バイクレース

20代の後半、私はエンデューロレーサーだった。
レース専用バイク(公道走行不可)トランスポーター(バイクを乗せる車)を買い、週に2回は河原に爆音を轟かせていた。
私は草エンデューロレース(野山を走る)に出場し・・・・・遅かった・・・・・涙!(いいわけですが公道ではそこそこでしたよ!!)

草レースといっても、みんな真剣です。
気分は世界選手権!!。
マシンの整備にもぴりぴりとした空気が張りつめます。
メーカーチームとの違いはレース前のバイク整備している横で妻や友人が真剣に焼き肉の用意をしていることだけです!!
それでもレース10分前になるとぴりぴりした空気があたりを支配します。
いよいよ、スタートラインに並びます。
そうなると、もうぴりぴりを超えて、キーンといった緊張した空気が支配します。
スタート1分前の表示。エンジンスタート、ブルルルルルッンと全てのバイクのエンジンが目覚め、そして10秒前の表示。
エンジン全開、オイルの焼けた匂いが充満し、ゴーッという爆音にコースが包まれ、山が爆音で震えます。(かつて福島県で270台一斉スタートのレースに出場したことがあった。それはそれはすごい爆音)
そんななか、音はだんだん聞こえなくなります。
聞こえるのは自分の心臓の鼓動だけになり、ドクンドクンと心臓が体中に血液を送っているのを感じます。
そのとき“死んでもいい”といった異常な興奮状態になります。
さほど競争に熱くならない私でもそんな気分になります。
それはすごく怖くて、すごく気持ちのいい時間でもあります。

スタートフラッグが降ろされる。跳ねるように一斉に飛び出していく。再び爆音に包まれます。今度は爆音と共にほこりにも包まれます。
ほこりで前は何も見えないが.私は上体をハンドルに被せ、前輪が浮かないようにして、最初のコーナーに突っ込む。気分は国際A級ライダーだ。

しかし私のレースはそこまでです。
あとは安全運転。安全運転ですから抜かれてもあまり悔しくありません。
バイクで競争するなんて危険です。完走することに意義があると、いつもの私にもどります。
といっても一応レースですからいろいろなアクシデントに見舞われました。自分のバイクが、なぜか自分に降ってきて、焼けたマフラーが足に当たり、火傷をしたこともありました。胸がハンドルに当たり肋骨に何度かヒビが入りました。・・・・・手首のねんざは何度したことか。
いままでの遊びの中で、死んでもいいなんていう感じはレースのスタートの時だけでした。
遅いライダーでしたが、気分だけはワークスレーサーでした。
 
最近あまりバイクには乗らなくなってしまいましたが、あの頃の興奮した気分は忘れられない思い出ですね。