大石ともみ詩集


 あ 

アンコール曲は
ドヴォルザークだった

ヴァイオリンの弾くメロディーに
合唱が「あ」の音で続く
「あ」は光の音
「新世界より」は
あざやかに見えてきた

「あっ」
「ああ」
「あ」は
るつぼのなかで
溶けている言葉の原形
マグマ

ふいの出会い
「あっ」と
小さな驚きが
からだのなかで発光する
生命の時間が
「あ」に照らされる

古い時間の闇に
遠い光
線香花火
チリチリとはじける
いま ようやくわかりかけた
あの一言
痛い
「あ」が




アルファ 121号(1998年)


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