捨てられた少女

〜解明篇〜

 立倉マンションのオーナー、立倉一志が「それ」を発見したのは今月の第二木曜の朝だった。

 立倉マンションのゴミ集積所、山積みになったゴミの一番上に…7〜8歳くらいの少女の遺体が遺棄されていたのだ。
 彼は、その少女が7階の住人、田中さんの娘である事を知っていた。

 彼はどうしたか?

 すぐさま遺体を抱き上げ、マンションの非常用螺旋階段を一気に7階まで駆け昇る。7階廊下を突き当たりまで駆け抜け、そこにある田中さんの部屋の戸を勢いよく開けた!


 中には…泣き喚きながら夫をなじり続ける奥さんと、血まみれの両手を見つめたまま茫然としている田中さんの姿があった。


「どうして、どうしてなんですか、田中さん!!」

 立倉は田中さんにつめよった。

「どうして!どうしてこんな可愛い女のコを…どうして…」


 バシッ!
 奥さんの平手打ちが立倉の右頬にヒットした。

「あんたッ!私というものが有りながら他の女を…」

 立倉は錯乱している奥さんをげんなりとした表情でみつめた。
…7〜8歳の少女の遺体を抱きかかえていたからといって、どうして「浮気者」と泣き喚きながらなじられなければならないのか?

「おまえの話は後で聞くから、ちょっとここを出ていなさい。…大体どうしておまえがここにいるんだ。」

と言いながら立倉は、まだ何か言おうとする自分の奥さんをドアの外に押し出し、中から鍵をかけた。

「田中さん…全部話していただけますか?」
「あたし…」

 田中さんはようやく血まみれの両手から目を離し、口を開いた。

「あたし…どうしていいか分からなかったの…。パパも、ママも、帰ってこなくなって…もう一ヶ月になるし…あたし一人で瑠璃子の面倒みるなんてとても出来ないし…。」
「君はもう17だ。学校をやめて働くとか、他にも方法はあったんじゃないのか?大変なのは分かるけど…だからって、可愛い妹を殺して捨てていいと思ってるのか!?」
「…じゃ、その妹の体に悪戯するのはいいの?」
「…!?」

 田中さんは女子高生とは思えない恐ろしい目つきで立倉を睨んだ!

「知ってるのよ!立倉さん、あなた、二週間くらい前から瑠璃子の体に悪戯してたでしょう!!あのコはまだそれがどういう事か分かって無かったから、全部あたしに話してくれたわ。楽しそうにね!その時のあたしの気持ちがあなたに分かるっていうの!?」


 立倉は…自分が全てを失った事を悟った…。
 妻との生活も、地位も名誉も、それから愛する瑠璃子も…。



 マンションの外では…穏やかな日差しと、気持ちのいい風が、公園に群れる幸せな人達を包んでいた。

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