「知的障害者と司法について考える」

 一般に基本的人権が侵害された時、その侵害を排除し、個人の尊厳ある生活を

回復する為、法が認めた有効な救済手段が裁判を受ける権利です。

従って、特に人権侵害のおそれの大きい知的障害者にとって裁判を受ける

権利はとても重要となる。

その権利行使にあたって、自らの意思を表明することのうまくない知的障害者

に対して、他の一般の人々と同じように権利行使できるよう、その

コミュニケーションの不備を解決する特別の施策が保証されなければ

かえって不平等となる。

通常の平均的知能を持つ人々でさえ、自ら訴状を作成して裁判所に提出

することは、ほとんど不可能に近い。ましてや、知的障害者が弁護士抜きで

自ら訴訟を起こすことは、大変困難である。

しかも、彼らにとっては、弁護士事務所を訪ねることさえ難しい。

そこで、弁護士との連携をとるための第三者としての世話人がどうしても

社会的に要請されることになる。知的障害者が被告となる場合は、

更に深刻である。

知的障害者の場合、訴状、呼び出し状、催告状の文章を読み、理解することが

できないこともあるだろう。そのまま、欠席裁判を下されてしまうかもしれない。

このようにいずれの場合も、本人の障害により自己決定が不十分である場合、

この能力を補う司法制度や社会福祉機関の連携が必要となる。

このような世話人や付添い人などが制度化されていない実状の中で、

警察が犯人をつくりあげ、事件を解決しようとする功名心の陰で、今まで

多くの知的障害者が冤罪に巻き込まれてきた。

知的障害者に的を絞って、自白を迫り、その自白に基づいて犯罪が

でっち上げられてしまうのである。

私は、知的障害者に対する逮捕手続き、拘留手続きは、弁護士等の立ち会い

を義務付けるべきだと思う。

立ち会い無しの逮捕拘留は違法とし、供述調書は信用性がなく証拠能力がない

ものとすべきである。

被疑者に知的障害があるために、取調官の質問の意味が理解できないまま

供述したり、取調官の誘導にひきづられて自己の気持ちと異なる供述を

してしまったり、取調官に対する恐怖心から迎合的な供述をすることは

よくあることであろう。取調官と取り調べられる側との対等性が担保される

ためにも、弁護人の立ち会いは、是非必要である。

最後に、知的障害者の人権が大きく損なわれた事件名を列挙しておく。

これらは、インターネットで検索すれば、大抵探せるので、それらを参照して

いただき、その実態を知っていただきたい!!

  • 八丈島老女殺人事件(S.21)

  • 野田事件(S.54)

  • 白河育成園事件

  • 水戸アカス事件

  • 府中おしぼりリース会社事件

  • 滋賀サングループ事件

  • 長崎清和園事件

  • 大阪 茨木学園事件

文明の尺度は、その国での社会的弱者がどのように扱われるかで

測定されるようになりたい。

GDPがいかに大きくても、弱者切捨ての論理がまかり通る世の中は、

野蛮な社会であるとみんなが認めるようでなくてはならない・・・。