国際平和の時代

構造改革の本質は「発想の転換」

子育て支援、高齢者福祉、障害者対策環境対策で新しい雇用の創出と経済効果を!

公共事業を土木から福祉へ転換しよう!


私は兼ねてより、福祉の推進は決して経済成長の重荷になるものではないとくり返し主張してきた。むしろ、社会保障の充実を推進することこそ、景気回復、雇用創出につながると訴えてきたつもりである。一昔前までまかり通ってきた「福祉亡国論」を口にする人は少なくなったが、未だに福祉は“ムダ使い”と連想する人は存在する。
福祉先進国として北欧のスウェーデンやデンマークが例に上げられ、これらの国は早晩経済的行き詰まりを迎えるだろう・・・といわれたが、一向にそのようなことは起きていない。それどころか、経済成長一辺倒で福祉が置き去りになってきた日本の財政の方が破たんしかけている。日本経済の今の状況が「福祉のやり過ぎ」によるものであると いう人など一人もいないだろう・・。
私は、福祉をしっかりやれば、経済成長などどうでもいいというつもりはない。この文章は、むしろ、経済成長の為、福祉をうまく利用しようというのである。経済成長に必要な基本的要素は、資本と労働力である。少子高齢社会を既に迎えている日本にとって、特に問題なのは労働力の確保である。今は政策の失敗で失業率が高くなっているが、将来的には絶対的な人間の数が 減るのであるから、労働力が不足することは目に見えている。これを解決する為には、高齢者や女性の働きやすい社会環境をつくることが不可欠である。子育てや老親介護の負担をかぶらないですむような社会システを用意しなければならない。私たちが支払った税金はこのような社会づくりのために優先的に使われるべきである。果たして、日本で税金が福祉に十分使われているであろうか?もしそうなら今のような「寝たきり老人大国」になってはいないだろう。
過日の参院選の焦点にもなったように、日本で税金が最も多く投入されているのは 大型の公共事業であり、その中には“ムダ”と言われているものがかなり多い。ここにこそ しきりにいわれる“構造改革”の本質がある。経済、財政的見地からいえば、福祉を建築、土木に変わる‘公共事業’とみようということである。その経済効果を真正面から正当に評価していきたいと考える。例えば、ある村で100人のお年寄りが入居できる特別養護老人ホームを作るとしよう。 現在の制度では、施設の建設費用の3/4が補助金としてその村に入る。そして100人の入居者の生活費、介護費が入る。一人当り30万円として、1ヶ月で30万×100人で3000万円。年間で3億6000万円になる。当然、このホームで働く人もいる。 それを50人としよう。新たな雇用の創出である。又、入居者が支払った生活費等は、食料品や衣料品の購入代金にまわり地域の商店におちる。又、高齢者介護から 解放された女性が仕事ができるようになれば、そこに所得税、社会保険料を払うことになる。消費力が高まるなどの循環も起きてくる。こう考えていけば、特別養護老人ホームと いう福祉事業は、高齢者介護に困っている人が助かるばかりではなく、村全体にいろいろなメリットがあることがわかる。
もう一つ同じような例で考えてみよう。
ある市に保育所を新たに一つ作ることにする。勿論、保育所が足りなくて困っていた母親たちが喜ぶ。そして、そこから様々な経済効果が派生してくる。新たに保育所に子どもを預けることができた女性は、喜喜として働きに出る。すると、この女性が収入を得ることになる。それと同時に、所得税、地方税、社会保険料も支払う ことになるのだ。預ける側だけではない。預かる側の保育所において、数人の保母の雇用が生じる。この人達も同様に税金などを負担することになる。そして、働くようになった母親 、保母らの可処分所得は、当然消費へまわることになる。要するに、保育所を整備して女性が働くようになると、国や自治体に税金や保険料が入るので、財政的にも助かるし、消費も活発になり、企業も潤うという事につながる。 この乗数効果は、従来の土木型公共事業よりは、はるかに高いといわれている。さらには、女性の自己実現の機会も広がるということなので、まさに良いことづくめである。
発想の転換こそが、構造改革の本質である。今まで述べたような考えに切り替えていけば、日本は住み良く、自己実現しやすい社会になり、マイナスイメージとしての少子 高齢社会を豊かにしていくことができるはずである。もはや、福祉を一昔前の保守対革新というイデオロギー抗争の道具にする時代は終わった。
2000年11月に「交通バリアフリー法」というものがスタートした。もう今までの例でもわかるように、障害者、高齢者、妊婦、けが人などが暮らしやすい障壁を取り除いたバリアフリー 社会を作ることで、やはり、そこに新たな雇用や経済効果が生まれることは明白である。同じ道路工事でも、障害者などが使いやすいように段差を解消したり、点字ブロックを設置したりする方がよい。駅や学校や公共施設にスロープ、エレベーター、エスカレーターなどを設置することでも新しい仕事が生まれる。養護教諭の増員でも新たな雇用が生まれる。環境対策を十分推進することでも新たな技術、産業、雇用、需要が生み出されるだろう。
このように一人一人の人権をきちんと守り、かけがえのない地球環境を大切にしていくという考えの中で、経済効果も派生してくる。まさに、人にやさしい、環境にやさしい政治こそが、21世紀も生き残ることになるのである。


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