「塔」起動実験報告書
「塔」発見〜引き上げまで

 帝國歴89年2の月18日、帝都近海の海底に、微弱な動力反応が探知された。予備調査の結果、これは休眠状態の遺跡のもので、起動時の動力指数は帝國の保有するあらゆる遺跡のそれを凌駕しうると試算された。慣例に基づき、予備調査によって得た情報を皇室伝承と比較したところ、当該遺跡は、旧世紀の禁断兵器「塔」の一つであることが判明。皇帝陛下の勅命により、全ての発掘作業は中断され、塔の再起動に全力が注がれることとなった。塔の休眠状態を破るため、第2機甲連隊の全空中戦艦のエンジンから動力を引き出し、外部刺激として使用した。塔が起動準備段階に移行し、完全に浮上するまでには、12日間の連続稼働を要した。

ドラゴンの出現

 塔の引き上げ成功を機に、本格的な調査が開始されたが、起動に必要な要素の解明は困難を極めた。外部刺激実験も引き続き行われたが、浮上以後、明確な反応は確認できなくなっていた。停滞した状況を打破したのは、辺境で入手された、情報保存系の発掘物であった。それに記録されていた情報を分析した結果、塔はドラゴンと密接な関係にあることが判明したのである。時を同じくして、帝都東方97000リオンの地点にて、2頭のドラゴンが発見された。第9発掘所方面へ飛行中のドラゴンを捕獲するため、ただちに国境付近に捕獲部隊が展開された。だが、ドラゴンの戦闘力は、現存する兵器をはるかに超えるものであった。建造中の試作兵器をも投入した深夜の戦闘は、捕獲部隊と発掘所の全滅という、最悪の結果に終わった。

塔の起動と自爆

 発掘所を破壊したドラゴンが、帝都防衛線に接近した時点で、軍司令部はドラゴンの捕獲を断念。残存部隊をもって迎撃にあたったが、撃滅は不可能であった。防衛線を突破した2頭のドラゴンは、戦闘を行いつつ、帝都を経由して塔に接近。これと前後して、塔の活動に変化が生じ始めた。まず、動力反応の上昇とともに、海中から大規模な攻性生物群が出現。さらに、外殻が展開し、1頭のドラゴンを格納したのち、完全起動状態に入った。しかし、もう1頭のドラゴンの突入によって、塔の動力は暴走、自爆して完全に消滅した。この直前、塔に収納されたドラゴンが巨大化して、もう1頭と最後の戦闘を行ったという報告も存在するが、その真偽は不明である。

塔による被害と新防衛構想

 帝都内におけるドラゴン同士の戦闘、海中から出現した攻性生物の攻撃、さらには塔の自爆によって、帝都の約6割の地域が壊滅的打撃を受けた。幸い、王宮とアカデミーの被害は軽微なものであったが、これを機に帝都(特に王宮)の防衛構想が大幅に見直されることとなった。その結果、超大型空中戦艦「グリグオリグ」の建造が開始されたのである。帝都上空を周回するグリグオリグは、それ自体が宙に浮かぶ王宮である。これが完成した暁には、たとえドラゴンといえども、皇帝陛下に危害を加えることは不可能であろう。


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