緋牡丹
博徒


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映画 緋牡丹博徒


公開:東映 1968/09/14
監督:山下耕作
音楽:渡辺岳夫
原作:火野葦平「女侠一代」
製作:東映京都

内容:時代は明治中期。藤純子が賭博で任侠する、ご存じ東映ヤクザ路線。「緋牡丹博徒」シリーズ第1作。やくざの一家同士の争いを背景に、父の仇を探すお竜さんが活躍する。最初からシリーズ化を意識していたようだ。高倉健、若山富三郎も登場。


緋牡丹博徒

作詞:渡辺岳夫
作曲:渡辺岳夫
編曲:薊けいじ
歌:藤純子
SV-1042,SVC-353

 緋牡丹お竜が仁義をきって、花札賭博をタイトルバックに主題歌が2コーラス流れる。編曲はオケの「ぶん、ちゃ,ちゃっちゃっ」+エレキギター+エレキベース+オルガンが基本。殴り込みの前に主題歌をもう一回。主題歌インストは随所に流れる、わかりやすい演出だ。藤純子の音程には若干の問題がある。

 レコード版は3番までで、2番の後に間奏がある。編曲の薊けいじとは、ビブラフォン奏者・生明慶二のペンネームです。TAITOなどのカラオケでウナれます。
 映画版とレコード版の編曲は異なる。映画版ではフルートやビブラフォンが目立つので、薊編曲をもとにした渡辺岳夫の編曲と推測される。この他にも異なるヴァージョンがあるようだが、そこまで調査するのはしんどいです。


たった一度の恋

作詞:豊野弥八郎
作曲:渡辺岳夫
編曲:薊けいじ
歌:藤純子
SV-1042,SVC-353

 ビートの効いたエレキのゴキゲンなサウンドなので、任侠映像にはマッチしない。「緋牡丹博徒」のB面曲だが、映画では使用されなかった。イントロが特にイカしており、ブラスも華やか。間奏ではベースが不思議な音を出す。藤純子の音程には若干の問題がある。




EP SV-1042「緋牡丹博徒/たった一度の恋」(廃盤)
LP SJV-20018「映画スターコレクション1」(廃盤)


CP SVC-353「緋牡丹博徒/たった一度の恋」
A面には「緋牡丹博徒(伴奏用)」(編曲:竹村次郎)、B面には「唐獅子牡丹(尺八演奏)」(作詞:水木一狼、矢野亮、作曲:水木一狼、編曲 船木謙一)も収録しているコンパクト盤




緋牡丹お岳

 夕日をバックに物憂げなフルート+バイブ(ビブラフォンのこと)とくれば、待ってましたの渡辺サウンド。劇伴のメロディーパートはフルートとエレキギターが中心。殺陣ではスローモーションにオルガン系音色が短くフラッシュです。後半は喧嘩ブラス、泣きのストリングス、ベースとギターのユニゾンもあって全体の雰囲気は「アタックNo.1」にちかい。切った張ったばかりのストーリーでもないので、シリーズのうちから一本観るならコレ。山下監督の演出も娯楽的で鮮やか。なべたけ音楽は実に藤純子のお色気を増幅しております。


泣きのストリングス

 ヴァイオリンを単独で演奏すると、悲しい泣き声のような音色がします。人数を増したいわゆるストリングスでは、特に発音時のきしんだ音が聞こえなくなって澄んだ音になるわけです。
 当時の弦パートは予算の関係からか人数が少く、マルチ録音で数を増やすこともなかったのでしょう。少数のヴァイオリンが、牡丹の緋色を鮮やかにひきたてます。




映画 緋牡丹博徒 一宿一飯


公開:東映 1968/11/22
監督:鈴木則文
音楽:渡辺岳夫
製作:東映京都

内容:シリーズ第2作。前作で脚本を書いた鈴木則文が監督・脚本。上州の戸ヶ崎一家を助けるために、四国からお竜さんが駆けつける。大人むけで味のあるドラマ構成。画面作りも丁寧で見応えがある。鶴田浩二は随所に脈絡なく登場し、何かとスジを通してストーリーを円滑に進行させる役どころ。菅原文太は悪人側に荷担して、とってもコワいです。


オープニング(以下、便宜上つけたタイトルです)

荒波おしよせる東映タイトル。弦に重なるマンドリンが、一聴してナベタケ節。

真紅のホリゾントで仁義を切るお竜さん〜そしてタイトルバックは主題歌イントロのオーケストラ演奏。「巨人の星」か「アタックNo.1」の響き。

ここから主題歌を演奏しないのだ。メインタイトルは、なんと和太鼓を中心とした「八木節」(上州の民謡)である。藤純子のバチさばきは鮮やかで、歌同様に特訓をしたと思われる。「ばりばり」ブラスと「てけてけ」エレキのサウンドが時代を感じさせるが、しかし迫力があります。


ブリッジ

 映画の中盤までは、音楽は控えめである。そのため上州・四国・東京などと舞台が変わる毎のブリッジが目立つ。四国へのブリッジ、東京へのブリッジ音楽がそれぞれある。再び上州に帰るブリッジは、Cマイナーの「八木節」フルートソロ。


アクション劇伴

●戸ヶ崎一家の討ち入り(返り討ちにあう)
 ブラス中心の音楽だが、ここもエレキがしっかり混ざっている。

●霧雨の対峙
 小太刀のお竜さんを、仕込み杖の文太兄ぃが追いつめる。お竜さんピンチ!の場面に鶴田浩二が都合よく登場。霧雨の中、菅原文太と鶴田浩二が睨み合ってAマイナー。「ばりばり」トロンボーンに「じべじべ」ギターが重なって緊迫する。


追悼劇伴

●戸ヶ崎の親分の仏壇
 悲しい中にも明るさを感じさせるCマイナーの好メロディーで「Im|♭VII、♭VI|Vm|Im」。曲自体は「アタックNo.1」路線。この曲をもっと聴きたかったが、計二回しか奏でられないのでもったいない。

●玉川死亡
 山城新伍と玉川良一がコミカルな味を添える。玉川は、お竜さんをかばって死んじゃうチョイ役である。そこであのテーマをもう一回だ。ここはフルートとエレキのユニゾン。


主題歌演出

 メインタイトルと最後の殴り込み直前で、主題歌「緋牡丹博徒」を演奏するのがシリーズのパターンである。今回は殴り込み前だけの主題歌演奏である。したがって、何度かインストアレンジの劇伴を聴いてから歌を聴くことになる。歌の感動を増幅する演出だろう。

お竜さんの音楽はストリングスで、やや人数が増えた模様。エレキが「緋牡丹博徒」の歌メロを控えめに奏でる。

東京に集まった親分衆に、直訴するお竜さん。しっかりカメラ目線である。インストアレンジをAマイナー。ストリングスやフルートがメドレーする。

最後の殴り込みは、山城新伍とのツーショットで音楽もAマイナーのインストか?。・・と思わせて、途中で鶴田浩二が合流。そこから歌(Gマイナー)が始まるのだ。


その他特徴

ひとしきりドラマが盛り上がった後で、お竜さんが一人になってから音楽というパターンがある。それにあわせて音楽は、ちょっぴりおセンチなエレキメロで「アタックNo.1」的。
 わからないのはAマイナーとCマイナーの曲が混在すること。「巨人の星」は主題歌に合わせたCマイナーの劇伴がある。しかし「緋牡丹博徒」では、Cマイナーの必然性がない。

圧巻はお竜さんと鶴田のダイアログ。鶴田の語りで「八木節」から始まって展開し、対話の流れに沿って盛り上げる。

最後の大喧嘩場面には、音楽はいっさい無い。その代わり、命のやりとりが全部終わってから派手に鳴ります。




映画 緋牡丹博徒 花札勝負


公開:東映 1969/02/01
監督:加藤泰
音楽:渡辺岳夫
製作:東映京都

内容:シリーズ第3作。舞台は名古屋。お竜さんのニセモノが現れ、イカサマをする。やがてニセお竜は改心するが、ストーリーの流れの都合で惨殺されてしまう。高倉健も登場して、エエ場面を全部かっさらう。
 タイトルバックの主題歌は1コーラス。そして最後の殴り込みの前には2番を演奏。3作目ということで歌い手が慣れたのか、聴き手が慣れたのか、藤純子の歌が少し上手になったように感じられる。なべたけ自ら藤を特訓したと言われるが、その成果かも。


ニセお竜をかくまう(以下、便宜上つけたタイトルです)

 お竜さんがニセお竜をかくまう場面。追っ手はサスペンス音楽にのって迫る。絵の移り変わるシークエンスに合わせて、弦あり、じべじべギターありのいわゆる劇伴音楽。CD ABCS-1004には未収録です。


ニセお竜をさとす

 泣き崩れるニセお竜。フルートの長いソロから始まる、短い音楽。場面が転換するので、ブリッジ的な音楽だ。これもCD ABCS-1004には未収録です。


ニセお竜に金をあげる M-2

 お竜さんってば、人が良いですね〜。曲の出だしはニセお竜のイカサマ花札を焼いて証拠隠滅する場面のフルートで、その後の弦テーマとは独立している。サントラで聴くと、そこがまた音楽的だったりします。


雨中の出会い M-11

 お竜さんが健さんに傘を貸す場面は、実に味のある「Am|B♭」というコードで始まる。Aマイナーの曲における、オトナのための劇的パターンなのだ。主題を演奏するのはナイトクラブ的な発音のサックスで、渡世の義理は欠かさない。
 健さんが去るとテーマはしっかり変わるのだった。ストーリーを進めるために必要なお竜さんのセリフのバックは、クネるような歌うような弦だ。人数不足を補うために電子楽器の和音でスキマを埋めるが、これもまた良し。終わり際はオルガンによるテーマアレンジで締める。


ニセお竜死亡

 ニセお竜が血まみれで死んじゃう場面の短い音楽。和音一発だが緊迫感を盛り上げる。「おかあちゃん!おかあちゃん!」と泣き叫ぶ子供がかわいそうです。CD ABCS-1004には未収録です。


追跡の荒野 M-8

 まさに西部劇伴。馬車で逃げるお竜さん一行を、やくざ者が馬で追う。低音エレキが「ずんべろ、ずんべろ」とリズムを流し続けて、バックにはティンパニあり、ドラムスあり、ブラスありでテーマはサックス。エンディングはオルガンのトニックマイナー「ぎゅーん」という展開は、往年のTVアクション番組を思いだします。なぜかEマイナーの曲なので、別作品からの流用曲かと思いました。Mナンバーがあるので、恐らくオリジナルでしょう。


藤純子 VS 高倉健 M-9

 TV時代劇でおなじみ、ブラスの「ばっ、ばっ」という対決ムード。カン高い木管が緊張感を盛り上げる。しかし、エレキの柔らかな和音をきっかけに健さんはドスを納める。劇伴は男のやさしさを歌い始める。彼を讃えるサックスは「健さんのテーマ」だ。やがてテーマアレンジへつなぐという渡辺映画音楽の世界である。一宿一飯の恩義によりお竜さんを追いつめた健さんだが、彼は土壇場で義理よりも人情を選んだのだ。男である。


夜の帰名 M-10

 場面転換→汽車で名古屋に帰るお竜さん。エレキメロ〜弦のテーマアレンジの短い音楽。


花札勝負 I

 恒例の花札勝負。お竜さんの札さばきは鮮やかです。音楽は勝負の流れにのって、ひたすら緊迫します。悪党ヅラのアップにはブラスの「ばっ、ばっ」など様々な要素がかぶさりますが、音楽だけ聴くと辛いかもしれない。そのためか、CD ABCS-1004には未収録です。


傘を返す健さん M-12

 ギターで寂しく始まる。続いて弦の奏でる主題は「お竜さんのテーマ」と言っても良いだろう。「アタックNo.1」(同'69年)の劇伴と、「燃えよ剣」(翌'70年)のテーマをくっつけた感じのメロディーだ。お竜さんに傘を渡す健さん。主題はサックスによる健さんのテーマに移る。立ち去る健さん&見送るお竜さんのバックは夕焼け空が美しく、トランペットが良く映える。


殺人指令 M-13

 悪い親分が健さんに殺人を命令する。渡世の義理に苦悩する健さん。ここではトランペットにミュートをつけて「ちーちー」とサスペンスフル。後半は手術場面に切り替わって、心臓の鼓動のようなリズムが聞こえる。


雪の再会 M-14

 お竜さんと健さんの再会。音楽でも二人の主題が交錯する。実はM-14はM-12とよく似た構成で、使用する楽器を変えてある。健さんのセリフにあわせてギターのテーマ〜ストリングスの展開〜フルート〜サックス〜トランペットという組曲的展開。雪降る名場面である。


善玉親分を襲う健さん M-5

 悪人にも一応義理立てして、善玉親分を襲う健さん。わざと急所をはずします。サックスが歌う健さんのテーマには男もうっとりです。しかし善玉親分は重傷を負ったので、後半は弦が緊迫します。時代劇でおなじみの、地の底から沸き上がるパターンだ。


親分衆集結

 各地の親分衆が続々集結する場面の短い音楽。TV時代劇「燃えよ剣」(翌'70年)のイントロに似たブラスです。CD ABCS-1004には未収録です。


善玉死亡〜花札勝負 II M-18

 善玉親分の死に、のたうちクネる弦楽演奏。悲痛な高音が悲しくも美しい。これは重要な劇伴トラックだ。後半は、沈痛の面もちのまま賭場に出るお竜さん。(比較的)大人数のストリングスによる豊かな響きで花札勝負。録音状況が充実したのか、エコーも自然に聞こえます。


お竜さんのテーマ M-19

 ニセお竜の娘の視力が回復する感動場面。「おばちゃんキレイ」と言われてしまうお竜さん。複雑な心中が思いやられる。しかしここは笑う場面ではなく、お竜さんのテーマが繰り返し演奏されて涙を誘う。お竜さんのテーマは他の部分にも登場するので、このトラックで確認されたい。


善玉親分のお通夜 M-20

 悲しみのお通夜である。こみあげる組員の怒り。ついには殴り込みを決意するが、今夜だけはそっと過ごすことにする。〜以上の流れが、このトラックでは表現されている。劇伴的なトラックであるが、サントラで聴いてまた良し。


テーマアレンジ〜お竜さんのテーマ〜エンディング M-22

 最終決戦殴り込みの場面に音楽は無い。この音楽は喧嘩の後から始めるのだ。たたかい終わって、健さんとお竜さんのツーショット。主題歌のインストアレンジ〜「お竜さんのテーマ」〜「健さんのテーマ」を経て大団円。


 お竜さんが「驛屋古名」(明治時代はこう書いた)でドスの舞を見せる場面に音楽は無い。闇夜を背景とした美しい映像だが、あえて音楽は排したのだろう。実はこの作品の音楽の一番エエところは、高倉健がさらっていく。雨中の出会いの「Am|B♭」にのせたメロディーは「健さんのテーマ」とも言うべき使われようで、何度も登場する。
 対照的に藤純子のための楽器編成は、第1作に引き続き「アタックNo.1」の路線である。鮎原こずえとお竜姉さんの目立った相違点は、リズムであろう。例えば、お竜さんはタンゴしません。


CD ABCS-1004「藤純子主演作品Vol1」
「緋牡丹博徒 花札勝負」音楽:渡辺岳夫 16トラック
「緋牡丹博徒 お竜参上」音楽:斉藤一郎 14トラック

 ただし「お竜参上」のトラックにも主題歌や歌メロインストが収録されています。また「お竜参上」の最後のトラックは雷の音です。「花札勝負」の音楽トラックには、主題歌のインスト演奏もあります。「映画を完全再現」なんて書いてあります。未収録曲もありますが、概ね再現している感じです。

 このCDアルバムには印刷物(とてもライナーとは呼べない)が付属していて、「緋牡丹博徒 お竜参上」だけのスタッフ&キャスト&詳細ストーリーが書いてあります。それ以外に解説等はありません。権利の関係からか、藤純子の姿はイラストのみの掲載で、写真の類はオビと裏ジャケの映画ポスターだけです。
 藤純子の歌う「緋牡丹博徒」もフルコーラスで収録されていますが、作詞・作曲・編曲のクレジットはありません。そもそも主題歌のタイトルが「緋牡丹博徒」であることも書いてありません。B面曲「たった一度の恋」は収録されていません。

 ずいぶん文句をつけましたが、音楽をじっくり聴きたい方にはオススメします。付属印刷物はこれより粗悪には作れないほどの最低ぶりですが、収録されている音楽は本物です。また、このアルバムを買われる方には、是非映画本編の鑑賞もオススメします。「健さんのテーマ」「お竜さんのテーマ」とも呼ぶべきメロディーを場面に合わせて味わえるからです。




映画 緋牡丹博徒 二代目襲名


公開:東映 1969/04/10
監督:小沢茂弘
音楽:木下忠司
製作:東映京都

内容:シリーズ第4作。舞台は九州。噴煙もうもうの阿蘇をバックに「緋牡丹博徒」のタイトルをなぐり書き→おなじみの主題歌。長門裕行が三枚目で出演。ウルトラ警備隊の隊長も登場する。「音楽:渡辺岳夫」と表示して売っているビデオソフトがあったが、劇伴担当は木下忠司である。




映画 緋牡丹博徒 鉄火場列伝


公開:東映 1969/10/01
監督:山下耕作
音楽:渡辺岳夫
製作:東映京都

内容:シリーズ第5作。藤純子、若山富三郎、鶴田浩二。今度の舞台は徳島だ。徳島とくれば阿波踊りである。地主VS小作の対立に関わったお竜さんは、当然ながら小作の味方をする。お祭りのアトラクション・大尽博打(金持ちのバカ博打)でもうけるやくざは、地主の味方になって小悪の限りをつくす。しだいに対立は深まり、お竜さんの仲間は皆やられてしまう。→そして悪を退治するラストへ。丹波哲郎がズルいくらいにカッコ良い役まわりで登場。


東映荒波 M-1(タイトルは便宜上のものです)

 「どじゃぁ〜ん」とスンごいブチかまし。続いて主題歌メロで大見得を切る。劇音楽と主題歌作曲が同一人ならではの迫力。


メインタイトル〜緋牡丹博徒 M-2(vo)

 メインタイトルの短い音楽は、主題歌への序奏として聴くことができる。メインタイトル→イントロ→歌という流れが自然な展開だ。クレジットのバックは、ご存じ藤純子の歌である。この歌は第1作と聞き比べると向上しており、歌いまわしにダイナミックさが備わってきた。ブレスまで聞こえちゃう。歌が終れば切れ目なく劇伴音楽が始まって、スムーズに本編へ導入する。


徳島の暮らし M-4

 のどかな生活・労働と豊かな自然を描く、美しいブリッジ音楽だ。短いながら場面転換〜ストーリーへの導入という二部構成になっている。


テーマアレンジ〜鉄火場勝負

 毎度欠かせぬ花札勝負の場面である。オルガンによるメロオケ。お竜さんのセリフはほとんどなく、目線と仕草の演技で見せる。メロディーはオルガンからフルートに移るが、すぐに中断してサスペンスタッチが盛り上がりまくる。そして!不意に音楽の流れが止まったら、それはお竜さんがイカサマを見破る時だ。CD ABCS-1009~10には未収録。


江口とのダイアログ

 渋い対話シーンである。静かな音楽がそれぞれのセリフの流れと絶妙に絡んで流れていく。お竜さんのテーマとして「一宿一飯」でも聴かれるモチーフを使っている。ていねいな作りこみの、これぞ劇伴音楽であるが、CD ABCS-1009~10には未収録。


河原の決闘 M-10

 大阪の親分(丹波哲朗)は、お竜さんにピストル決闘を挑む。丹波御大をバックアップするためか、この場面では音楽が鳴りっぱなしで大サービスをする。エレキの「べんべ」や、ブラスの間欠的な「ばっばっ」など、TV時代劇でもおなじみのパターンである。
 低音エレキの「べんべ」は、ツナギのユーティリーティーになっている。「べんべ」で一息いれれば、その後は叙情音楽にもサスペンスにもつなぐことが可能です。CD ABCS-1009~10に収録のM-10は、本編で使用された分より長い。後半部分は録音したものの、結局は使わなかったようだ。映画のビデオとCDを同時に再生して比較したが、使わなかった音楽もその後の映像の流れにシンクロしている。


花札勝負 1 on 1 M-11

 詳細はわからないのですが、鶴田浩二とアトサキ勝負をしているらしい。時代劇映画などでおなじみの「ぎりぎり」という謎の音が使われている。貝をこすりあわせるようだ。


三代目惨殺 M-13

 中之島橋の決闘シーン。ここでも音楽が鳴りっぱなし。闇夜を切り裂くブラスの刃!。血まみれの闘い〜動けなくなった敵にトドメの一撃までをド迫力で楽劇演出する。しかしながらCD ABCS-1009~10に収録のM-13は40秒あたりでフェードアウトしてしまう。この重要な活劇音楽を中途半端にカットしてしまう理由は不明。このCDに収録のM-14には、カットされた部分に似た展開が混じっている。


三次の死

 重傷を負って瀕死の仏壇三次。お竜さんとのダイアログ〜娘と最後の会話〜臨終までのシークエンス。弦がしっかり泣いている。こういった美しい音楽に限ってCD ABCS-1009~10には未収録。


江口を説得 M-6

 我慢に我慢を重ねた元やくざ・江口が、ついにドスを手にとった。しかしお竜さんが説得して彼を思いとどまらせる。夕日をバックのダイアログは、トランペットのソロ〜フルートのソロ〜弦に「ちりちり」音を重ね、なべたけ得意楽器の揃い踏み。
 CD ABCS-1009~10に収録されたM-6は途中で終わってしまう。神を恐れずにフェードアウトしてしまうのだ。映画本編を観るとこの音楽にはしっかりと続きがあって、お竜さんのテーマも流れてしっかり泣かせてくれます。もっともTV放送では、禁止用語カットの巻き添えをくらって音楽がブチ切れる一幕もある。音楽に罪はないぞ。CD屋もTV屋も反省してくれ。


殺陣・スローモーション

 今回は、最後のなぐり込みの前に主題歌演奏というパターンではない。クライマックスへの展開は比較的地味で、背景には阿波踊りの祭囃子が小さく聞こえているのみである。喧嘩場面には、敢えて音楽をいれない演出だ。
 しかし本作では、最後のドス勝負で音楽が鳴る。この殺陣はスローモーションで、音楽はピアノクラスターやパーカッションの間欠的乱打。これは珍しくアニメ的な音楽演出だ。ちなみにこの作品は「巨人の星」と同時期である。CD ABCS-1009~10にはしっかり収録。


ラストシーン〜エンディング

 旅立つお竜さん。叙情劇伴からエレクトーンの主題歌メロに自然につなぐ。やはり主題歌を生かしたノリがエエものです。エンディングでは、とっておきのブラスが盛大に盛り上げて「終」の一文字。こいつぁ感動的だぜ。でもCD ABCS-1009~10には収録。


CD ABCS-1009~10「藤純子主演作品Vol2」
「女渡世人」音楽:渡辺岳夫 15トラック
「緋牡丹博徒 鉄火場列伝」音楽:渡辺岳夫 12トラック

 この他に「緋牡丹博徒 仁義通します」(音楽:小杉太一郎)、「緋牡丹博徒 お命いただきます」(音楽:木下忠司)、「関東緋桜一家」(音楽:木下忠司)を収録している。

 この2枚組みCDアルバムは、このシリーズの他のCDと同様で、構成・装丁・ライナーとも最悪である。それに加えてこのCDは選曲にも問題がある。サントラ盤の構成は、映画や音楽に対する感性の問題の他にも、テープの保管状況や権利関係の問題もある。だから一概に「構成が悪い」と言えないような何らかの事情があるかもしれない。しかし、少なくとも「鉄火場列伝のサントラ」としての価値は少ない。そもそもCDの成り立ち自体が、音楽家はゴタ混ぜで「藤純子」を軸に構成しているのだ。藤が大好きな人はコレクターズアイテムとして入手すると良いだろう。映画ファン・音楽ファン・岳夫ファンにまでは無理にオススメできない。CDを買うよりも映画本編を観るほうが良ろしい。




映画 緋牡丹博徒 お竜参上


公開:東映 1970/03/05
監督:加藤泰
音楽:斉藤一郎
製作:東映京都

内容:シリーズ第6作は、浅草が舞台。興業をめぐる地元やくざの争いに人情話もからめて、お竜さん大活躍。菅原文太も登場。


 タイトルバックで主題歌が1コーラス流れる。この演奏もレコード版とは別ヴァージョンで、比較的豪華な編曲。歌の後、長めの後奏で本編に導入する。雪降る橋での藤純子と菅原文太のツーショットのバックには、インストで流れる。クライマックスの前にもう一回主題歌で、対決ムードを盛り上げる。




映画 緋牡丹博徒 お命戴きます


公開:東映 1971/06/01
監督:加藤泰
音楽:木下忠司
製作:東映京都

内容:「緋牡丹博徒」シリーズ第7作。藤純子、若山富三郎、大木実 。陸軍の鉱山で汚職する悪人どもをこらしめます。最後の大立ち回りの前に、主題歌が1コーラスだけ流れる。この演奏もレコード版とは異なる。




映画 緋牡丹博徒 仁義通します


公開:東映 1972/01/11
監督:斎藤武市
音楽:小杉太一郎
製作:東映京都

内容:シリーズ最終第8作。藤純子、菅原文太、片岡千恵蔵、松方弘樹、若山富三郎。




VTR VCTB-00018「緋牡丹博徒」
VTR VCTB-00156「緋牡丹博徒 一宿一飯」
VTR VCTB-00019「緋牡丹博徒 花札勝負」
VTR VCTB-00172「緋牡丹博徒 二代目襲名」
VTR TE-B189「緋牡丹博徒 鉄火場列伝」
VTR 「緋牡丹博徒 お竜参上」
VTR 「緋牡丹博徒 お命戴きます」
VTR TE-B332「緋牡丹博徒 仁義通します」

DVD DSTD-2083「緋牡丹博徒」
DVD DSTD-2135「緋牡丹博徒 一宿一飯」
DVD DSTD-2167「緋牡丹博徒 花札勝負」
DVD DSTD-2337「緋牡丹博徒 鉄火場列伝」




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