1738ch
9.つきあたりとは
9/15days
葦と艾《あしともぐさ》●mame 


 もう一度、振り返ってみる。大きな月と、密かに笑う猫の染みが、境界なく滲んでいる。明後日から、踏まれない雑草を駆けめぐらなければならない。怖くて、手が震える。存在が、経験が、当たり前に消え去っていく。物怖じしない勇気が、フライパン上の錆と似てくる。穴が空いたそれは、いかにもパステルだ。

 緋から、深い緑に変わろうとしている月を見下ろしたとき、声ができた。山吹色から、灰がかった黒に踏襲されるとき、前が埋まった。行き先を失い、見事に笑ってみると、一段落した鴉が一斉に飛び立つ。ふと、脇の無遠慮な芝への挑戦で、握りしめていたものを、放した。そいつは、黒い芯の小さな球。外側は、自分には、白く、見えた。
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Disparallel 
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