道楽
趣味に関しても、独身のとき何も問題でなかったことが、結婚して子供でもできようものなら、大問題に発展することがあります。
奥様は毎日毎日わけの解らない子供に振り回され、もう発狂寸前です。そんなときに「明日釣りに行ってくるからな。」と軽く言おうものなら、火に油、火事にガソリンで、もうとりかえしのできない事態に発展してしまいます。自衛隊は来てはくれません。
いままで幾多の優秀な男が、その火をもろにあびて死んで行ったことか。そんな事態を想像出来ないあなたがいけません。自分が逆の立場だったらの事を想像できないようでは、大人の遊び人ではありません。
釣りに行きたければ常日頃の努力を決して怠ってはいけません。食事のかたずけ、風呂そうじ、あたりまえです。必ずしなければいけません。「俺は仕事で疲れているんだ」と言いたいけれど、これも禁句です。そんな日々の小さな努力が、良き日を迎えてくれるはずです。「明日釣りにいきたいんだけど、いいかなー」とやさしく聞いてみてください。きっと「気をつけて行ってらしゃい。」と言ってくれるはずです。もしも違う返事が返ってきた人は、人生の重大な決定に迫らなければならなくなります。これ以上は恐ろしくてとても書けません。
運良く「行ってらしゃい」と言われた方も調子に乗ってはいけません。二回行ったら一回休みです。タンタン休み、タンタン休み、カスタネットのリズムの要領です。そして釣れた魚は家族の人数分だけはキープしてくることをすすめます。釣りをしない女性や子供にキャッチ&リリースは理解してはもらえません。成果を持たず、いらぬ疑いをかけられるのは避けましょう。そしてその魚はあなたが料理して下さい。あなたが釣りに行った日は奥様の料理の休みの日になるのです。男は我慢です。大人の男が歩いたあとには水滴が落ちています。
数年間の我慢です。そのうち子供も大きくなります。奥様にも余裕がでてきます。それ以上になりますと、家にいるだけで粗大ゴミ扱いになり、自由になれます。もうどこへいっても構いません。もう火は浴びません。しかし今度は、たったひとり宇宙に漂う危険があります。もう人生はサバイバルですね。
こう書いただけで釣りをやめようと思う人がいるかもしれませんが、こんなことでめげてはいけません。釣りにはこれ以上の愉しみがあります。1匹のヤマメが、あなたの目頭を熱くしてくれるかもしれません。これもあなたが大きなものを背負って川を歩いて来たからです。これから先も歩きましょう。釣りと共に色々なものが見えてきます。先にはきっと楽しいことが待っているぞ。
このことは釣りだけでなく、道楽といわれていることに熱中しているひと全ての人に関係あることです。
心して道楽をしましょう。