Close Your Eyes

 

はっきり言って、こういうのは苦手だった。

人前に出て派手なかっこうするなんて。

大学の学際で、ダンスパーティがあるんだけど、今までそう言うのに興味がなかった私。

一郎さんに誘われて出てみようと思った。

 

当日まで全然落ち着かなかった。

どんなのを着ていったらいいのかしら?

ただそれだけだった。

自分としては羽目を外したかったけどそんな勇気がないし、もし一郎さんに嫌われたら・・・。

そう思ったら、なかなか衣装が決まらない。

そんなある日のこと。

一緒に行こうと誘った、後藤さんから連絡があった。

「ごめ〜ん。その日は練習になっちゃってさぁ。行けなくなっちゃった。ほんっっっっと〜にゴメン!」

残念だけど、仕方ないわね

・・・・あ、そうだ!その手があったわ・・・。

 

胸元ざっくりのイブニングドレス。

凄く恥ずかしいけど・・・こんなのもいいわよね?

会場の入り口近くで一郎さんと待ち合わせ。

気が付くかしら?と思ったら、やはりやはり気付かないで辺りをきょろきょろしてる。

「一郎さん、こっちよ。」

思わず嬉しくなって、手を振って呼ぶ。

「智子・・・・だよね?」

「そうよ。どう、この衣装?」

「凄く綺麗だよ。それに別人かと思ったよ、その格好。」

そう・・・よね。

だって髪型はアップにしてまとめてるし、眼鏡じゃなくてコンタクトにしてるんだもの。

解らない方が当然よね。

「じゃあ、踊りましょうか?」

「そうだね。」

私にしては珍しく、一郎さんの手を引いて会場に入る。

 

ひとしきり踊って、すかっとしたからいつもは飲まないアルコールを少し飲んだ。

・・・美味しい。もう少し、もう少しと思って何杯か飲んでしまう。

 

熱い。

当たり前よねぇ。あんなにカクテルカブ飲みしたら。

あらっ?足下が・・・ふらふらと・・・してるのねぇ・・・・。

いけないわぁ・・・。ベランダに出て、少し酔いを醒まさないと・・・。

でもぉ、なんか他の人にぶつかってばかりよねぇ。

風が気持ちいい。ひんやりして。

ふうん。あの本のキャラクタもこんな感じだったのね。

「どうしたんだい?」

一郎さんが私に声をかける。

「ううん・・・・・、ちょぉっと酔っぱらっちゃったみたいなの〜。」

頭はわりにすっきりしてるけど、舌が回らなくなってる、感じ。

「飲み過ぎだってば、って、智子が飲むのは初めて見たなぁ。」

何故かは判らないけど、急に楽しくなった。

「うふふ、だぁってねぇ〜、お酒飲むの、今日が初めてなのぉ〜(はぁと)。」

ちょっとだけ嘘なのよね。高校最後の時に、みんなで飲んだけど。

一郎さんはちょっと困ったような顔をして腕を掴んだ。

「でも・・・・・ちょっと飲みすぎだよ?」

「そ〜んなこと、ないわよぉ〜。だいじょ〜・・・・あららっ!?」

手を振りほどこうとしたのに、足がもつれて危なく転びそうになった。

「ほら!もうダメだってば。」

「だ〜い〜じょ〜・・・・・。」

「だめ。さあ、帰るよ。」

 

「う〜ん、う〜ん・・・・。」

気持ちが悪かった。のどは渇くし、体が妙に熱い。

おかげで足下はふらふら。

「ねぇ〜、お水が飲みたい〜。」

もはや目の焦点すら合ってない。もちろん、コンタクトはきちんと付けていた(と思う)。

「じゃあ、ちょっとここで待ってて。動いちゃだめだよ。」

「わたしぃ〜、子供じゃないから〜。」

「はいはい。とにかく、大人しくしてて。」

 

矛盾してるけど、気分はよかった。こう、ふわふわした感じなのね。

何かは判らなかったけど、ちょっと腰を落ち着ける。そこはひやりとして気持ちよかった。

それが心地よくて、だんだん意識が遠のいていく。

上体が大きく揺れるのが自分でも判った。そして、自分の体がひんやりするところまでははっきり覚えてた。

 

それからまもなく、私を呼ぶ一郎さんの声がした。

「・・・・・こ、・・・・・もこ、智子!」

「え・・・・・一郎さん・・・・・?」

「何やってるんだ、こんなところで!!」

喋ってる意味が全然分からなかった。

「今、噴水の中で寝てたんだよ!?」

「え、噴水・・・で??」

「いくら気持ちいいからって、こんなところで寝ちゃだめだよ。」

その言葉を無視して、自分でも意外な行動に出た。

「ち、ちょっと!?」

一郎さんがバランスを崩して、私と同じ所へ転がった。

そう、私が引っ張ったの。

ふたりともずぶぬれになったけど、何故かお互いの顔を見て笑い出してしまった。

「自分で言うのも何だけど、水の中って気持ちいいな。」

「でしょう?」

「でも・・・・・噴水はまずいんじゃないか?」

「いいんじゃないの?たまには?」

もう支離滅裂になってるわねぇ・・・・・・。

「もういいだろう?さ、かえ・・・・・?」

またもや私は大胆な行動に出た。

自分から、一郎さんにキスをした。それもかなり激しく。

上からは噴水の水が降り注いでいる。それにも構わず、ふたりでずっとキスしていた。

いつもの軽い感じじゃなく、・・・・・ずっと深く・・・・・。

名残惜しいように彼から離れて、

「・・・・・こんな私は・・・・嫌いですか・・・・?」

と、思わず聞いてみた。いくら酔ってるとはいえ、大胆すぎると思ったから。

「大胆でも智子は智子。好きだよ、そんなのも。」

「あ、ありがとう。」

「でも、」

「えっ?」

小声でひそひそと話すように続けた。

「お願いだからこんな大勢の前は止めて欲しいな。ちょっとその気になっちゃうじゃないか。」

「もう、知りません!・・・・・でも・・・・・。」

「え?」

「今日だけは、いいですよね?」

今度は、普通に。

二日酔いを体験する前に、素敵な時間を過ごしたかったから。

 

END

 

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