戦後
猟奇犯罪史


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映画 戦後猟奇犯罪史(成人指定)


公開:東映 1976/06/19
監督:牧口雄二
音楽:渡辺岳夫
製作:東映京都

内容:泉ピン子、川谷拓三、室田日出男。猟奇的犯罪を描いたオムニバス映画。ある程度実在の事件をベースにしている関係で、このページには具体的な内容記述を控えめにしておきます。
 当時渡辺岳夫は牧口雄二とのコンビで、成人向け作品をいくつか担当しています。以前はレンタルビデオ屋の18禁コーナーを探索して発掘しておりましたが、21世紀になったらDVDが続々発売されて歓喜であります。されども成人指定作品は、18才未満の方は鑑賞できませんのでご注意ください。実際は、今時のR指定作品や、残酷描写野放し状態のアニメ作品のほうがよほど刺激的ですけれど。


メインタイトル

 これは珍しい。サンバホイッスルとアゴゴベル(?)オンリーで、ラテン調のイントロ。東映荒波映像にはミスマッチな面白さがあります。バンドのリズムが加わって、タイトルバックはコンガのソロ!。続いて案内役の泉ピン子が登場。あれあれ、背景には「泉ピン子ショウ」なんて書いてあるぞ!?。彼女が往年の人気番組「ウィークエンダー」よろしく、数々の戦後犯罪を一気に紹介する。せっかくのメインタイトルだが、泉ピン子がしゃべくりまくる関係でテーマらしきものはあんまり聞こえません。C一発の音楽で、ベースは「C、、CC、、CCE、F、F#、G」を繰り返し、オルガンとフルートが適当にリズムにのっかります。


サスペンス劇伴

サスペンスを盛り上げるシンセ音とエレキギター。シンセ音はおなじみのストリングスの他、「ひゅるぅ〜」とお化けの出る音など。シンセ音はあまり重ならず、主に単独音色で登場・・というか、根本的に予算が少ない模様。

「じぃ〜ん」というシンセは単音で、「EFG#BD」を一音あたり数秒鳴らす。そこへフルートが「ぴひゃら!」とフラッシュしたり「びろびろ」しております。その雰囲気は'80年「赤かぶ検事奮戦記」にちかい。

「じぃ〜ん」シンセは、無伴奏でひとつの音程(F音など)を「じぃ〜ん、じぃ〜ん、じぃ〜ん、じぃ〜ん」と鳴らし続けるパターンもある。音楽というよりSE的な鳴り方だ。

ストリングス音色は、単独で白玉不快和音専門です。


ナレーション

 泉ピン子のナレーションBGは、えんえんとコンガのソロ。あるいは「ちゃかちゃか」エレキの独奏〜コンガのソロといった趣向。


濡れ場劇伴

 成人作品の見せ場、燃える二人のカラミの場面では、コンガとフルートが二人っきりでからみます。フルートは「AA#BC」の繰り返しを基本にしてパコパコと忙しく演奏。妖しい営みを密やかに演出する。


通常劇伴

 比較的低予算と思われる成人映画音楽。しかしドラム・ベース・エレピのリズムにテーマがフルートといった豪華編成もあります。

第1話で小学生が詐欺師の人相を見抜く場面ではCとFをくりかえす。第2話の解決シーンでも、軽やかなフルートの明るい音楽です。オムニバス構成なので、この直後に慌ただしいリズムで「お次ぎの事件だ!」というわけです。

連続暴行犯(川谷拓三)が犠牲者の女性を誘い出す場面では、単調に「C|F|C|G」(翌'77ラスカルOP冒頭)をくりかえす。かと思いきや意表をついて「C|A|Dm、G|C、A|Dm、C|B♭|E|C|A|Dm、G|C」などと、渡辺的な曲もしっかりと登場。

Am一発の曲では、くりかえすベースパターンが印象的。

ドラム・ベース・エレキのリズムで、なぜか歌手がフィジカルトレーニングをする。その歌手がステージで歌う場面は省略されており、歌のエンディングだけが聞こえる。その部分はおなじみのストリングス音に、フルートがちょいと鳴って「歌謡曲のエンディングでござい」とするハイテクニック。


クライマックス

 全3話のオムニバス構成だが、川谷拓三が熱演する第3話に大きなウェートがおかれている。その最終シークエンスである「犯行場面〜遺体発見〜遺族の怒り」のパートでは、音楽面でも大きな盛り上がりがある。

「犯行場面」と「遺族の怒り」は同じテーマになっている。このように文章で書くと不自然に思われるかもしれないが、実際は説得力があって効果的なのです。この曲は'77年TVドラマ「志都(しづ)という女」のテーマ曲によく似た構成である。TV時代劇「影同心II」('75年)の劇伴音楽にも似ている。

「遺体発見」は哀悼の「IVM7|IIIm7|IVM7|IIIm7」で、フルートには渾身のエフェクトがかかっている。このシーンだけ観れば、「実際の事件をネタに、面白くやらしく商売する」ような映画では決してありません。人間の情念が恐ろしいほどの迫力で画面から伝わってくる。


その他の特徴

単音で断続的に、「ごきっ」とした低音ピアノ。TV時代劇や「ザンボット3」に類例あり。

シンセ単音曲に無理矢理ビブラスラップが鳴って、曲を終わらせるパターン。これはTV時代劇「騎馬奉行」テーマ曲にもみられる。




VTR VRTB-00663「戦後猟奇犯罪史」

DVD DSTD-03466「戦後猟奇犯罪史」




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