懲役
十八年


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映画 懲役十八年


公開:東映 1967/02/25
監督:加藤泰
音楽:鏑木創
製作:東映東京

内容:安藤昇、水島道太郎、若山富三郎。戦士した部下の家族を助けて活躍する。




映画 懲役十八年 仮出獄


公開:東映 1967/10/21
監督:降旗康男
音楽:渡辺岳夫
製作:東映東京

内容:仮出獄した軍司(安藤昇)は昔の仲間(伊丹十三、若山富三郎)と再会し、海外ギャング組織から金塊を盗み出す。しかしその後の抗争はジリ貧で、なんともやるせない。日本版フィルム・ノワールなのだそうだ。主演の安藤昇は役者っぽくないクセに妙に存在感がある、と思ったら「元組長」などと解説にあった。さすがの貫禄です。恐れ入りました。他に城野ゆき、松尾嘉代、伴淳三郎、沢たまき、小松方正。


メインタイトル

 軍司(安藤昇)の出獄シーン。イタリアかフランス映画を思わせるアコーディオンのソロで導入する。「仮出獄」の真っ赤でドでかい書き文字に、哀愁の音楽というマッチングが印象深い。テーマ音楽はCマイナーのジャズだ。ビブラフォンのイントロ〜トランペットのソロは映画音楽調(あたりまえですが)で、人生の悲哀を歌い上げる。Bメロはアコーディオンで、こちらは和風度が増してナベタケ調。バックの編成はウォーキングのウッドベース、キラキラと音を散りばめるピアノとフルートだ。
 なお東映荒波映像のオープニングに音楽は無く、ただ波の音だけが聞こえる。


テーマアレンジ

主題の演奏はビブラフォン〜アコーディオンがつとめる。静かな場面でトランペットが鳴ったらセリフの邪魔になりますからね。

人質と金塊を交換する場面は、アレンジというよりもメインタイトルほぼそのままのスタイルで演奏。動きの少ない沈黙場面では、トランペットが盛大に鳴ります。しかしセリフのタイミングでは、アコーディオンがテーマ演奏したり、トランペットにはミュートをつけるなど緻密な計算がなされているぞ。

ラストシーンでは三拍子になってマリンバのトレモロが加わるなど、まったくジャズ調ではなくなって、ナベタケ節が全開する。エンディングではフィルム・ノワールなどどこへやら。時代劇作品と同様に、劇伴オーケストラが「ぶわぁ〜ん」とCm9をぶちかましておられます。


ジャズ劇伴
 渡辺岳夫にしては珍しいほどに全編ジャズタッチで展開する。そこでこの作品については、他の映画よりもややていねいに記述することにした。

ジャズ路線ということで、特に主題の無い音楽もある。トランペットは会話の邪魔をしないようにミュートをつけている。フルートやビブラフォンがソロを回すが、楽譜にはどの程度の事が書いてあったのだろうか。

敵の親玉との交渉場面。命がけの交渉シーンだが、ピアノがポロポロと美しく優雅に演奏する。

「黄金の腕」('55年、音楽:エルマー・バーンスタイン)をかなりあからさまに真似た音楽がある。有名な「どばどばだ♪」(GB♭GB♭C♪)だ。

金塊を盗み出す場面にセリフは無く、トランペットとトロンボーンが存分に鳴り響く。トロンボーンが加わるのはこの曲と「黄金の腕」似の本格ビッグバンド劇伴だけで、その他のジャズ調曲は概ねコンボになっている。


非ジャズ劇伴
 しかしさすがにジャズだけでは間がもたなかったのか、通常タッチの劇伴音楽もあります。徹底的にこだわったというわけでもない。小さい編成で、さくさく録音したように聞こえます。

大宮(若山富三郎)親子のテーマでは、アコーディオンが前に出る。「アタックNo.1」('69年)の比較的明るい曲調と共通した雰囲気だ。同テーマをバイブでも演奏するが、こちらはジャズに向かう事もある。

金属弦を弾く音(ダルシマか)にエコーをかけて、数秒の休止を置いて断続的にかき鳴らす。これぞ典型的背景音楽。


沢たまき出演場面

 自らの代表ヒット曲「ベッドで煙草を吸わないで」(作詞:いずみたく、作曲:岩谷時子)をクラブ場面で歌います。歌はもう一曲あって「私の心に今も疼く傷跡♪」という歌い出しですが、タイトル不詳です。画面に登場して伴奏をつとめるのはピアノ・ベース・ギター・フルート・ドラムス(ブラシ使用)・マラカスといった面々で、ジャズ調ボーカルを意識した編成。映画のためのオリジナル編曲かもしれません。
 クラブ場面ではゴーゴー&ブルース混合調のダンス音楽も演奏されます。このときは沢がピアノを演奏しているように見えます。なお沢たまきにはセリフはありません。


既成曲

 横浜ドリームランドの場面では、遊園地やサーカスでおなじみの音楽(タイトル等がわかりません)が演奏される。やはり編曲(オリジナル編曲っぽいが)者不詳です。
 安藤昇は「赤い靴履いてた女の子」をつぶやくように歌う。


その他特徴

 アクション的見せ場は、拳銃をつきつけられた安藤昇が徒手格闘で形勢逆転するシーン、そしてマシンガンによる銃撃戦である。いずれも音楽は無いが、これは他の渡辺音楽担当作品にも見られる傾向だ。この映画の銃撃戦はものすごいぞ。少しくらいは何かで身体を隠して撃ち合ってほしいものだと思いました。




VTR VRTB-00331「懲役十八年」
VTR TE-B337「懲役十八年 仮出獄」




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