今月の手紙(2008. 02)


大石ともみです。

 


           

 

節分、立春と、暦の上の春は、もうすぐそこです。

二月には、朗読会をと、昨年から計画してきたのですが、

一月半ば、母が急逝して、やむなく延期というかたちにしました。

あまりにも突然のため、狼狽がまだ続いており

とても、こんな不安定な気持ちではできないと決めました。

楽しみにしていてくれた出演者の方には、大変申し訳なかったです。

二月の朗読会ということで、テーマは、「春は海から」。

海を描いた作品、海にかかわりのある作品を集めておりました。

高良留美子さん、牟礼慶子さん、三好達治さん、

そして、鈴木ユリイカさんの作品です。

どの作品も、海を通して、ひととの関わり、父母、家族を描いています。

今、父母のことを書いた作品は、とても冷静には読めません。

鈴木ユリイカさんの「海のヴァイオリンがきこえる」は、

亡くなられた父親のことを書いた長編です。

<海のヴァイオリンがきこえる>という一行が、作品のなか

 何回も繰り返されます。

そのリフレインは、波の打ち寄せるのにも似た効果をもって

ぐいぐいと海と父親のイメージを膨らませてゆきます。

    海のヴァイオリンがきこえる

    お父ちゃん わたしはあなたを愛したのですよ

    でも あなたは女の子というのが全くわからなかった

    女の子というものは体のなかにちいさな花や星や貝殻や何かをた

      くさん持っていて

    いつもやさしくゆすっているのです

ひととひとの時間、なかでも親子のそれは、どうしてずれてしまうのでしょうか。

こころから話し合える、話したいと思ったときその時、父母はもういないのです。

       「海のヴァイオリンがきこえる」は、詩集『海のヴァイオリンがきこえる』

                          一九八七年思潮社刊

 

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