歩きながら

 いつも歩いていながら、ふと気付くことがある。こうやって空を見上げているとどことなく宙に浮いていく。そうして、地に足の着かない不安な気持ちになるのだ。空は青いが、地球の他の場所では曇っているかもしれない。空は晴れているが、太陽は華のように咲いている。眩しすぎる光は、僕の目を眩まして、精神と肉体が分散していくのだ。オレンジ色の光の中で、ただ一つ核となるものがあって、それをつかむために浮遊しているのだ。

 控えめな心は、いつしか道ばたの草を見下ろして、いつか大きな木が生えて森へと成長して行くかのように思う。しかして、実際そうであって、とりとめのない気持ちだけが空気中に漂う。それが、欲しいんだ。それを、手に入れたいんだ。でもね、体が浮いたまま手に入れようとすると大変なことになっちゃうんだよ、と長老さん。永遠の命がなく、蓄積されない情報が体中に染みわたっているわけですね。だから、僕はゆっくりとこの束縛された地の上に帰り立つのです。再び立ったこの大地は、やっぱりエネルギーに満ちていて、何か色々なことをやりたくなる。地面に根が生えてこそ、どっしりとした力強いものができるのではないか。

 だけれど、僕は歩けるのです。僕は色々なものを取りに行きます。僕は色々なものを体験しに行きます。空は晴れていたり曇っていたりするのだけれども、色々あってこそ自然。屈託のない笑顔で地球を笑い飛ばしてやるんだ。とことん歩き回って、ふと足がさらわれてしまうときもありーの、最後はここだというところに足を休め二本の木は根を生やしていくのです。こうやって、涙も笑顔に変わっていくのかな。