天使か悪魔か

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病室に入ると、皆起きてはいるようでしたが、とても静かな病室です。痛み止めもそれなりに効いており、私も落ち着いてきていました。

こうなるといつまでも紙袋を呼吸と共にポコポコ動かしているのもみっともない。口から紙袋を外して窓の外を眺めてみます。

これからしばらくお世話になるであろう病室。昇ってくる朝日で窓の外の景色も姿を現してきました。

入院。ほんで手術かぁ。

ほんの何時間か前は今年の開幕戦に向けて張り切っていたのに。これが今じゃベッドの上。完治までにどれくらいかかるか分からないけど、半年は捨てたようなもんだな。

普通はもっと落ち込むのかもしれませんが、気持ちはあっちゅうまに切り替わっていました。

もうさ、やっちまったもんはしょうがないじゃん。ま、こうなったら早く直すだけだよな。

痛みさえなきゃ、いくらでもポジティブな方向に持っていける。痛みさえなきゃね。

看護婦さんに言わせると、痛み止めは打ってから6時間たたないと次の痛み止めが打てないそうです。しかしいくら強い痛み止めだっちゅうても6時間も効きやしません。せいぜい3時間がいいトコだったりします。

私が痛み止めを打ってからそろそろ3時間。じわじわと痛みが復活してきます。っていうかメチャクチャ痛いです。

今まで痛み止めが効いていて楽してたんで、急に痛みが復活すると大変です。

おいおい、こんなに痛かったか? 今まで出番を抑えられてたからってさ、ちょっと張り切り過ぎなんじゃ? もっとこう、徐々に慣らしてからとか優しく出来んもんかね。

いくら訴えかけても全て却下。聞いちゃくれません。病室でひとりうめいている私。他の患者さんには迷惑以外の何者でもありません。

このまま後3時間もこの痛みに耐えるのか。ムリ。そりゃムリです。私にスーパークロスのトリプルジャンプをナックナックをキメながら飛べっていうのと同じくらいムリです。

そんな私を見かねた看護婦さんが、座薬を持ってきてくれました。効き目は前に打った痛み止めより弱いですが、種類を変えれば6時間待たなくても使うことが出来るんだとか。もっと早く教えて下さい。

痛み止め以外にも点滴だのなんだのと、いろいろ面倒を見てくれる看護婦さん。普段お世話になることもないんで、何とも思っていませんでしたが、たくさんの患者の面倒をみながら忙しそうに走り回っている看護婦さんをみていると、『白衣の天使』っちゅう言葉がホントにピッタリだと思います。ちなみに白じゃなくて淡いブルーでしたが。

そうこうしているうちに、担当医の先生がやってきました。

 

先生 「レントゲンの方を見させていただいたんですが、まずこのスネの部分の骨折ですね、こちらの方は手術しなくても大丈夫です。」

 私 「あ、そうなんですか。」

 

手術しなくてもいい。なんだ。意外と軽症なんじゃん。あの当直医の先生ったら脅しちゃって。このままいきゃ手術無しでもいいんじゃない?

そんな考えがチラッと頭をよぎりました。

 

先生 「それでこの、足首の方なんですけど、こちらは手術が必要です。ただかなり酷く折れているんで、手術しても元通りに回復するのは難しいかもしれません。」

 私 「っていうことは?」

先生 「日常生活に支障はないでしょうけど、激しい運動をする際には痛みが出ることがあるかもしれません。」

 私 「そうですか。」

 

話をまとめると、足首の部分はボルトかワイヤーで固定することになるらしいが、ちょうどアキレス腱の部分にも骨折箇所があり、そこにワイヤーを入れるのは難しいらしい。ズレが比較的少なく、このまま治癒させてもわずかなズレで収まる可能性が強いため、リスクを犯してワイヤーを入れないほうがいいとの判断。で、その結果が痛みとして現れる可能性があると。

やっぱり手術なんじゃん。激しい運動の際に痛みが残る可能性かぁ。モトクロスはどうなんだろうなぁ。やっぱり痛いのかなぁ。

自分じゃどうしようもないコトなんで、先生に任しとくしかないでしょ。ここまできたらもう、なるようになれって感じだ。

 

先生 「とりあえず、脱臼している足首をはめます。これでかなり楽になりますから。」

 

そういうと看護婦さんが私の足にのしかかってきた。しっかりと押さえつけられる私の足。んでその足を先生がグリグリやり始めました。

 

 私「◎△◆×!?※」

 

痛いなんてもんじゃありません。いきなり何すんのさ、あんた!

足を動かそうにも看護婦さんにしっかり押さえ込まれてて動きません。起き上がろうにも看護婦さんの背中に阻まれて起き上がることも出来ません。まさに考え尽くされたポジショニング。完璧です。

 

先生 「はい、はまりました。どうですか? 楽になりましたか?」

 私 「さっぱり分かりません。」

 

ちくしょ〜。痛すぎだ。何が『白衣の天使』だ。前言撤回。悪魔の手先だ。あんたたちは。もうちょっとこう、思いやりのある接し方は出来んもんかね。

だからといってどういう抑え方が思いやりのある抑え方なんだか分かりませんが。例えば背中を向けずに前を向いて抑えるなんちゅうのはどうですかね。そうすりゃ痛みに耐え切れずに飛び起きた際に綺麗に看護婦さんの胸に飛び込んでいけると。

痛みに負けそうな患者に看護婦さんの熱い抱擁。これです。まさに男の夢。男の浪漫。次回骨折&脱臼で運び込まれた際はぜひお願いします。しかしそれしきのコトの代償に骨折&脱臼じゃワリが合いませんけど。

こうして半泣き状態で入院初日は過ぎていきました。







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