大石ともみ詩集


ヴァイオリン

指板のさきっぽ
渦巻きのかたちは
イタリア
ポー川の流れ

楽器は
いつも歌いたがっている
川面にうつる
光のあれこれ

渦巻いている
流れのなかから
音は
たえまなく生まれて
やわらかな曲線
ヴァイオリンは
いつも音で満ちている

ひとという楽器もまた
いつも歌いたがっている
年々歳々
やどる音は深くなる
美しくなると信じる

ぎこちない運弓法を
ためらわないで
ただ弓を弾く
この空をつらぬく
見えない渦の流れにむけて
音を放つ
わたしを奏でる




aube  19号(1998年)


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