5界説と3つのドメイン栄養様式からDNA分析へ


 
 リンネの2界説
 人類が認識した生物界の最初の識別形質は「動き食べる」と「動かず食べない」という2つの異なる形質であったと考えられます。
 学問的にこのような認識を行ったのは有名なスウェーデンのカルロス・リンネ(Linnaeus 1735)で、彼は生物を分類する最も大きな階級として界(Kingdom)を設立し、生物は動物界(Kingdom Animalia)と植物界(Kingdom Plantae)の2界からなるとしました。
 2界説は理解が容易なだけでなく学問的にも受け入れられ、現在でも多くのひとが2界説の立場で生物を認識しているのではないでしょうか。
 2界説では動物(後生(こうせい)動物のこと、原生(げんせい)動物を含まない)を除くほぼすべてが植物として扱われていました。
 しかし顕微鏡と観察技術の発達や生物の形態や生活の様式についての認識が深まるにつれて、2界という単純な生物観では実際の生物界を十分に説明できない状況が生まれてき たのです。
 その一つに、単細胞生物の多くが動物と植物の性質を合わせ持つなどの事実を説明できないことが上げられます。

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(動かず食べない) > 藻類菌類細菌

植物界
Plantae

(動き食べる) >   動物界
Animalia
 
 ホイタッカーの5界説
 現在広く受け入れられている5界説を最初に提唱したのはロバート・ホイタッカーWhittakerで、1969年の論文によって知られることとなりました。
 新たな視点としては、真核(しんかく)生物の分類規準として栄養摂取の様式に着目したことで す。
 彼は生物のエネルギー獲得には光合成、捕食そして吸収の3つの様式があり、これらが植物(生産者)、動物(消費者)、菌類(分解者)という高度な体制をもつ真核生物の生物群に対応していることに注目して分類システムを構築し ました。
 これは「進化では栄養様式の違いが生物群のもつ特徴を決定してきた」との立場に立っているからなのせす。
 そして分解者である菌類(きんるい)を植物界から独立させて菌界(Kingdom Fungi)としました。
 つまりホイタッカーWhittakerの5界説は、体制進化という軸と栄養様式の進化という軸を2つの軸を採用したシステムということができるでしょう。
 植物界には緑色植物だけでなく、紅藻(こうそう)褐藻(かっそう)などの光合成生物が含まれ、また菌類 (きんるい)には変形菌、細胞性粘菌(ねんきん)あるいはラビリンチュラ類などの吸収栄養を行う生物群も含まれています。
 現在ではこれらの多くは植物や菌類とは異なる系統に分類されていますが、理解が容易であることから、現在のわれわれの生物観はほぼホイタッカーWhittakerの5界説に沿ったものであると言 ってもよいでしょう。
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植物界
Plantae

モネラ界Monera

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原生生物界
Protoctista

╋━ (吸 収) > 菌 界
Fungi
      ┗━ (補 食) > 動物界
Animalia

 3つのドメイン(Domain/Superkingdom)
 近年になり古細菌(こさいきん)と呼ばれる生物が発見されました。
 単細胞生物で、しかも原核生物(げんせいどうぶつ)であり、界のレベルではこれまでに知られているバクテリアとは明らかに異なる仲間です。
 生息している場所が海底の熱水噴出孔や、イオウの充満した温泉など、とても生物が住めるとは考えられない環境から発見されています。
 エネルギー源もメタンやイオウなどを酸化あるいは還元して、その際に生じるエネルギーで生活しているのです。
 単細胞で原核(げんかく)生物とはいうものの、リボゾームRNAなどから系統関係を解析した結果、バクテリア(=細菌界)と真核生物の間に位置していること、それもどちらかというと真核生物に近いことが分かっ っています。
 そこで、「生物はバクテリア、古細菌、真核生物にまず分けられる」という意見が支配的になりました。
 こうして、古細菌の発見とDNAなどの系統解析により、界より上の分類段階として「ドメイン」というものが発案されました。
 従来一番大きな分類基準のひとつが原核生物真核生物か、ということで したが、古細菌が「原核生物であるもののバクテリアより真核生物に近い」ということから、界に分割する以前に真核生物全体をひとかたまりとして扱うのが妥当といえ るでしょう。
 また、従来からの「バクテリア」も同様で、分岐も一番早いのだから当然これも独立したドメインということになり、第3のドメイン(Domain)である古細菌 (こさいきん)が誕生したのです。

ホイタッカー (1969) Woese (1977) Woese (1990)
5界説 6界説 3つのドメイン
モネラ界
Monera
原核生物Procaryote
(ほかはすべて真核生物)
細菌界
Bacteria
(真正)細菌
(バクテリア (Bacteria)
古細菌界
Archaebacteria
古細菌
(アーキアArchaea)
原生生物界(プロチスタ界)Protoctista 原核生物でなく、動物、植物、菌でもない例外集 原生生物界
Protoctista
真核生物
(ユーカリアEucarya)
菌界
Fungi
有機物の分解還元者 カビ、キノコなど胞子を出すもの 菌(物)界
Fungi
植物界
Plantae
光合成による有機物の生産者 多細胞、有性生殖、葉緑体 植物界
Plantae
動物界
Animalia
有機物の消費利用者 人間を含む、多細胞、有性生殖 動物界
Animalia

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