料理の万能選手・日本酒の役割

芳香な香り、深い味わいやコク・・・・・日本酒は飲んでおいしいだけでなく、旨味を加えて風味をよくする、素材の臭みを消して味わいを良くするなど、その特性を生かして調味料としても幅広く使われています。煮物は勿論、焼き物なら酒焼き、蒸し物には酒蒸しといった具合に、あらゆる料理に欠かせない存在。プロの料理人は調味料としての日本酒魅力を熟知していて、実は隠し味として日本酒をたっぷり使っていると言われています。家庭でも、その良さを知って上手に使えば、いつもお惣菜に深みや奥行きが加わって,料亭顔負けの一流の味に変身します。

日本酒はどんな調味料ともあわせて使える最高の味つけ役
日本酒の味や香りは熟成によってもたらされたものです。普通、半年から1年程で熟成しますが,これによって刺激臭が消え,味に丸みと厚みが出るのです。
熟成中に日本酒中に生成される成分は約200種類といわれています。主な成分である水,アルコール,グルコースを除くとコク実をつけるペプチドやグリセリン、酸味のコハク酸や乳酸、旨味のグルタミン酸を中心とするアミノ酸類などいずれもごく微量の成分ですが、これらが日本酒の味,香り,色を構成しています。
調味料としての日本酒は,これら旨味や香りの成分をバランスよく含んでいることから,オールマイテーといってもいいほど幅広い用途を持つ,いわば”調味料の王様”といえるものです。白身魚の蒸し物のように淡白な素材を料理するとき、味噌や醤油のような強く主張する調味料ではなく,旨味料としての日本酒が使われるのは自然なことなのです。多量の塩や砂糖を使えない料理はあっても,日本酒が使えない料理はほとんど無いといってもいいほどです。ワインが西洋料理にしか使えないのに対し、日本酒は日本料理に限定されることはなく、中国料理にも洋風料理にも使える懐の深さがあります。
旨味を加えて風味をよくする名演出家
調味料としての日本酒の最大の特徴は、素材を活かしながら旨味をプラスするところにあります。魚の加熱に日本酒を使うのも、魚や肉の臭みを抜くとともに、日本酒の旨味成分を素材に染み込ませると言う目的があるからです。
和え物や酢の物など、アルコールは邪魔だけど酒の風味を生かしたいという場合、日本酒を鍋などに入れて火にかけ、アルコール分を飛ばしてから用いる「煮切り酒」という手法もあります。こうすることで,特に酢の物の酸味をやわらげ、素材の味を生かすことが出来るのです。是非試していただきたいのが、スーパーやコンビニのできあいのお惣菜。レンジで加熱するとき,日本酒をちょこっと振りかけると、風味が増して,本格的な味に変わります。
材料の臭みを消し、軟らかくする優れたテクニシャン
日本酒に含まれるアルコールには、魚の生臭みの成分であるトリチメチルアミンを蒸発させる働きがあります。そのため、魚を蒸す,照り焼きにする,潮汁など吸い物にするなどの場合,魚の生臭みを日本酒が取り除いてくれるので、旨味が一層引き立つのです。
また、煮ているとき,日本酒は醤油や味噌といった他の調味料と一体化して、文字通り「香味一体」の関係が生まれるのです。
さらに、アルコールは肉や魚などの組織を軟化し、一方ではたんぱく質の変性を促進して熱凝固を早めるため、軟らかく,しかも歯ごたえのいい食感が生まれます。魚の蒸し物をするときに日本酒を加えると、魚の表面が乾かないようにするとともに、水気を与えて火の通りを良くする効果があります。しかも酒の風味がプラスされてよりおいしく蒸しあがります。
一緒に使う他の調味料の効果を最大限に引き出す働きも
日本酒には、同時に使う調味料の調味効果を最大限に発揮するという働きもあります。これはアルコールの作用によって,他の調味料が肉や魚の身の中に浸透しやすくなるためです。
たとえば魚を煮るとき、日本酒と塩を合わせた汁で煮れば、魚を日本酒だけで煮る、或いは振り塩をして水で煮る場合と比べると、魚の身の中に染み込む塩の含有量ははるかに多くなるため、少量の塩で,しかも旨味が加わったおいしい煮魚が出来上がるというわけです。