長を休職、旧作戦部
長に復帰、使徒迎撃の任に就きますっ!」
「・・・いい判断だ。よろしく頼むよ」
「マヤ、このプリントのデータ、もう一回、MAGIに分析させて」
「はい・・・。ミサトさんっ、これって・・・!」
「そうよ、リツコが捕らわれてると想定される場所のリスト。もっと精度を
上げて絞り込んで頂戴。・・・急いでっ」
「はいっ!」


リツコが行方知れずになってから、憔悴した感じだったマヤは、魂が戻った
かのように、端末に向かった。周りを把握しているのはシンジばかりではな
い。ミサトも周りに気を遣いながら、その時の状況下で最高の仕事が出来る
ように最適な指示を出す。これが彼女を作戦部長の地位に就け、またリツコ
も一目置く、ミサトの優れた資質の一端であった。


「モニターに映像入りますっ!」


マコトの叫びで、一同はモニターを注視する。靄がかかったような中、輪郭
が次第に明確になっていく。既に臨海地区に展開していた戦自の戦車、ヘリ
の迎撃部隊が破壊され、いたるところから炎が上がっていた。


「あれは・・・っ!」
「まさか」


うっすら靄から見えてきた、その「使徒」の姿はまさしくエヴァンゲリオン
−−−ゼーレが造った量産型の白いエヴァ・シリーズ−−−であった。


「ありえん! もはや予備機も、ダミー・プラグも、パイロットもいない筈
だ・・・如何にシンジくんが知らなくとも、呼び戻せる訳がない!」


冬月がうめく。しかし衝撃はそれだけでは終わらなかった。指令所のスピー
カーを通し、叫び声が漏れてきた。狂喜に震えてる様な異常さを持った声だ
った。


「使徒のコクピットの音声、外部より此処へ、強制的にアクセスされていま
す!」


シンジは耳を疑った。自分は狂い始めているのではないか? こんなことは
有り得ない。在っていい筈がない。こんな・・・こんな・・・声を、此処で
なんか聞きたくはない! こんな懐かしい声は・・・今は、聞きたく・・・
ない!


<<あんたたちは邪魔なのよ! そこ、どきなさいっ! 誰にも・・・誰にも
私の邪魔なんか、させないんだからあぁぁっっ!>>


「アスカァァァッ!!」


シンジの悲痛な絶叫が指令所に響き渡る。それは、まさしく血を吐くような
叫びだった。



(パート2へ続く)
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