<障害者と逸失利益について>
交通事故などで死亡した場合などは、将来得られたであろう収入を
逸失利益として損害の賠償がなされるのが普通である。
ところが、障害者の場合、障害が理由で就職できないことがあり、
収入がなかったり、健常者に比べて低収入であることが多いのが
残念ながら実情である。
このような場合、逸失利益はどのように判断されるべきであろうか・・。
障害者の国連人権宣言においては、「障害者はその人間としての尊厳が
尊重される権利を生まれながらに有する。障害者は、その原因、性質、
程度いかんを問わず、同年齢の市民と同一の基本的人権を有すること」
を確認している。
確かに、現実の社会は障害者が就労する機会は著しく制限され、就労
出来ても、収入が低いことは事実である。
しかしそれは、現実の社会の方が、障害者の権利実現のため、本来
なすべきことを怠っているからである。就労の場は、誰にとっても
人格形成発展の場であり、仕事による収入は、一人の人間として
生きていくための経済的基盤である。
障害者が人間としての尊厳を尊重され、健常者と同一の基本的権利
を保障され、また、障害者の社会への自由な参加を確保するために
就労の場、その他の社会環境において、障害がハンディとならない
施設、設備、手段等をつくし、障害者が健常者と同じような賃金を
得られるように図っていくことが社会的に要請されているのでは
ないだろうか。
このようなバリアフリー、ノーマライゼーション、ユニバーサルデザイン
が整備されていない現状において、健常者と同じ判断基準を用いて
障害者の逸失利益を算定することには、大きな問題が残る。
それくらいやさしい社会をつくることが、求められているのでは
ないだろうか!?