ギリシア文明の功罪
 現在、ギリシアの風景イメージはどんな感じだろうか。青い海、ゴツゴツした岩肌に遺跡。まあだいたいこんな感じのイメージだと思われる。荒涼とした大地に壮大な遺跡がそびえ立つさまは確かに素晴しい。しかし、今でこそはげ山のギリシアの大地も、大昔は木がたくさん生えていたことをご存じだろうか。古代ギリシア人は、後先考えずに木を切りまくり、その結果表土が流失してしまったのである。確かにギリシア文明は隆盛を極め、残された遺跡群は世界的遺産だと思う。しかし、森林が消失した大地に、木の代わりとばかりに遺跡が残されているのは、何か本末転倒のような気がするし、パンツァー世界を思わせる「寂しい風景」だとも思うのだ。

イースター島の真実
 モアイで有名なイースター島でも、文明の興亡があったと言われている。言い伝えでは、少数派で支配階級の「長耳族」と、多数派で被支配階級の「短耳族」が住んでいたという。(長耳と短耳、逆だったかも)長耳族は、おそらく祭祀を司る立場だったのだろう、モアイを短耳族に作らせていた。イースター島の地層に残された花粉を調べると、過去には森林が存在したことが判明した。どうも、イースター島の場合モアイのために木を切ってしまったため、森林の存在しない島になってしまったようなのだ。その結果土地は痩せ、慢性的な食料不足に陥った。
 そして、両部族は激しく対立することになる。元々長耳族の支配に不満を持っていた短耳族は、食料の分配の不平等でついに堪忍袋の緒が切れたのだ。対立は戦争に発展し、多数の犠牲者が出た。どれほどの戦争だったかは不明だが、スペイン人がこの島を発見した時の数万人の人口が、数百人になってしまったと言うから驚きだ。かくして文明は失われ、モアイは黙して語らず…
 このイースター島の出来事は、パンツァーの旧世紀に非常によく似ている気がするのだ。そして、イースター島を「未来の地球の縮図」と考える専門家もまた多いのである。

やはり自然には勝てない?
 ギリシア文明とイースター島の共通点は、遺跡に石が使われている点だろう。おそらく、モアイや神殿が永遠にそこにあることを願って、石を用いたのだろう。しかし、それを実現するために木を切り過ぎて、自然を荒廃させてしまった面は否定できない。結局、両者とも「石の文明」で、木や自然に対する配慮が不足していた、と言わざるを得ない。

「木の文明」は正しいのか
 石の文明の対極にあるとも言えるのが木の文明であろう。木の文明の遺跡は、非常に発見するのが困難らしい。建物に木を用い、その木が朽ちてなくなってしまうためであるが、実は、「今も人が住んでいるので掘れない」というのも大きな要因だったりする。基本的に自然に依存した文明なので、自然を大事にするのは当然のことだ。そして自然が維持される限り、永々と続く文明なのである。よって、現在もその場所には人が暮らしていることがほとんどなのではないか。このように、今でも文明が何らかの形で続いている事を考えると、木の文明はそれなりに正しい「滅びない文明」といえるのではないかと思う。

人間と自然の関係は
 「木の文明が正しい」というと、何か安易なエコロジスト的考え方のように思われる方もいるだろう。しかし、よく考えてみれば、文明の発達した現代においても、人間は自然環境に依存している。しかも、人間は自らは何も産み出さない。植物達が太陽光エネルギーを変換した結晶、すなわち穀物等を食し、さらに植物が作り出す酸素を吸ってようやく生きているのが人間である。それゆえ、自然環境を大事にしない文明は絶対に続かない。これは自明の理ではないだろうか。
 そして、木の文明は大抵「輪廻転生」を基本にしている。転生はともかく、輪廻という考え方は科学的に非常に正しい考えのような気がする。自然界では、物質がグルグルグルグル輪廻(循環)しているし、その循環の中には人間も入っている。ある意味人間と自然は一体なのであって、自然を汚染すると人間の身体も汚染されてしまう。これぞまさに「因果応報」というべきだろう。

現代文明は滅びる?滅びない?
 現代文明は、「循環」がうまくいっていないと言える。自然から過剰に糧を得て、廃棄物を過剰に自然界へ放出している。そのせいで自然は破壊され、そのしっぺ返しを食らっている状態である。しかし、極端なことを言えば、自然から何も搾取せず、何も捨てなければいい話ではないか。少なくとも、技術の進歩で自然への負荷をかなり減らす事は可能だと思う。人間社会内で、なるべく循環させることができれば、自然環境は維持され、人間がしっぺ返しを食う事もないだろう。それこそが持続可能な文明、すなわち「滅びない文明」であろう。

 だが、そうは分かっていても簡単にはいかない。というのも、現代文明を動かしているのが経済で、現状では経済システム自体が「大量生産・大量消費・大量廃棄でないと儲からない」形になっているからだ。アメリカ式農業は大量生産で儲かるかも知れないが、土壌への負担はあまり考慮されておらず、土地の荒廃が進んでいる。廃棄物をリサイクルしようとしても、儲からないのでうまくいかない。現在の経済システムは、どうしても自然破壊の方向に文明を誘導してしまうのである。この流れを逆にする、すなわち「自然への負荷を減らせば減らすほど儲かる経済システム」にすることができれば、現代文明はずっと続くはずだ。

2000.6.19


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