スケッチ教室

1998年にニュージーランドの北島にマスを求めて釣りに行きました。
天候によって、釣りは出来なくなってしまうものですから、暇つぶし用にと、水彩セットを 用意していきました。幸い天候は崩れることもなく、大変楽しい釣りになりました。 そんななか、昼休みにちょっと水彩セットを出して、今釣ってきた川を描いてみました。
そしたらこれが、思いのほか楽しいのです!!。
一週間の釣りのあとには、スケッチブック一冊を描き終えていました。 それ以来旅行にスケッチブックと水彩セットは欠かせないものとなりました。


普段イラストレーターとして絵は日常的に描いてはいますが、風景をそのまま描くなんてことは 高校生以来(30年ぶり)ではなかったでしょうか 。 自分の見た景色が頭の中に焼き込まれるのを自覚できます。木の枝、岩のへこみまでが しっかりと刻み込まれます。 ありのままに描くということが、なぜこんなに楽しい気分のなるのかわかりませんが 、 旅の思い出として色濃いものに なることだけは確かですね。
 絵を描いて、あなたの受けた印象を残せたのなら、あなたの印象が第三者に伝わります。あなたの受けた感動がうまく伝われば、送り手、受け手も共にうれしい時間を共有できます。 どんなにきれいな風景を言葉で語っても、一枚の写真や絵の前に、意味を失います。 しかし写真や絵があなたの印象の全てを写し出せるかといえば、そうでもないから難しいことになります。 写真では景色をかなり正確に写し撮ります。じつはこの正確にというところに、写真の落し穴があります。人間の目というものは大変都合よくできているもので、見たいと思った部分や、印象の強かった部分だけが記憶にきざまれ、その他の部分は省略されてしまいます。簡単にいえば雑踏のなかでも大好きな人にだけピントが合い、それ意外はその他になるということです。カメラのレンズは見えたもの全てを忠実に写してしまいます。そうしたことで、自分が受けた印象と、できあがった写真との間に、違和感ができてしまうのです。
 では絵ではどうかというと、確かに印象を中心に描くことができれば、あなたの見たものを再現することは可能かもしれません。しかしそれには大変なデッサン力が必要だったりします。 じゃあ絵なんて描くのが大変じゃないかと言われるかもしれませんが、不思議なことに、絵というものは、楽しい気持ちで描けば、楽しい絵になるし、悲しい気持ち描けば、悲しい絵になってしまうものなのです。 そしてその気持ちは第三者に伝わります。 ですから何が肝心かといえば、あなたが何を描きたかったかということが重要になるのです。
描きたいと思った物や景色を素直に描けばいいのです。上手に見せよう、かっこよく見せようとすると絵にいやらしさがでてしまいます。
 スケッチの内容とは別なのですが、私は必ず現地の水で絵の具をとくようにしています。 絵の具をとく水が長良川の水、マジソンリバーの水、セーヌ川の水、スペイン広場の噴水の水、といったように現地で水をくみます。いい雰囲気の水ばかりではないでしょうが、それもありだと思います。スケッチブックの紙にあなたが行ったところの水が染み込みます。思い出が水と共により深いものになるような気がします。
旅から帰ってスケッチブックを友人に見せますと、多くの人が私もしてみたいといいます。 それで何回かスケッチ教室(無料)を開きました。 何人かの人が続けていて、たまに見せてくれます。 写真とは違い、その人らしさがでています。人とのふれ合いができたようでとってもうれしい瞬間です。
私はスケッチを誰かに習ったとか、教室に通ったとかは一度もありません。 まったくの独学で、きちんとしたことはなにも知りません。 詳しい人からは何を言っているのだと、お叱りをうけるかもしれませんが、杉浦流として許してください。
 写真を撮ることとくらべ、手間がかかりますが、真剣に見た風景は、木の枝ぶり、川の流れ、看板の模様まで、あなたの脳裏にきざまれます。そうしてできあがった絵は、あなたにとって、とても大切なものになるはずです。
とはいえ、最初から思ったようには描けません。当然練習も必要です。 本を読んだだけで、スキーや車の運転がうまくならないのと同じで、練習が大切です。 その時、すこしのテクニックを知っているだけで、絵に奥行きがでたり、質感が簡単にでたりしますから紹介したいと思います。 杉浦流スケッチ教室を開催します。


道具

スケッチをするための道具にもいろいろな種類があります。 画材屋さんに行くといろいろあって迷うと思います。 そのとき、携帯の水彩スケッチセットをくださいといえば、良い道具を揃えてくれるでしょう。 だいたい値段としたら4000円〜7000円位で揃うでしょうか。
ここで紹介するものは、いつも私が使っている道具です。
スケッチブックはいつもコットマンの荒目です。 水彩用の紙ならなんでもいいです。 大きさは色々ですが、F2あたりがバックに入れるのにいいサイズかと思います。
絵の具はウインザーニュートンの固形水彩です。 一つ買えば何年でも使えます。 色が自然で退色も少なく良い絵の具です。
筆は面相筆の大、小、それに彩色筆、それらの軸を短く切って使っています。 セットに付属の筆だけでも描けますが、太いのがあると重宝しますから、一本は足します。
鉛筆はHBです。
水入れはフイルムケースか藥の空き瓶を使っています。 水がこぼれなければなんでもいいです。 小さくないかと思われるでしょうが、筆は水入れで洗いませんから大丈夫です。使った筆は水を含ませ、布で拭くだけです。
構図を決めるための枠(なくても構わない)
あと消しゴム、筆をふく布。 いつもこれだけです。


構図

絵を描く時に最も重要なのは構図だと思います。
絵の具の濃さや筆の使い方を気にするよりまず構図をどうするかといったことのほうが大切です。 絵を描く時、何気なく描きたいものを紙の中心置いてに描いてしまいます。 中心から少しずらしてみるだけで面白い空間が表れたりします。
とはいってもどのようにずらしていいものか、すぐには分からないかも知れません。
そんな時に重宝するのがスケールです。 この枠の中に景色をおさめ、良い感じの構図で風景を切り取ります。 これは紙に対角線を引き、紙と同じ縮尺の大きさで窓を切り取り、中心に糸を張っただけのものです。
簡単に手作りで来ますから、作ってみると便利なものになると思います。
1 山の大きさを表したいと思ったらこんなふうにした方が良いと思う。
2 空の広さを中心にしたいと思ったらこうした方が良いと思う
 

下書き

 まず鉛筆を使って下書きをします。
どこから描き始めればいいのかという質問がありますが、じつは私も良く分かりません
何となくといった感じで始めています。 背景から描く場合もあるし、中心の物から描く場合もあります。 いまのところ私自身もはっきりとしたことを理解していませんね。
鉛筆で描くのですが人によって筆圧が違いますから、一概には言えませんが、あまり強く描かない方がいいと思います。修正の時に汚くなりますから、軽く鉛筆を握り、紙のうえを滑らせるように描くといいと思います。
水彩絵の具は透明系の絵の具ですから下書きの鉛筆の線は透けて見えます。 鉛筆の線を残すことを前提に描いても良いし、最後に消すこともできます。 残すのも消すのも好みで良いと思います。
鉛筆の線を残こすとしたら、ある程度描き方を気にしなくてはいけません。 自信の無い線を何本も何本も描いてはいけません、描くのであれば、いっきに描くのが面白い線になります。
そしてその線に沿って色をつけるのですが、線に沿うことばかり気にしていると塗り絵のようになってしまいますから、ある程度大胆に塗った方がいいと思います。線からはみ出るのも味になると思います。
 

色塗りのヒント

 絵の具を使かい、物を描く方法が二つあります。 円を描いて例にしたいと思います。 円そのものを描いていく方法(図1)と、回りを描いて円に見せる方法(図2)の二つです。 物には必ず背景との境に境界線ができます。それを内側から描くのか、外側から描くのかということです。外側から描く方法を覚えますと何となくうまく描けたように見えます。この描き方になれますと、上手に見えるし早く描けます。そしてふたつの描き方を併用しますと、ものの10秒ほどで球体にみえるようになります(図3)。 それとデッサンをするときなどに重要なことがあります。物の背景は明るい部分の背景は暗くなり、暗い部分の背景は明るく見えます。新たな目で物を見て下さい。 そうなって見えています。 そしてもうひとつ、色を付けていくときに“明るい部分は塗らない”ってことです。言い方を変えますと、白い絵の具は使わないということです。白い色は紙の色ということです。 あとは絵の具を一度で濃く塗らないことです。薄く薄く描きすすめていきましょう。 もうひとつ山を描いて例にします。

1は山だけに色を付けて描いたものです。 初心者の人に山を描きなさいというとだいたいこうなります。 直接、物に目が向いていってしまいます。

2は空だけを描いて山に見えるようにしたものです。 こういう描き方ができると描き方に幅がでます。

3は空を中心に山を描いた場合です。 くっきりと山との境界を空が作っているような場合に使います。

4は山を中心に空の存在感があまりないようなとき使います。

3も4も空との境界線の所にすこし塗らない部分をつくっています。 そうするだけで空間が生まれます。 ここらが絵のおもしろさですね。 こんなテクニックを使い、いろいろなものを描いてみましょう。

 

簡単な解説でしたが、杉浦流スケッチ教室でした。
何が一番大切かと言えば続けることです。
素敵だナーとか面白いナーなんて思ったら、
面倒がらずに描くことです。
貴重な思い出ができます。
そしてできあがった作品をメイルに添付して見せて下さい。
(72dpiで300X200位のサイズ)

どんどん描いていきましょう。