セストレン

 今回、再度登場したセストレン。「世界回路」という別名、遺跡が端末でそこから情報化されることでセストレンに進入でき、セストレンから各端末である遺跡に転送可能であることを考慮すると、セストレン=世界回路は、遺跡ネットワークであり、情報化された非物理的な空間であると推察できる。セストレンは遺跡を管理統括するが、セストレンの維持は各遺跡の活動に依存しており、両者は補完関係にあると考えてよい。そしてこれらの推察は、アゼル事件終結時のPDAの出した結論とほぼ同じである。全ての遺跡が機能停止したら、セストレンも維持できなくなり消滅すると思われるが、アゼル事件の最後に、セストレンに突入したドラゴンの出した「全遺跡停止命令」は完全に行き届かず、一部が活遺跡として残ったために、セストレンは今でも存在するのだ。
 もう一つセストレンの機能として、世界中の情報を収集するというものがあることが判明した。端末である遺跡が情報を集め、セストレンに保管しておくのだろう。どうしてこのようなことをするのか不明だが、旧世紀賛成派が旧世紀の秩序維持のため、人類監視のために情報収集をしていた名残りではないだろうか。情報社会の必然として世界回路が生まれ、やがて為政者は世界回路を利用して全てを監視しようとした。まあ、そんなところか。その後、世界回路に全遺跡を統括する管理プログラム「セストレン・エクスシス」が置かれたのは、一番侵入が困難だからであろう。
 そうなると、世界中に情報収集専用の遺跡が密かに多数存在する、という想像も一概に突飛な発想とはいえまい。ゲオルギウスには上空に向けてレーザーを定期的に撃ち続ける謎の構造体があるが、その上空の静止軌道に監視衛星があるのかもしれない。もっと言えば、情報系構造体やエンジンにだって情報収集能力が備わっていてもおかしくない。そうやって全てを管理しようとした賛成派は滅び、セストレン・エクスシスも消えたが、これからもセストレンは情報を集め続けるのだろうか。

セストレンのマスターという存在

 今回のドラゴンは、セストレンのシステムから「マスター」と呼ばれていた。そもそも、塔を破壊するドラゴン「ソロウイング」は、セストレン・エクスシスと呼ばれるセストレンの管理者の一部であった。それゆえ、ソロウイングとセストレン・エクスシス本体は基本的に外観がほぼ同じであり、それゆえソロウイングは「あるべき姿」なのである。
 ドラゴンはアゼル事件の最後で、本来のセストレン管理者を破壊し、一時的に自らが管理者となって全遺跡に停止命令を出したが、全て停止するまでに至らず、セストレンも消滅しなかったので、ドラゴンはやむなく(?)セストレンに留まることにしたようだ。現在のセストレン管理者はドラゴンなのである。
 ところで、ドラゴンは最初、乗用獣クーリア「ラギ」として生まれた。ゆえに、ドラゴンの中には塔破壊の意志というソロウイングならではの要素と、ラギとしての要素が共存している。セストレンの管理者、すなわちマスターはソロウイングとラギのことである。ソロウイングは、使命であるセストレン管理者の破壊は果たしたので、特にこれから何もすることもなく、セストレンで眠り続けることにしたが、ラギは自分の意志で地上に戻ることを望んだ。ラギはどういうわけか、オルタを陰ながら見守り続け、ドラゴンメアに襲われたオルタを救った。これは旧世紀の使命などではなく、ラギ自らの意志による行動だ。
 ラギは自分の意志で戦い、85年の生涯を終えた。ソロウイングは、自分の分身の行動をどうみているのだろう。彼が地上に舞い戻る時は果たして来るのだろうか。

セストレンの性質とエッジ君

 4作の中で一番不幸な主人公はエッジである。「最初から死んでいた説」はとりあえず否定された形だが、「セストレンから還って来られなかった説」は根強い。根拠の一つにセストレンの特殊性があり、特殊な空間のセストレンからは出られない(説1)、セストレンは最後に消滅したのでエッジも消えた(説2)、と考えるのはなかなかに説得力があった。
 しかし、その後もセストレンは存在しているので、説2は完全に否定された。さらに、セストレンから遺跡への転送もあっさりとできることが判明し、説1もかなり疑わしくなった。もしセストレンに閉じ込められたとしても、セストレンで肉体が崩壊することはなく、加齢もしないということで、少なくとも「エッジ消滅説」は否定されたことにはなるか。
 こうなってしまうと、「エッジはドラゴンによって転送された」とみるのが最も自然である。しかし、それを示す資料はなく、違うことを示唆するような資料が多いのが実情だ。無罪を信じ、状況的にみても無罪というのが自然なのだが、現場からはなぜかエッジ君の指紋が出て来る…そんな感じだ。
 これはほとんど愚痴になってしまうが、エッジ君を他の主人公と同列に扱ってほしいのだ。他の連中はドラゴンに出会うことで世界について考え、ドラゴンと別れた後の行動で大きな足跡を残した。それなのにエッジへの仕打ちは何?…というのが正直な感想である(もはや「残された謎」じゃねえ(笑))。
 それに、オルタのドラゴンがあんなにあっさり遺跡に転送され、あろうことかマスターでも何でもないアバドがあっさりセストレンに出入りしてるのを見ると、一体AZELの苦労は何だったんだと怒りが湧いてくる。これでエッジ君はセストレンの外に出られませんなんて詐欺ですよ。

オルタの正体とアゼル・エッジの行方

 オルタの両親はアゼルとエッジとみてまず間違いないだろう。ドローンであるアゼルは、子孫を残すことができないのだが、セストレン内でなら人間との間に子孫を残すことが可能であるようだ。物理的存在はセストレンに転送される際、例外なく情報化される。情報化された存在が生物ならば、情報化された生物同士で情報的交配が可能であり、これは生物学的交配と同義ではないかとシーカーの文献に記してある。情報化された存在は、セストレンの端末でもある各遺跡に転送される際、物理的存在に再構築される。情報的交配で生まれた「情報的子孫」は、端末の遺跡に転送されることで物理的な実体を持った生命になるのである。オルタもそのようにして誕生したと考えられる。
 シーカーの調査によれば、アゼルはオルタ誕生の地である遺跡に向かい、セストレンに到達したことが確認されている。しかしエッジの姿は確認されていない。アゼル事件後エッジがどうなったか不明だが、少なくとも以下のどれかであると思われる。

1:どこかの遺跡に転送された。

2:セストレンにずっといた(若いまま)

 セストレンに入ったオルタとドラゴンは、マスターの命令であっさり帝都に転送されている。それゆえ、エッジを転送できないというのはあり得ない話である。仮にセストレンから何らかの理由で出られなかったとしても、情報化されたエッジは若いままきっちり保存されるはずである(オルタのドラゴンは寿命が来て?死んでしまった。セストレンにいればそんなことはなかったであろう。加齢はあくまでも物理的現象なのである。)。エッジもセストレンにいなければオルタは誕生しないので、エッジは「何らかの理由でセストレンにずっといた」と考えるのが妥当かもしれない。
 さて、情報的交配とはいかなるものなのか。個人的には、オルタは、アゼルとエッジが作り出した「意識融合体」なのではないかと思う。お互いの意識の深い所、いわば魂が触れあうことで生じる意識融合体が「情報的子孫」となるのであろう。当然、そうするためにはエッジたちは生きていなければならない。情報的交配が、「意識融合体を産み出す作業」であるからこそ、異種間でも、本来は生殖能力のないドローンでも子孫を残せるのである。極端な話、人間とドラゴンとで意識融合体を作り出せるかもしれない。
 問題は、アゼルとエッジのその後である。シーカーもその行方を把握していないという。セストレンで2人が消えてしまったというのはセストレンの性質上考えにくいことである。アゼルは、アゼル事件後シーカーと全く接点がない。エッジを探すならシーカーを頼ればいいのに頼っていないところに、アゼルがシーカーの思想に全面的に賛同していないことがうかがえる。となるとエッジとともに独自の道を求め、シーカーの目が届かないところで活動している可能性もある。でもオルタはシーカーに預けたのか。うーん。
 オルタのドラゴン(ラギ)がセストレンで、ソロウイングに言われた言葉の中に、「友人達によろしく」というものがある。ラギおよびソロウイングにとっての友人達とは誰なのだろう。それがエッジたちであることを希望したいところだ(っていうか他の候補はガッシュぐらいだろ)。

アバドの正体と賛成派の真実?new!!

 アバドの正体を論じる前に、アバドの眠っていた遺跡の存在理由を考察してみたいと思う。調査によれば、かの遺跡は地面に露出していない秘匿された遺跡であり、何かを長期保存するための施設ではないかといわれている。アバドの行動から総合的に考えると、あの遺跡にはアバドの主人である旧世紀人が眠っていたとみてほぼ間違いないだろう。そして、アバドの言動からみて、この人物はいわゆる賛成派ではないかと思われる。アバドは、賛成派の人間を休眠させ、環境再生が完了した後に覚醒させることを使命としていたのだろう。
 ところで、アバドの主人は賛成派中枢のひとり、またはごく一握りの指定を勢力であると想像していたのだが、それにしては古えの主人達という表現は抽象的すぎる。アバドにとっての主人は賛成派そのものではなかったのか。要はこういうことである。あの遺跡は、少数の人間のために作られたと考えるにはいかにも広すぎる。おそらく数万、数十万の人間が休眠できる施設である。当時、賛成派がどれだけいたのかは不明だが、個人的には賛成派もの大部分を収容できると思う。また、このような遺跡が他にも存在する可能性もあり、その場合は賛成派すべてを収容することができる。
 賛成派のためのシェルターが用意されていた事実が示すことはただひとつ、旧世紀滅亡の直接原因ともいわれる攻性生物の暴走は賛成派が仕組んだものである可能性が高いということである。自分たちが避難してから塔を完全起動させ、地上に残された人類を滅亡同然にさせれば、もう環境再生を阻むものは何もない。自分たちは環境再生か終わったら地上に戻り、再び君臨するつもりだったのか。
 特別な方法でないと入れないはずの世界回路への進入口だが、かの遺跡に用意されているのも仮説を補強するものだと思う。セストレンは「絶対不可侵の遺跡」のはずだが、賛成派はやはりその限りではないようだ。
 逆説的な言い方になるが、自らをも間引きの対象に入れるより、自分たちは安全なところに避難して他者を間引く方が筋は通っている気がする。いずれにしろ、自らの属する人間という種族を間引きしようという発想は、通常の人間ならば出てこない発想である。人間社会や自然環境などを、神的視点で考えることに慣れ切ってしまった賛成派ならではの考え方ではないだろうか。彼らは自らも人間であることを忘れてしまったのだ。


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