セストレンに関する情報は断片的かつ抽象的で、なかなかその実像を特定できない。旧世紀の記録によると、「全てを統べる魂の器」がセストレンだとされている。「全てを統べる魂」は、おそらく全ての遺跡を制御するプログラムで、具体的にはセストレン・エクスシスのことであり、「器」とは制御プログラムが入ったフォルダと想像できよう。断言はできないが、セストレン=フォルダのようなもの、とみていいだろう。

 記録によると、「塔」はアレルセストレン(areru sestren=セストレンの下僕)と呼ばれていた。となると、セストレンをピラミッドの頂点とする中央集権的なシステムが想起されるが、どの塔からでも行き来できることを考えると、全ての塔と遺跡のネットワーク内にセストレンがあった方がしっくりくる。そうであるなら、セストレンを物理攻撃で破壊するのは不可能だし、万が一塔を守るドラゴンを倒したとしても、アクセス権が厳重に管理されているためセストレンに潜入できず、仮に侵入できても最強のドラゴン達に勝たねばならない。セストレン破壊は不可能なはずだった。

 具体的なセストレンの場所は、情報が少なすぎるので断言できない。「空間断層によって隔てられた空間」とのことなので、パンツァー世界とは連続していない別次元の時空なのだろう。別次元へ行くためには、現状ではワームホールで両次元を繋ぎ、ワームホールを通過可能な大きさに広げるしかないと言われている。塔は、セストレンとはワームホールを通じてやりとりをするわけだ。別空間をつなぐのだから、セストレン時空とパンツァー世界の時空、ワームホールは完璧に同調させる必要が出てくる。それを可能ならしめる存在は、やはり塔だけなのである。ただ、セストレンを含む塔のネットワークが実体空間なのか、それとも、ネットワークが作り出した仮想空間が、実体空間の相を成しているのかはよく分からない。そのあたりは、空間や時空の定義が固まっていない現状では断言は難しい。

 セストレンの空間は、パンツァー世界の空間の外側に存在する、ということになると、セストレン空間に全く別の世界からワームホールがつながってしまう可能性がある。要するに、セストレンがパンツァー世界と別の世界を仲介してしまうのだ。おそらく旧世紀の技術者もそれを認識していて、いつかセストレンを介して現れるかもしれない別世界からの訪問者を「絶対の客人」と称した。別世界の住人なので、排除が不可能な存在。賛成派から見ればareru ec paldeel(破滅の使い)であり、反対派にとってはareru ec sancitu(聖なる御使い)になる可能性があったわけだ。絶対の客人は、ドラゴン(ソロウイング)と乗り手と共に行動するわけだが、これには二つの可能性がある。

 まず一つは、セストレンの支配者とソロウイングは基本的に同じ存在であり、セストレンから排除されてもセストレンと交信可能であり、同じ存在であるがゆえに、セストレンの支配者はそれを阻止できない、という場合。ソロウイングは何らかの形でセストレンとつながっているので、絶対の客人の出現を知り、迎えに行くことができる。特に、ソロウイングが塔を封印している状態の場合、直接塔とつながっているのだからそれも容易だろう。

 最後は、セストレンの成り立ちにも影響してくる説である。セストレンの空間自体を、セストレンの支配者自身が作り出していると仮定すれば、ソロウイングも自分で同じような空間を作り出せるわけで、その空間を介して絶対の客人を招くことができる。

 どちらにしろ、ソロウイングとセストレンの支配者は、とんでもない存在だと言える。ある意味では、旧世紀のテクノロジーが到達した最高点である。果たして旧世紀の技術者達の思惑通りだったのか知りたいところだが、その答えは永遠に得られないであろう。

2001.05.09


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