夕方からの釣り

 日が山に沈みます。期待と不安が交差します。きたるべき宴の時を待って河原で膝をだきます。そんな時いつも思い出します。釣りに夢中になり、時を忘れ、薄暮の中、泣きながら家に走った,子供の頃の切ない時を・・・・・・・・・・
 川面に波紋が広がります。ポワーン、ポワーンとアマゴのライズリング(魚が水生昆虫を食べる時の波紋)が次々広がります。魚の宴が始まりました。身支度を点検します。フライ完璧、ティペットOK,最初にあいつをやっつけて、つぎにあいつをやっつけてと、設計図ができ上がります。出陣の時です。ライズの波紋の中に、静かにフライをキャストします。フライが流れます、ツート流れます。いまだいまだと胸がときめきます。水面が割れ・・ガボッ ギュギューンとなるはずです。しかしフライはライズ地点を空しく通過してしまいました。ちょっと待ってよ、今のやり直しだよ、ちゃんと見ててよとさけんでしまいます。
 もう一度静かにキャストします。今度こそガボッのギュギューンです。本当にガボッのギュギューンだぞと祈ってしまいます・・・・・手元に生命反応が伝わります、にやけた顔が自分でもわかります。ハッハッハッどうだまいったかと一瞥をくれてやります。ふと周りを見ると真っ暗闇になっています。また子供の頃の切ない気分が襲ってきます。追い立てられるように 急いで河原をあとにします。