ゴキブリ
刑事(でか)


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映画 ゴキブリ刑事


公開:東宝 1973/06/09
監督:小谷承靖
音楽:渡辺岳夫
原作:新岡勲
製作:東宝、石原プロモーション

内容:臨海工業開発で活気づく都市に赴任してきた鳴神刑事(渡哲也)。所長表彰15回、警視総監賞4回、停職3回、減給6回、戒告9回、訓戒25回のスゲェ奴。街に巣くう暴力団・鮫島一派と対決する。邦画アクションの迫力に刮目必至。刑事モノにぴったりの音楽は、文句なしのカッコ良さ。他に加賀まりこ、地井武男。


オープニングシークエンス

東宝マーク
 光輝く東宝マーク。暗くなった映画館でベースのリフから導入するとドキドキします。TV時代劇「影同心」('75年)で多用するタムの「どたどた」。そしてブラスが突如「ぶぁ!」と脅かす。全体がFm一発っぽいのでブラスはFmM7と思われますが、オギュメント(C、E、G#)かも?。ベースが鳴ってないのでわかりにくいです。この作品に関してではないが、渡辺岳夫にはファンから「ベースがわからないから教えて」といった手紙がきたらしい。しかし音楽家の作品は、最終的に鳴っている音がすべて・・というわけです。

イントロダクション 第一の殺人
 ロックからクロスオーバー調の音楽。「太陽にほえろ!」(前'72年、音楽:大野克夫、神保正明)でもおなじみで、ハードな刑事に似合う音楽だ。Fm一発の展開。東宝マークと共通したベースのリフは「F、↑F、E♭、C♪」の4音で構成。ワウの効いたエレキとオルガンの演奏で、特にメロディーは無い。

イントロダクション 第二の殺人
 オルガンのコードが一発鳴り続けるが、オルガンの音色は倍音が大きいので何やらわからない。ミュートしたトランペットが「ぱぉ!」と脅かす。

スタッフクレジット
 工事現場の轟音。音楽は無い。

イントロダクション 歯磨き
 朝の身支度をする鳴神刑事。歯磨き場面に音楽は無い。

キャストクレジット
 鳴神はインスタントコーヒーに水道の水を注ぎ、歯ブラシでかき混ぜて飲んじゃう。そこから始まるオルガンソロの渋いメロディーは映画「遊び」('71年)の劇伴音楽と同じであり、使いまわしと見られる。
 やがてギター、ベース、パーカッション、ブラスの順に加わってくる。展開はやはりFm一発で、オルガン〜フルートとソロを回す。ブラスのキメもバッチリ(当時風の表現)だ。このキャストクレジット部分の音楽を「テーマ曲」と位置づけて良いだろう。本編中でもテーマアレンジとして演奏される。

イントロダクション 出頭
 赴任先の警察署に出頭する鳴神刑事。音楽は無い。

タイトル
 さっそくヤクザと一悶着して、ようやく「ゴキブリ刑事」のタイトルが現れる。これまで登場したすべての要素(ベースのリフ、タムのドタドタ、ぱぉ!等)をブチかましています。こちらはFmM7一発でしょう。3rdがマイナーで7thがメジャーという和音には、怖さと悲哀が混在しています。これに対してオギュメントコードには単純なオドロオドロしさがあります。


サブテーマ

 鳴神刑事は鮫島の一味を次々と別件逮捕する。刑事自ら「別件だ」と言うからわかりやすいぞ。実物の警察官は決してそんなこと言わない(と思う)。じゃんじゃん悪を捕まえる痛快場面の連続で、音楽もノリノリの爽快感だ。「ロボコップ」('87年、音楽:ベージル・ポールドゥリス)にもそんな場面があるよね。
 Eマイナーのブルース的展開で、こちらもブラスのキメがバッチリである。渡辺岳夫にしては珍しくソプラノサックスをフィーチャーしている。このあたりはクインシー・ジョーンズを意識したのかもしれない。そういえば、初めての土地で単身捜査という設定は「夜の大捜査線」('67年、音楽:クインシー・ジョーンズ)と共通していますな。なべたけクロスオーバーは「ロッキー」('76年、音楽:ビル・コンティ)の影響かと思っていたが、'73年からこんなサウンドも使っていたとは。
 このテーマは終盤の見せ場でも派手に演奏されるので、サブテーマと位置づけたい。ただしテーマがFマイナーでサブテーマがEマイナーになっている理由は全然わからない。


スナックの音楽

 自動車で通勤しているくせに、警察署の隣のスナックで水割りを飲んじゃう鳴神刑事。実物の警察官は決してそんなことしない(と思う)。スナックでは静かなオルガン曲がシャッフルしている。この音楽にもメロディーがない。


ジュークボックスの音楽

 スナックで鳴神刑事がいつも聞くK-3番の音楽だ。これが実にエエ曲なのよ。他の劇伴曲と関連はないが、渡辺岳夫オリジナル。「グレン・キャンベルのバイ・ザ・タイム・アイ・ガット・フェニックスが好き」という監督のリクエストに応えた音楽とのこと。これはロックではなくクロスオーバー(当時の呼称)か、はたまた良質のスクリーンミュージックか?。否、これこそ音楽である。当時発売されたEPレコードのB面曲か?、というくらいの気合いの入りようなのだ。サントラ盤でフルサイズを聴きたいぞ。・・・と思ってたら、2011年に発売された「ザ・ゴキブリ」のDVDにサウンドトラック収録されました〜。やったぜ!。


その他の音楽

短いブリッジ曲には、テーマやサブテーマその他劇伴曲と同一の要素があり、映画全体での統一感がある。ていねいな構成だ。

鮫島暗殺に失敗した若者が帰宅する場面に、エレピメロディーとアコギバックの短い曲がある。この一曲だけ別仕様として仕上げてあるみたいだ。


四季

 裕子(加賀まりこ)の部屋では何故か「四季」(作曲:ビバルディ)が鳴っている。彼女は部屋でレコード鑑賞でもしていたのか、それとも映画のBGMなのか不確定的な音楽の使用だ。しかし、この場面では特に「春」の第2楽章が効果的である。


うたもの

 歌謡曲調で「二度としないわ恋なんか♪」、「同じ雨でも私には♪」、「女泣かせの、女泣かせの♪」といった歌が流れる。作曲者等のデータ不詳。酒場の有線放送的でもあり、映画のBGMでもあるような使われかたで、これは四季と同様。




映画 ザ・ゴキブリ


公開:東宝 1973/12/01
監督:小谷承靖
音楽:渡辺岳夫
原作:新岡勲
製作:東宝、石原プロモーション

内容:所長表彰15回、警視総監賞4回、停職4回、減給6回、戒告9回、訓戒25回のスゲェ奴。続編なので停職回数が増えているぜ!。暴力団の偽装解散、警察との内通、暗躍する右翼の大物、そして公害企業・・・今度の悪は社会派だ!。ゴキブリ刑事(渡哲也)は敢然と立ち向かい、堂々たる肉弾戦&銃撃戦でやっつける。涅槃で待ってる沖雅也も刑事役で出演だ。


東宝マーク

 「ゴキブリ刑事」で聴かれたベースのリフは健在だ。両作に共通したキー成分になっている。新要素としてダルシマの「ざんばら」が大音量で使用されている。ダルシマは、TVA「キューティーハニー」(同'73年)でも活用した楽器だ。このダルシマ使用は、続編「ザ・ゴキブリ」の特色となっている。


メインタイトル

 刑事アクションの見本のようなハードボイルドテーマ音楽。ブラスやギターは無論のこと、オルガンサウンドも捨て置けぬ。「Am|Am|Am|Am|Am|Am|F|G|E|E|Am|Am|F|G、C|B♭|B♭|C|E」どろどろAマイナーの暗闘から、ヒ−ロー登場して連続メジャーで活劇する。特にシビれるのは「F→G」のメジャー上向部分。「キューティーハニー」でもAマイナーから「C→D→E」といった展開があるのでチェックしておきたい。


その他特徴

バッハ的な劇伴音楽がある。一曲はエレピ中心で、愛のテーマといった趣。もう一曲はオルガンも出てくるジャズ・フーガ調。バッハ路線はTV時代劇「影同心」('75年)でも聴かれる。

映画「遊び」('71年)の劇伴主題は、「ゴキブリ刑事」ではイントロに一度だけ現れた。今回は全編で演奏され、特に沖雅也とのカラミ場面で印象深い。前作で「使いまわしても大丈夫」という手応えをつかんだのかもしれない。このフレーズは、TVA「アタックNo.1」('69年)の全日本初試合の回でも聞かれる。




VTR TG-1474「ゴキブリ刑事」
VTR TG-1481「ザ・ゴキブリ」


DVD TDV-21078D「ゴキブリ刑事」


DVD TDV-21079D「ザ・ゴキブリ」
 特典として「ゴキブリ刑事」と「ザ・ゴキブリ」の両作品の音楽を収録したサウンドトラックが、未使用曲まで含めて全45曲収録されている。さらに付属の解説書には音楽のことだけ集中的に書かれている。最高だ!。




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