新選組
血風録


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TVD 新選組血風録


放映:NET 1965/07/11〜1966/01/02(全26話)
監督:河野寿一
音楽:渡辺岳夫
原作:司馬遼太郎「新選組血風録」「燃えよ剣」
製作:東映京都TVプロダクション

内容:栗塚旭(土方歳三)、舟橋元(近藤勇)、島田順司(沖田総司)、坂口祐三郎(山崎烝)、左右田一平(斎藤一)。渡辺岳夫の最初の東映テレビ作品。新選組隊士それぞれにまつわるエピソードを一話完結形式でつづる。土方歳三は栗塚旭の当たり役であり、他に「燃えよ剣」(映画・テレビ)や「新選組」(テレビ)でも同じ役を演じている。本作品は東映からビデオが出ている。
じゅんじゅんさん 1997/11/15


新選組の旗は行く OP

作詞:高橋掬太郎
作曲:渡辺岳夫
編曲:渡辺岳夫
歌:春日八郎、ボーカルショップ
演奏:キング・オーケストラ
BS-203,28AH-2192,28KH-2211,32DH-725,KICS-366,VPCD-81266,COCP-35647,KICS-1038,TFC-1621~6,KIVE-39

 勇ましい軍歌である。歌メロ冒頭は「勝ってくるぞと・・♪」という有名な「露営の歌」と同じだ。新選組の勇ましい志士にふさわしい。曲の最後では「月に雄叫び・・・旗は行く♪」の詞を繰り返す。「旗は行く♪」のメロディーは一回目は下がって、二回目はコーラス付きで舞い上がる。春日八郎の勇ましい歌だ。

 イントロは実に魅力的だ。マイナーファンファーレ〜哀愁の木管〜泣きの弦という劇伴的な展開をひとわたり披露してから歌につないでいる。ドラマOPでは2番まで流れる。フルコーラス版では2番の後に間奏がある。この間奏では一転明るい牧歌調になって、しばしのどかに演奏。しかる後「ぐわぁ〜」という凄いオルガン音で豪快に軍歌調にもどるという大見せ場がある。CD VPCD-81266はTVサイズの収録だ。


新選組の旗は行くコーラス IN

VPCD-81266

 各話のクライマックス場面を中心に演奏される。ボーカルショップのコーラスと思われる。雄々しくも歯切れ良い男声合唱は、OP主題歌よりも俄然カッコ良く盛り上がる。これはハッチーが悪いわけではなくって、軍歌には男声合唱の方が似合うのだ。コーラス版では一拍を「付点八分音符+十六分音符」に分けており、これが歯切れ良さを生んでいる。いっぽうハッチーこと春日八郎は三連的なリズムで歌っている。

 ラストのリフレインは、コーラス効果満点だ。「しん〜せん〜ぐみ〜の〜♪」のメロは「GG〜GG〜F#F#〜B〜♪」である。春日版ではどうしてもボーカルに耳がいくが、コーラス版では「EE〜EE〜D#D#〜D#〜♪」のハモパートが前面に踊り出る。ハモり出しがイキナリ長6度上という、劇的演出なのだ。
 第1話ではコーラスの後に長い後奏があって、ナレーションがかぶさる。最後はEmadd9をぶわぅ〜んと鳴らして、そのまま番組を終わる。Emadd9としたのは、F#音が目立つわりにD音が聞こえないため。D音も加えてEm9とすると、モダンに響いてしまう。ここではEmadd9で泥臭く響くのだ(と思う)。


新選組の旗は行くハミング IN

VPCD-81266

 ハミングバージョンは、シリーズ後半でしつこいほどに流れまくる。最初は「るる〜る〜♪」と男声ハミングで、途中から女声が加わって哀愁満ちるのだ。最初から女声ハミングのバージョンや、「ああ〜あ〜♪」で歌うヴァージョンもある。バックのピアノは三連で流れており、掬一文字の叙情性。しかるにハミングはあくまでも「付点八分音符+十六分音符」としている。時代に流されずに生き抜く男達と女達。


竜馬の唄

作詞:高橋掬太郎
作曲:細川潤一
歌:春日八郎
演奏:キングオーケストラ
BS-203

 「新選組の旗は行く」のB面曲です。本編との関係は不明ですが、一応新選組がテーマになっています。勇ましいA面と対照的で、ゆったりしたリズムで春日節がのびのびと展開します。月夜に鐘の音が響くようなイントロが印象的。


新選組の歌

作詞:牧房雄
作曲:船越隆司
編曲:船越隆司
歌:三橋美智也
KICS-366

 この歌を収録したCDのライナーには歌のタイトルだけが書いてあって、何の番組かわからないのです。実は「新選組始末記」という番組の主題歌で、血風録とは一切関係ないとのことです。注意してください。


EP BS-203「新選組の旗は行く/竜馬の唄」(廃盤)
LP 28AH-2192,CC 28KH-2211,CD 32DH-725「栄光の東映テレビ映画〜懐かしのテーマ大全集」(廃盤)

CD KICS-366「懐しのテレビ・ラジオ主題歌全曲集 IV」
CD COCP-35647「青春TV倶楽部40・時代劇スペシャル」
CD KICS-1038「テレビ時代劇主題歌コレクション」
CD TFC-1621~6「チャンバラ万歳」

VTR KIVE-39「渡辺岳夫の世界」




管理人推奨盤
CD VPCD-81266 傑作時代劇音楽全集 新選組血風録 ミュージックファイル


 オリジナル劇伴音楽満載!。ブラス軍団が池田屋に斬り込んで、低音の迫力で血風巻き起こす。ブリッジ的な音楽も多数てんこもり。主題歌「新選組の旗は行く」を、TVサイズ・男声コーラスヴァージョン・混声ハミングヴァージョン(複数の)で収録。さらにはコーラスを加えた主題歌変奏曲も収録している。時代劇ファン必携のミュージックファイルだ。


暗躍する不穏浪士

 このトラックにはMナンバーなしの音楽がある。これは不気味なベース(ウッドベース)のソロのみの音楽で、特にメロディーは無い。あるいは全部アドリブかもしれない。


策略

 このトラックにもMナンバーなしの音楽がある。低弦(チェロかコントラバス)ソロで「ごごごご」とトレモロをひたすら続ける。番号が無いということは、楽譜も無くその場の思いつきか口頭による指示で演奏したのかも?。


恋慕

音楽の2番
 激情盛り上がるピアノ協奏曲風の音楽である。激動の時代を駆け抜けた人間の、心情のひだを描いた「新選組血風録」。決してチャンバラアクション中心のドラマではない。渡辺岳夫の音楽は、溢れる叙情をドラマチックに演出する。

音楽の4番
 「愛のテーマ」としての代表的音楽。このトラックは他の曲もまた美しい。「実らぬ恋音楽の70番-C」も実に美しい音楽である。映画音楽系やアニメ系のファンにも納得してもらえるはずだ。


集結する倒幕浪士

音楽の11番
 ティンパニ中心でサスペンス。鳴らしながら音程も変えちゃう。やがてファゴットがもっさりと重い口を開いて、コンバスと三人で対話する。新選組の幹部だけでヒソヒソ相談しているようだ。


新選組出陣音楽の14番
拙者刀ハ虎鉄に候エバ音楽の15番

 斬り合いの最中、沖田総司がゴホッと咳込んでピアノがキラキラと結核演出する。真打ち土方歳三が登場すれば、トランペットのファンファーレ「G〜↑D↑G〜〜AF〜〜G〜〜〜(移調してます)」。冨田勲もかくやというべきサウンドの色彩感。続いて斬り合い組曲へ展開する。切った張った・睨み合い・ツバぜり合い、アクションのリズムが変化するのに合わせたかのような音楽である。
 これらは何度も繰り返し使用され、ある時はドラマ展開にピタリとフィットし、またある場面ではフェードアウトによる尺合わせが目立つことも。必ずしも初回使用場面のために作曲した訳では無いようである。つまり、その都度作曲しなおしているワケでもないのに、毎回のチャンバラにぴったり合っているのが不思議なのだ。
 その秘密は「緊張〜ヒーロー見参〜また緊張→戦闘へ」という流れ。緊張の最中に数秒の爽快感。そのタイミングに合わせてカッコ良い場面ならば、それだけで否応無しの盛り上がりである。「機動戦士ガンダム/戦いへの恐怖」('79年)を参聴されたい。


浪士団壊滅

音楽の16番
 どんどんどんどんどんどん・・太鼓が原始のリズム。間欠的にブラスの雄叫び。半音階を含んで緊張感溢れる旋律は、しかし鎧武者ガンダムのモダンさを秘めている。


コマーシャル前用音楽、場面転換、終幕用音楽など

音楽の2番-A
 アイキャッチャーはジャズ調のウッドベース。半音階で「CBB♭AA♭D♭」と下降し、最後は音程不明ティンパニ激打でトドメの一太刀。
 このトラックにはブリッジやエンディングなどの短い曲をたくさん収録している。この類の収録が通常のサントラよりも多めで、TV音楽ファンにも納得してもらえるだろう。音程変化するティンパニ+ブラスといったパターンの曲がいくつかある。音楽の69番-Aがこれまた美しい。


摘み取られた幸せ

音楽の65番
 弦の旋律が実にモダンである。音飛び・クネり・コードの構成音をナメる・三連符を挿入してメリハリをつけるといった、アニメファンにもおなじみのナベタケ節が聴けるのだ。この美しさとモダンさには、ガンダムファンにもきっと納得してもらえるだろう。「散り行く隊士たち音楽の64番」もおすすめの一曲だ。


夜雨の粛清

音楽の8番,9番
 ピアノクラスター。おどろおどろしいサックス。シロフォンちょろりの味付けは、後年の作品でも聴かれる。
 このトラックに前後する「狂乱の刃音楽の7番」「殺戮の歴史音楽の61番」といったサスペンス系の曲には、ほとんど全部の楽器音にディレイがかかっている。これはテープエコーか?。3ヘッドのオープンデッキでは、録音ヘッドと再生ヘッドが離れており、録音してから再生するまでに時間遅延(ディレイ)がかかる。遅れて出てくる再生信号を入力信号にミックスすれば、テープエコーのできあがり。この方法を応用したエコー専用のマシンもあった。




劇伴音楽 from 新選組血風録


 サントラCD未収録の音楽にも捨てがたいものがある。そこでビデオ鑑賞によるレポートを、未収録曲を中心に付け加えておこう。一部の記述が重複するが、御了承願いたい。ミュージックファイルだけで満足をせず、本編もしっかりチェックしよう。


テーマアレンジ

 第2話冒頭では主題歌インストアレンジ(ほぼカラオケ)が演奏される。イントロのさらに前に、凝った序奏がある。この序奏が第2話のサブタイトルにもなっている。この第2話以外でも、各話冒頭は音楽的な演出が凝っているのだ。


組曲系劇伴
 フィルムまたは脚本に合わせて作曲されたかのような組曲風の音楽がある。これらは何度も繰り返し使用され、ある時はドラマ展開にピタリとフィットし、またある場面ではフェードアウトによる尺合わせが目立つことも。必ずしも初回使用場面のために作曲した訳では無いようである。つまり、その都度作曲しなおしているワケでもないのに、毎回のチャンバラにぴったり合っているのが不思議なのだ。

戦闘組曲
 斬り合いの最中、沖田総司がゴホッと咳込んでピアノがキラキラと結核演出する。真打ち土方歳三が登場すれば、トランペットのファンファーレ「G〜↑D↑G〜〜AF〜〜G〜〜〜(移調してます)」。冨田勲もかくやというべきサウンドの色彩感。続いて斬り合い組曲へ展開する。切った張った・睨み合い・ツバぜり合い、アクションのリズムが変化するのに合わせたかのような音楽である。
 その秘密は「緊張〜ヒーロー見参〜また緊張→戦闘へ」という流れ。緊張の最中に数秒の爽快感。そのタイミングに合わせてカッコ良い場面ならば、それだけで否応無しの盛り上がりである。「機動戦士ガンダム/戦いへの恐怖」('79年)を参聴されたい。

新選組組曲
 「EDE〜♪」をトップにしてハモるトランペット、ドラマの感動をそっと支えている。マーチではなく、力強くはなく、しかしこのブラスこそは新選組の魂を体現している。やがてストリングスとアコピの美しいメロへと感動の糸を紡ぐ。組曲的劇伴として、「巨人の星」('68年)の劇伴M-1を比較参聴されたい。


サスペンス劇伴

半音階を多用したチェロ独奏。落ち着きの中にも不安が潜む。

低弦トレモロが緊張するドサクサに偽物虎鉄(有名な刀)を持ち込む女、それを睨む土方。高音にはディレイがかかって緊張する。

黒装束がライドシンバルで暗闘すれば、クラシックからジャズに方向転換。トロンボーンはオーケストラのそれから転じて、ドライブ感あふれるビッグバンド風に聞こえちゃうから摩訶不思議。

ピアノクラスター。おどろおどろしいサックス。シロフォンちょろりの味付けは、後年の作品でも聴かれる。


人情メロドラマ劇伴

木管中心で和風の響き。この編曲ではフルートは笛の音で、オーボエまでもが雅に聞こえる。このあたりは明確にAマイナー

しんみりと弦楽合奏。メロディーは明確で、Aマイナーの演歌の調べ。泣きのオーボエ浪花節。


愛のテーマ的劇伴

高音艶やかなストリングスに、川が流れるようなピアノがアルペジオ伴奏。土方の好きなデート場所は、主に川べりであった。笛(フルート)のテーマによる穏やかな編曲で、しっとりとドラマチック。場面が変わって同じテーマを大編成で演奏すれば、土方とヒロインでツーショット。やがて言葉が交わされる頃合いには、バックでオーボエが哀しげだ。

「A〜〜C、EDCA、GAG↓D、G〜〜♪」ストリングスのテーマにピアノがポロロン。Bメロではクラリネットの主題に、上品なピチカートで静かな京のたたずまい。スケールはCメジャーだが、Fメジャーを軸に展開するモダン節。サワヤカ沖田クンによく似合う。おしまいは「G、Dm|A」で次ぎのドラマ展開に続く感じ。「アタックNo.1」('69年)の劇伴イメージを代表するAメジャーが早くも登場している。


その他特徴

メロディーに半音階が多く、いかにも大人のドラマといった複雑さがある。マイナー系のキーは概ねAだが、FマイナーやCマイナーなどもある。後年はCメジャーやAマイナーの劇伴が多くなるが、当時は色々やっていたようだ。

シリーズ後半では、弦の旋律がモダンになってくる。それでいて新選組的半音階は継続使用するので音楽の幅が大きく広がっていく。最終回のラストでは「巨人の星」('68年)の主題歌後奏に似たトランペットのフレーズもある。




滅びの美学

 戦闘集団新選組にあって冷酷なまでに鉄の規律を守り抜く男土方と、それとはまったく対象的に心の優しい沖田。両者のこの正反対なキャラクターが見るものをして、ある時は緊張せしめまたある時は安らぎを与え、巧みに番組に引き込まれてしまう。そして同時にこの二人は新選組の象徴でもある。静と動。緩と急。愛と力。その新選組の象徴が崩れるところに最大のクライマックスがある。ああ、彼等はこの「崩れ」のためにここまでやってきたのだな。これぞまさに「滅びの美学」かもしれません。
栗田さん 1998/02/23




結束脚本、河野監督、栗塚主演

 私の渡辺氏の体験は時代劇の「俺は用心棒」からで、同氏が30代の頃の作品です。当時、中学生だった私は同番組を偶然見たところ、愕然として、内容とともにその音楽に驚きました。ドラマの進行と音楽が巧妙にリンクしていたのです。また、悲しい悲惨な場面に流れた音楽は、場面とは逆に明るいメロディーを使っていました。まるで優しくいたわるように。モンタージュの手法というのでしょうか?。

 私は渡辺氏の音楽については、その主題曲はもちろんですが、ドラマの途中で使用されている曲にも大変興味があります。それを分析したくて和声と対位法をかじってしまいました。もう20年以上も前のことですが。
 私の同氏の音楽的興味の範囲は、結束信二氏脚本、河野寿一氏監督で栗塚旭氏の主演した5年間にわたる一連のテレビドラマが中心となっています。もちろんそれ以後も良い作品を残されていますが。

 渡辺氏が30代の頃の作品を聞くと、旋律の特徴で2つ気が付いたことがあります。一つはある一定の音程の音を繰り返し連続させていることと、二つ目は一般にある音から跳躍する場合は、その直前では跳躍する方向とは反対の音階的進行をしなさいとものの本には書かれていますが、渡辺氏の劇中音楽ではそれを無視した部分があり、またそれがとても感動的な音楽になっていました。
豊田雄司さん 1998/03/04




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