コンピュータ

 14年ほど前の1990年、友人のデザイン事務所の社長にマッキントッシュのコンピュータ購入を勧められた。彼はそのコンピュータのできた経緯やら、開発者の人柄やら、デザイン業界にもこれからコンピュータの時代がくると熱く語ってくれた。私はボケーッと宇宙人を見るように聞いた。
コンピュータなんてものに興味もないし必要も感じなかった。・・・・・・きっぱりと断った。
 それから一年後その社長が私のためにコンピュータを購入してくれた。これは勉強しなければと思ったものの、頭がコンピューター用にできていません、ぐだぐたと適当に遊んでいるだけで、どうしていいかわからないまま一年が過ぎてしまった。さすがに・・・・・「いい加減にしろ」、とコンピュータは取り上げられた。しかし取り上げられてもべつに困りません。
 それからまた一年後、その事務所は、すごい変身を遂げていて、コンピュータならではの、すばらしいデザインをするようになっていた。それはもうショックで、これは自分で購入して、真剣に勉強しなくてはダメだと反省し、さっそく必要なものをリストアップしてもらった。
 まったくコンピュータに興味のなかった私にはもうチンプンカンプンな言葉の羅列。(みなさんもよく分かるでしょ)なにせソフトとハードの違いもまともに知らなかった。ハードディスク、メモリー、スカジー、エムオー、もう聞いたことも見たこともないような言葉、言葉、言葉。頭の芯から頭痛がした。
 それにもまして、その値段。メモリー増設24メガ、15万円 フォトシュップ15万5千円、MO15万円、コンピュータさえ買えばなんでもできてると思っていた私にはこれ何、これ何の連続。その度にこれがなければ仕事にならない、これを入れると早くなる、全く説明になるような、ならないような説明。20万円もするモニターでテレビ番組も見られないなんて、もっとも許せなかった。
アップルコンピュータのマッキントッシュ/クワドラ800を周辺機器とともに購入して合計200万。もう清水の舞台から飛び下りるような気持ちだった。
200万もしたのに、前年に買ったほかの友人からは安かったじゃんなんて言われた。確かに前年に買った人は300〜400万円くらい。本当に使えるのか不安でした。
現金なもので、もとをとらなければと思うと勉強します。しばらくすると、少しずつですがコンピュータを頭が受け入れはじめた。そうなると面白くなります。なんと楽しいおもちゃだと思い始めた。こんなすごいものを使わない人はだめなやつだ!と思い始めた(なんという変わり身の早さ)またその当時、マッキントッシュを買った人は同士として認知され、分からないことがあれば、どんな時に電話しても丁寧に教えてくれたものでした。(いい時代でした)しかしイラストレーター仲間からは「そんなものでイラストを描いたら、イラストに血が通わない」なんて忠告を受けたりした。(信じられないけどそんな時代だった)
 クワドラ800は仕事にもどんどん活躍しはじめた。コンピュータを使っているデザイナーはデジタルのイラストデータを欲しがります。名古屋でコンピュータでイラストを描いている人はほとんどいませんでした。独占とはいいものです。立体文字を作るだけでギャラがいただけました。本当にいい時代でした(たった8年くらい前なのに)。
そんな便利なコンピュータ!高性能で安価なものが次々に発売された。まだクワドラのローンが4年も残っているのに早くも新しいパワーマック購入。その当時こんな状況を「マッキントッシュを買ってシャキントッシュ(借金)」と呼んで、皆、冷汗をかいていました。(デザイン事務所では数百万のプリンターを当たり前のように入れていた)メモリ1メガ、8000円、ハードディスク1ギガ 15万円 MO128メガ、一枚6000円の時代からあっという間にメチャメチャ安くて高性能になった。一人一台のコンピュータ、大人も子供も誰もがインターネット、メール、もうすごい!
しかしコンピュータがこれほど普及してしまうと、あまのじゃくな私としては手描きにしようかな。まったくこれからどこにいくのでしょう。