涙々

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さすがに草木も眠ると言われている時間帯。深夜救急外来当直といっても患者は私だけだった。これで待たされたら「おいおい、ふざけんじゃないよ。こちとら怪我人だよ。痛いんだよ。我慢できないんだよ。それをこんな扱いしたら暴れちゃうよ。」などとのたまいつつ大暴れしたのち、「ごめんなさい。改心しました。お願いですから早く治療して下さい。」と泣きつかなくてはならないトコロだった。

早速診察室に通され、ベッドに横になる。もうこれだけのことが苦痛でたまらなかった。

そうこうしているうちに先生がやって来た。そして私の足を見るなり

 

先生 「ん〜。ちょっとひどいですね。とりあえずレントゲン撮りましょうか。」

 

と言って私はまたしても移動することになった。しかしベッドに横になるだけでも苦痛だったのに、また起き上がって移動して、更にまた横になってなんちゅう作業は出来そうもない。

さすがに看護婦さんたちも移動は難しいと思ったのか、ベッドごとレントゲン室に移動することになった。助かった。

しかしレントゲンを撮るために足の向きを変えることだけはやらなくてはならない。

 

先生 「もうちょっと足をこっちに向けてくれませんが?」

 私 「ん〜。限界です。」

先生 「もうちょっと頑張って。」

 私 「だからもう限界ですって。」

 

そんなやりとりを繰り返しながら必死こいてレントゲン撮影は終了した。今までこんなに苦労してレントゲン撮影したことはなかったぞ。苦労した分いい写真が取れるんならいいが、所詮はレントゲン。どう頑張ったって骨しか写りゃしない。どうせならもっとこう、楽に撮影できるヤツはないもんかね。

やがて処置室に出来上がっだ写真をもって先生がやって来た。そして妻が処置室に呼ばれた。いよいよ症状がはっきりする。

 

先生 「えっと。まずですね、足首なんですけど、脱臼してますね。」

 妻 「はい。」

先生 「それとくるぶしのところですが、数箇所骨折してます。」

 妻 「はい。」

先生 「それとここの、スネの部分も骨折してますね。」

 妻 「はい。」

 

素人の私が見ても骨折と診断ができるほどに、見事なまでにポッキリ折れているのが分かる。ここまで見事に折れているとかえって気持ちがいいくらいだ。いや、めっちゃ痛いんですけどね。

階段で転んで骨折か。情けない話だな。ここまでポッキリやってると、復帰は夏くらいか。あ〜ぁ、今日のエントリー代、無駄になっちゃったなぁ。

痛いことは痛いが、先生の診断を意外なほど冷静に聞くことができた。ふと横を見ると、妻は泣いていた。

子供の頃から骨折慣れ?している私でもここまで見事なレントゲンは見たことがない。妻には相当ショックなシロモノだったらしい。

 

「奥さん、大丈夫ですよ。ちゃんと治りますからね。しっかりして下さいね。」

 

看護婦さんたちの励ましの声にうなづく事しかできずに泣いている妻。

 

「ごめんな、ごめんな。」

 

私は、ただ謝ることしか出来なかった。







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