NOVEL

ライオンさんと私

 

 あたしには素敵な彼がいた。

 彼は、「おまえの言うことなら何でもする」って言ってくれた。

 なのに…。

 

 ある日、二人でサファリパークに行った。
 広い公園にいろんな動物が放し飼いにされていて、そこを車で走る。
 しまうまも象もいた。チーターもいたし、名前も知らないような動物も
いっぱいいたけど…あたしがずっと見たかった動物がいた。

 ライオン。百獣の王。立派なたてがみの雄。かわいい子供。

 あたしは彼に言った。
「車を止めて!ライオンさんと遊ぶの〜(はぁと)」
 でも、彼は車を止めようとしない。
「止めてってば。」
「おい…何いってんだ?」
「…何でも言う通りにしてくれるんじゃなかったの?」
「だって、お前…子連れの肉食獣だよ?食われちまうよ」
「嘘!ライオンさんはかわいいもん。食べたりしないもん!」
「…。いや、おまえをここで降ろすわけにはいかない」

 

 裏切り。

 あまりに突然な彼の裏切りでした。

 サファリパークの出口で別れました。

 家に帰って泣きました。

 涙が枯れた時…あたしはハンダゴテを手にしていました。

 

 そして今、あたしはまたあのサファリパークに来ています。
 新しい彼と(はぁと)

 今度の彼は、あたしが作ったロボ彼。本当に何でもいう通りに
してくれて、決して裏切らない素敵な彼(はぁと)

「車を止めて!ライオンさんと遊ぶの〜(はぁと)」
「ウン トメルヨ ライオント アソンデキテ」

 あたしは助手席のドアを開け、ライオンさんの元に走っていき
ました。

 

戻る