ジャイアントトレバリー釣り

 たまに南の島にロウニンアジを求めて出かけて行きます。
このロウニンアジ、ジャイアントトレバリーと呼ばれ、略してGTです(車ではない)。このGTに何年か前から恋をしていまいました。
恋い焦がれてもこの愛しいGTはスッゲー力持ちで簡単にいうことを聞きません。
それに遠距離恋愛ですから簡単には会えません。
ですからよけい恋しいのです。

 このGTに会うためには、まず身体を鍛え、ものすごく高い道具を揃え、そして飛行機に乗って、南の島まで行かなくては会えません。ガイドを雇い、船をチャーターし、海に出てルアーを投げ続けます。そのルアーは20センチを超え、すりこぎに針がついたようなものです。重さは100グラムから150グラムくらいでしょう。これを一日中、海に向かって投げ続け、巻き取り続けます。もう汗が噴き出て、膝ががくがくするほどの重労働です。これを仕事にしたら、そうとういい日当がもらえます。しかし恋ですから、ちっとも苦になりません。大きくて力持ちな、素敵なGTに会いたくて、ひたすら投げ続けます。そしてたまに、巨体な水柱とともに大きな魚がルアーめがけて襲いかかってきます。もう心臓バクバクです。
運良く魚が針にかかると、しばらくは怪獣のような力持ちと綱引きです。
以前は、竿が折れたり、リールが壊れたり、針が伸びたり、糸が切れたりとトラブル続きでした。しかし今は道具が良くなったことにより、タイマンで魚との綱引きです。しかしこれは人間の身体に相当の負担をかけます。腰を痛める人もいます。
引いたり、引っ張られたりを繰り返すうちに魚も疲れてきます。(人間もヘトヘト)そしてめでたくGTを船にあげますと、なぜか、まな板の鯉のように微動だにしなくなります。“やるならやれ”といった雰囲気です。
これに較べカツオやシーラは往生際が悪く、船上でバタバタと暴れ、自ら頭をぶつけ、血を吐いて絶命します。
こんなりりしいGTです。急いで針を抜き、写真を撮って海に返します。
またGTはどこの国でも大切な観光資源です。必ずリリースです。
 
  こんなGT釣り、お金も相当かかります。体力も相当必要です。挙げ句の果てに逃がしてきます。バカの何重唱なのですが、自分のなかに眠っていた、狩猟本能のようなものを目覚めさせてくれます。
命をかけて釣りをするなんていうと大げさかもしれませんが、そんな気分です。
それにしても“ジャイアントトレバリー”金の掛かる、世話のやける、グラマラスないい女です。