打ち上げ花火の名前と見方(2)
打ち上げ花火は、玉が発射されて上昇し、最高
の所で割薬に点火して炸裂するのが一番美しい。
上昇中に開げば星は全部上を向いて飛ぴ、下降に
入ると星は下を向いて飛んで”おちょぼ傘”にな
ってしまう。
親導(玉を開かせるための導火線)の寸法が大
切である。この上昇と下降の境を「玉の坐(すわ)
り」という。玉が上昇して炸裂すると星に火がつ
き、一斉に四方八方に飛び散るが、これを「割口
(わりくち)」といっている。星一つ一つが均一
で丹念に詰められていないと、真球形のきれいな
割口にならない。
花火は下から見るが、横からも見る。どこから
見ても真ん丸に見える。この開いた形のことを花
火の「盆(ぼん)」という。玉皮と割薬の強さが
合っていないと均整のとれた盆にはならない。
玉の坐り、割口、盆は三位一体のものである。
飛ぶはずの星が飛ばない「抜け星」、一つ二つの
星がふらふらと「泳ぐ」ようでは、完全な盆が開
いたとは言えない。
「星」には何色かの色火剤が重ねてあるから何
百と飛び散る星(花弁)が同時に光り、同時に色
を変化させ、一時に火の粉一つ残さずに消えるよ
うに、花火師は細心の注意を傾けてつくる。「変
化」と「消え口」によって、強烈な印象と余韻を
残す。
花火の魅力は、色と形と音にある。花火師は自
分の持つ技術をフルに活用して、新しい試みに情
熱を注いでいるのである。
木の末に遠く花火の開きけり
正岡子規
−おわり−
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玉に星を詰めた状態。
星が等間隔に詰めてある
(リング状の割物)
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