狂四郎


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映画 眠狂四郎無頼控・魔性の肌


公開:大映 1967/07/15
監督:池広一夫
音楽:渡辺岳夫
原作:柴田錬三郎
製作:大映京都

内容:市川雷蔵、金子信雄、鰐淵晴子。江戸から京都へ向かう狂四郎。悪い宗教団体の黒指党も暗躍し、妖しくもエロチックな攻撃を連発されてしまう。タイトルには「無頼控」がついている。


「魔性の肌」より
 CD KICA-3027 には8曲収録している。ブラスセクションにサックス軍団を加えたジャズのビッグバンドスタイルの曲が多いが、フルートやアコギも活躍する。トランペットにはしばしばミュートを装着している。このCDにはテーマ系の劇伴が多く収録されているので、メインタイトルを十分に聴きこんでからお楽しみいただきたい。

大映マーク〜メインタイトル
 狂四郎のテーマである。「Am|Em|Am|G|F、Em|Dm、G|E」。
 渡辺ベースはルートに固執しないので、例によってコードネームは便宜上のものと理解されたい。7thは省略で小節区切りも実際とは違うかもしれません。でも、その雰囲気と凝りようを検証するにはこれで十分です。

 冒頭の「Am|Em」これだけで、すでにバッサリ狂四郎に斬られてしまう。翳りのフルートが演奏する最初のメロディー「EDE〜♪」、これに続く「BAB〜♪」は4度下がって同じカタチなので「いきなり転調」みたいにも感じられます。転調まではいかずとも「トニック→サブドミナント→ドミナント」ではなく「トニック→ドミナント」になっており、サブドミすっとばし感が意表を突いた円月剣。コーダルではなくモーダルに解釈すれば、これぞモーダルインターチェンジ。
 どマイナーから始めたくせに、Gからはやや明るく。しかし!人生の陰を背負ったダイアトニック並進行でDmまで下ります。ここまでくれば「Dm→G→C」になっちゃいそう(まさか)です。しかし!、Eメジャーを「ど〜ん」と鳴らし、中途半端な7小節で闇のマイナーへと帰って行く狂四郎。かき鳴らすギターはG音を出していますが、バックはG#音なのでEメジャーとしました。バックがメジャーなだけに、アコギの哀愁がひきたちます。

 音楽は盛り上がってテーマを繰り返しますが、ここでも印象的なのはフルートです。同じ音型を繰り返す、セルフサービス・ディレイをやってます。フルートだけにディレイをかけるような芸当は、まだできなかったのかな?。
 エンディングは(たぶん)「Am/Eadd9」です。ティンパニはE音でロールして、最後だけA音を鳴らすように聞こえます。でも音が低すぎて自信がないや。

マリア像搬送行〜黒指党の襲撃
 ピアノ低音の「ぐしゃぁ」やトロンボーンの緊迫感が、すでに後年のアニメ作品劇伴の息吹を感じさせます。

野辺の送り〜エンディング
 エンディングは(たぶん)「Amadd9」です。9thのB音はトランペットが「ば〜ん」と鳴らしており、これは「映画:燃えよ剣」('66年)と同じスタイルになっています。ここでのティンパニロールはA音に聞こえます。オープニングとエンディングで、音を使い分けているのか?。でも音が低すぎてハッキリとはわかんないや。


ドラマ編
CD TOCT-8819~20




映画 眠狂四郎・女地獄


公開:大映 1968/01/13
監督:田中徳三
音楽:渡辺岳夫
原作:柴田錬三郎
製作:大映京都

内容:市川雷蔵、高田美和、水谷良重。舞台は北国。家老同士の権力争いに巻き込まれる狂四郎。両陣営に雇われた浪人が襲い来る。火花散らす三つ巴の刃!、生き残るのは誰だ。


「女地獄」より
 CD KICA-3027 には8曲収録している。今回はソロ楽器やパーカッションの活躍が目立ちます。でもマンドリンは、ブラスではなくて弦といっしょに鳴ってほしいぞ。バックにビブラフォンという黄金パターンも健闘。

大映マーク〜メインタイトル
 「魔性の肌」と同じ渡辺狂四郎のテーマである。すでに観客もテーマは御存じ(?)なので、少々凝ってみました。アコギのテーマよりも、フルートのバッキングのほうが目立ってます。繰り返しではさらに大人のムードでサックスがテーマ、アコギはバックにまわってますます活躍する。


ドラマ編
CD TOCT-8819~20




映画 眠狂四郎・人肌蜘蛛


公開:大映 1968/05/01
監督:安田公義
音楽:渡辺宙明
原作:柴田錬三郎
製作:大映京都

内容:市川雷蔵、緑魔子、三条魔子。甲府に暴虐しほうだいの悪党兄妹がいた。虐げられまくる地元住民。狂四郎にも魔の手が迫る。ストーリーとキャラ設定がお約束連発で、娯楽作品の正道を貫いている。おとぎ話のようにわかりやすく、しかもスンごく猟奇的だ。渡辺宙明の音楽は、狂四郎のテーマと外道兄妹のテーマが鮮やかで、こちらもわかりやすい。


「人肌蜘蛛」より
 CD KICA-3027 には11曲収録している。狂おしくも妖艶なスキャットが猛印象。


ドラマ編
CD TOCT-8819~20




映画 眠狂四郎・悪女狩り


公開:大映 1969/01/11
監督:池広一夫
音楽:渡辺岳夫
原作:柴田錬三郎
製作:大映京都

内容:市川雷蔵、藤村志保、久保菜穂子。江戸にニセ狂四郎が現れた。要人暗殺や婦女暴行の現場に「狂四郎がやりました」という旨が書き残してあったのだ。この撮影のとき雷蔵はすでに病身で、本作が最後の狂四郎となった。


「悪女狩り」より
 CD KICA-3027 には10曲収録している。「魔性の肌」「女地獄」の音楽と較べて、特にサウンド面の趣が異なっている。時代劇には待ってましたの尺八、弦の参加、「ぼよ〜ん」口琴、「じべじべ」エレキギター、幻想オルガン、さらに正体不明のSE音が乱舞するという派手なサントラになっている。「土方歳三 燃えよ剣」('66年)や、「新書・忍びの者 」('66年)のスタイルに戻った感じもあり、ブラスの「ぶぁ〜ん」「ばりばり」が増えている。

大映マーク〜メインタイトル〜江戸城・大奥
 太鼓の「どんどこ」ブラスの「ぶぁ〜ん」で、従来時代劇に先祖帰り。でも狂四郎のテーマは、あくまでモダンであった。メロディーは「EDE〜♪」から「A↑EDE〜♪」に変わっています。大胆にフィーチャーした尺八が聞きどころ。

キリシタン包囲網
 アコピの「ぐしゃぁ」とオルガンで怪しさ爆発。「ぽひょよ〜ん」という摩訶不思議効果音、襲い来るブラス群、そして原始のリズムが炸裂しております。

小夜の死
 弦楽合奏の叙情的調べ。寄り添うビブラフォンが小夜の死を悼む。

対決・眠狂四郎対川口周馬
 「燃えよ剣」で聴かれた、地の底から沸き上がるような弦の動機が復活している。対決ムードを盛り上げるのだ。

エンディング・さらば眠狂四郎
 回を重ねる度に絢爛になっていくエンディング。「Am→D→E」の最後には堂々たるEメジャーを響かせて、雷蔵シリーズの完結です。ホルンの唸りは「雷蔵よ逝くな!」という呼びかけのようだ。


ドラマ編
CD TOCT-8819~20




映画 眠狂四郎・円月殺法


公開:大映 1969/10/04
監督:森一生
音楽:小杉太一郎
原作:柴田錬三郎
製作:大映京都

内容:松方弘樹、佐藤友美、梓英子。音楽は小杉太一郎。同時公開「関東おんなド根性」の音楽は渡辺岳夫だった。


眠狂四郎の歌

作詞:柴田錬三郎
作曲:曽根幸明
編曲:池田孝
歌:松方弘樹
KICA-3027

 この「円月殺法」と「卍斬り」のエンディングになっている。映画主題歌にふさわしいスケールで、なかなかのカッコ良さです。


「円月殺法」より
 CD KICA-3027 にはボーナストラックとして、「大映マーク」と「メインタイトル」の音楽を収録している。




映画 眠狂四郎・卍斬り


公開:大映 1969/12/20
監督:池広一夫
音楽:渡辺岳夫
原作:柴田錬三郎
製作:大映京都

内容:舞台は江戸時代の日本なのでモノトーン基調ですが、そこに赤を青を鮮やかに配する池広一夫監督の絵作りが見事。そして演出は息もつかせぬノンストップアクション。ストーリーは論理的に滅茶苦茶で、全編これツッコミどころ。しかしウルトラ級エンタテインメント作品とはそうゆうものです。音楽は「よくあり」の路線か?と思わせておいて、メインタイトル曲とテーマアレンジをじっくり聴かせる熟練のワザ。
 今回の主演は市川雷蔵ではなくて松方弘樹。松方狂四郎には若干ムリが無きにしもあらずですが、仮面ライダーもビックリの特撮アクションがこれを補って余りありすぎ。謎の女性を抱いたまま寝所から飛び出して滑空します。フトンの上で体を水平に横たえていたのに、どうして次の瞬間に1mほどの高さを飛ぶことができるのか。呆れたというか、ド肝を抜かれました。美形の仇役として、1972年のTVシリーズで狂四郎を演じる田村正和が登場。トコトン斬られまくります。あとは松岡きっこがブリジット・バルドーみたいにお目目パッチリで超妖艶。


「卍斬り」より
 CD KICA-3027 にはボーナストラックとして、「大映マーク」と「メインタイトル」の音楽を収録している。「大映マーク」のファンファーレは、TV時代劇「燃えよ剣」(翌'70年)のイントロにそっくりです。「メインタイトル」は雷蔵版と同じ渡辺狂四郎のテーマだが、ここでは西部劇風のエレキサウンドも鮮やかに、三拍子系のアレンジしている。これもTV時代劇に頻出のパターンだ。




眠狂四郎劇場公開作品


タイトル公開監督音楽製作出演
無頼控東宝 1956/12/26日高繁明池野成東宝鶴田浩二、河津清三郎、青山京子
無頼控 第二話 円月殺法東宝 1957/04/02日高繁明池野成東宝鶴田浩二、津島恵子、小堀明男
無頼控 魔剣地獄東宝 1958/10/21川西正純斎藤一郎東宝鶴田浩二、小暮実千代、多々良純
殺法帖大映 1963/11/02田中徳三小杉太一郎大映京都市川雷蔵、中村玉緒、城健三郎
勝負大映 1964/01/09三隅研次斎藤一郎大映京都市川雷蔵、藤村志保、成田純一郎
円月斬り大映 1964/05/23安田公義斎藤一郎大映京都市川雷蔵、浜田ゆう子、丸井太郎
女妖剣大映 1964/10/17池広一夫斎藤一郎大映京都市川雷蔵、藤村志保、城健三郎
炎情剣大映 1965/01/13三隅研次斎藤一郎大映京都市川雷蔵、中村玉緒、西村晃
魔性剣大映 1965/05/01安田公義斎藤一郎大映京都市川雷蔵、瑳峨三智子、長谷川待子
多情剣大映 1966/03/12井上昭伊福部昭大映京都市川雷蔵、水谷良重、中谷一郎
無頼剣大映 1966/03/09三隅研次伊福部昭大映京都市川雷蔵、藤村志保、天知茂
無頼控 魔性の肌大映 1966/07/15池広一夫渡辺岳夫大映京都市川雷蔵、金子信雄、鰐淵晴子
女地獄大映 1966/01/13田中徳三渡辺岳夫大映京都市川雷蔵、高田美和、水谷良重
人肌蜘蛛大映 1966/05/01安田公義渡辺宙明大映京都市川雷蔵、緑魔子、三条魔子
悪女狩り大映 1966/01/11池広一夫渡辺岳夫大映京都市川雷蔵、藤村志保、久保菜穂子
円月殺法大映 1969/10/04森一生小杉太一郎大映京都松方弘樹、佐藤友美、梓英子
卍斬り大映 1969/12/20池広一夫渡辺岳夫大映京都松方弘樹、南美川洋子、松岡きっこ



CD TOCT-8819~20「眠狂四郎 市川雷蔵・魅力のすべて」
 いわゆるドラマ編だが、音楽もかなり楽しめる。2枚組だが、そのうち1枚で「悪女狩り」を1時間ちかく収録している。


CD KICA-3026「サウンドトラック・ルネッサンスシリーズ/眠狂四郎 音楽控 上巻」
 上下巻で雷蔵出演作品を特集。上巻には「殺法帖」から「多情剣」までを収録しており、音楽は小杉太一郎、斎藤一郎、伊福部昭といった面々。伊福部昭音楽作品は上下巻に泣き別れているので、伊福部ファンの方は両方買ってください。


CD KICA-3027「サウンドトラック・ルネッサンスシリーズ/眠狂四郎 音楽控 下巻」
 下巻は「無頼剣」から「悪女狩り」までを収録しており、渡辺宙明や伊福部昭との豪華共演盤となっている。ボーナス・トラックとして、松方弘樹出演作品の音楽も少し収録。作品解説と音楽解説も、なかなかの充実ぶりである。「サウンドトラック・ルネッサンス」の看板は伊達じゃない。買って損なしの一枚です。


VTR HTH-1149「眠狂四郎 殺法帖」
VTR HTH-1150「眠狂四郎 勝負」
VTR HTH-1151「眠狂四郎 円月斬り」
VTR HTH-1152「眠狂四郎 女妖剣」
VTR HTH-1153「眠狂四郎 炎情剣」
VTR HTH-1154「眠狂四郎 魔性剣」
VTR HTH-1155「眠狂四郎 多情剣」
VTR HTH-1156「眠狂四郎 無頼剣」
VTR HTH-1157「眠狂四郎 無頼控 魔性の肌」
VTR HTH-1158「眠狂四郎 女地獄」
VTR HTH-1159「眠狂四郎 人肌蜘蛛」
VTR HTH-1160「眠狂四郎 悪女狩り」
VHS LFH-1156「眠狂四郎 卍斬り」

DVD DABA-90865「眠狂四郎 無頼控 魔性の肌」
DVD DABA-90866「眠狂四郎 女地獄」
DVD DABA-90868「眠狂四郎 悪女狩り」




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