呼吸法

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運びこまれた病院は地域でも大きな病院だけあって、私の周りには先生やら看護婦やらがワラワラと集まってきていた。

しかし特に何してくれるワケでもなく、レントゲンを見たり何やらあやしげな機械を私に取り付けていた。

その間も痛みに耐えながらうめいていたが、みんなそんなことは知ったこっちゃないと言わんばかりの顔をしていた。

最初の病院の看護婦さんたちは何かと声をかけてくれたり励ましてくれたのに。こっちの看護婦さんたちって冷たいのね。

そんなことを考えていると、なんか指先の感覚がヘンだ。ちょっとピリピリしてきている。なんじゃこりゃ? もしかして骨折したことと関係があるのか? まぁ寝ているカッコウが悪くてちょっと痺れているだけかも知れんし、たいしたことないんでほっておくコトにした。

トコロがこのピリピリがそのうちビリビリに変わって、今じゃ手足が痺れまくり状態。ヘンだ。こりゃ絶対ヘンだ。

ひとりパニックに私に気がついた先生が話し掛けてきた。

 

「指先とか痺れていませんか?」

「指先どころか手足が痺れまくりです。」

「もっと深く呼吸するようにして下さい。」

 

なんかこの痺れの原因は呼吸にあるらしい。呼吸方法が悪いのか。もっと深く呼吸しろって言ってたな。じゃぁリラックスして、深呼吸をするみたいに。

すぅ〜。はぁ〜。すぅ〜。はぁ〜。

って出来るかい! こっちは痛いんだって。めちゃめちゃ痛いんだって。タンスの角に小指だけジャストミートしたときよりはるかに痛いんだって。分かる?

じゃぁ妊婦さんが出産の時にやるヤツ。なんだっけ。ラマーズ法だっけ。名前なんかどうだっていいや。よっしゃ、早速実行。

ひっ、ひっ、ふぅ〜。ひっ、ひっ、ふぅ〜。

陣痛が。陣痛がぁ〜。って違う! 子供は生まれんのだ子供は!

この状態で深く呼吸するもなにもあったもんじゃない。何やっても長続きせず、結局もとの浅い呼吸に戻ってしまう。

深い呼吸が出来ないと分かると、今度は私の口と鼻を覆うように、紙袋が装着された。この紙袋に吐いた息をもう一回吸うことで痺れが取れるということらしい。

私の呼吸に合わせてポコポコ動く紙袋。冷静に見たら結構面白い姿に違いない。

長男が見たらきっとお父さんだけ面白い遊びしてるって、僕もやるって飛んでくるだろうなぁ。なんちゅうか、病院だったらさ、なんかこう、もっと治療器具らしいもんはないのかね。せめてビニール袋にして欲しかった。

しかし紙袋の効果はたいしたもんで、そのうちに手足の痺れが取れてきた。

 

「一番強い痛み止めを打ちましたからね。だいぶ楽になりますよ。」

 

人が紙袋と戯れている間に、どうやら痛み止めの注射を打ったらしい。普段なら苦手な注射だが、今は足の痛みに気をとられていて、全く痛くなかった。いつ打ったのかわからんくらい。

そのうち痛み止めが効き始め、少し楽になってきた。このまま手術かと思ったが、どうやらまずは病室へ行くらしい。

まだ起きている人も少ない早朝、紙袋を顔に装着したままベッドに寝かされ、病室まで運ばれていった。







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