魔女っ子マキちゃん 第0話

 

 私はオマセな小学生、マキちゃん。

 昨日、学校の池で溺れていた鯉を助けたせいか、ヘンな夢をみちゃった。
 イカれたカッコした男が出て来て、言ったの。

「私は魔界の王子、ヘケヘケ・マカール3世。人間界を視察中、池にはまって危うい所をあなたに助けられた。御礼にこの魔法のスティックを授けよう!『ヘケマカヘケマキ』と呪文を唱え、願い事を言いながら振れば何でもかなうスティックだ。あなたなら正しい事に使ってくれると信じている。」

で、目覚めたら枕もとにこの棒があったってワケ。




 変な夢のせいで寝坊しちゃったもんだから遅刻しちゃった。
 大急ぎで廊下を走ったんだけど、一年生の教室の前で立ち止まった。
…教卓にムカツク先公がいる。
 アイツ、新任のクセにこないだ私が廊下でツバ吐いただけで説教タレやがった。
 一年生の担任だったのか。
 あんなヤツに教えられるなんて、可哀想な後輩たち…。
 よし、おネェさまが助けてあげる!!

「ヘケマカヘケマキ!先公は死んじゃえ〜っ!!」

 突然、先公は血を吐いて教卓の上に突っ伏した。
…ホントに魔法のスティックだったんだぁ。くすッ。




 休み時間になるのを待って、教室に入る。
 オトモダチの啓子がなれなれしく話しかけてくる。

「ねぇねぇ、マキちゃん。あたしね、ケッシンしたの。」
「え?何を??」
「真吾にね、…思い切って告白しよう、って。」
「へぇ、とうとうやるんだ。ガンバってね。」

 啓子は真吾の方に走り寄っていった。
…あのバカ、今ココで言うツモリかよ。私だって真吾のコト…。
 私は、まわりに聞こえないよう小さな声でスティックにささやいた。

「ヘケマカヘケマキ、啓子はウンコたれ〜。」

 ぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりびちびちぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりッ!

 その音は教室中に響き渡り、あたりは異臭につつまれた。
…茶色い足跡を残し、泣きながら走り去る啓子。
 自分で汚した跡ぐらい自分で始末しろよな。あはは。




 そ〜だ。イイ事考えた。
 隣のクラスに天馬玲子ってヤなヤツがいて、なにかってゆーと私に喧嘩ふっかけてくるんだけど、ウチのクラスの男でバカ山ってのがそいつに惚れてるのね。
 玲子は嫌ってるみたいだけど…ウフフッ。

「ちょっと、バカ山ぁ。」
「誰がバカだ!俺は香山だ!!」
「どーでもいーからちょっと来なさいよ。イイ事教えてあげるから。」

 もう言われなれてるから、本気で怒った様子もなく、ノコノコやってきた。
 私はバカ山の耳元に囁いた。

「あのね…あんたの好きな天馬玲子がね…あんたとヤリたいんだって。」
「え?やりたいって…何を?」
「セックスに決まってるじゃん。それもね、突然無理矢理にヤラれるのがいいんだって。」
「そ、そ、そんな…嘘だろ、れ、玲子さんが…。」
「ホ・ン・ト。なんなら今から行って押し倒してきたら?」
「そ、そんな嘘、真に受けるほど俺はバカじゃねぇよ。」

 すっかり興奮して、ズボンの上からでも分かるぐらいボッキしてるクセに、どうもバカ山は動きそうにない。しゃーない、やっぱ魔法使わなきゃダメか。

「ヘケマカヘケマキ!バカ山は理性を捨てなさ〜い!」

 がばっ!
 突然、バカ山が私を机の上に押し倒した!

「ちょ、ちょっと!私じゃない!あんたの狙いは玲子でしょーッ!!」

 バカ山は聞いちゃいない。野獣のようにギラついた目で、私のブラウスのボタンを一つ一つ引きちぎっていく。私はなんとかスティックを握り直し呪文を唱えた。

「ヘケマカヘケマキ!バカ山は玲子だけを襲いなさい!!」

 野獣のように雄叫びをあげながら、バカ山は教室を飛び出して行った。
 あー、びっくりした。まだ心臓がドキドキしてる。
 もし、あのまま襲われてたらどうなってたんだろう?
…それはそれで、悪く無かったかも。なーんて。

「ぎゃあああああああああっ!!」

 隣の教室から、女の悲鳴が聞こえた。多分、玲子だろう。
 良かったね、玲子。おめでとう。
 私は今日、多分生まれて初めて、他人の幸せを心から祝福する事が出来た。




 4時間目が始まっても、私はずっと考え事をしていた。
 午後の授業は突然中止になり、私達は帰らされた。
 考え事してたもんだから、何故授業がツブれたのか聞きそびれたので、隣の席の男に聞いたら、「バカがずっとボケーッとしてるからだ、タコ。」とナメた口をききやがったから、そいつは帰り道できっちりタコにしてやった。
(と言っても、別に殴ったり蹴ったりしたワケではもちろん、無い。)

 私が考えていたのは、どうやって真吾をおとすか、という事だった。
 最初は魔法を使えばカンタ〜ンと思ってたけど、さっきのバカ山の事もあるし、事はそう容易では無いのかも知れない。
 バカ山は間違いなく玲子一筋だったハズだ。それが理性を失って私を押し倒したところを見ると…もしかすると、男って生き物は、実は女なら誰だっていいのかも知れない。真吾を狙ってる女はいっぱいいそーだし(一人は完全に脱落したケド)ここはじっくり考えないと…。




 その夜。私の寝室にまた昨日のイカレ王子が現れた。なんか怒ってるみたい。

「お、お前というヤツは…。」
「あ、昨日はありがとねー。おかげで今日、すっげー楽しかった。」
「お前のような者にスティックを持つ資格は無い!返して貰うぞ!!」
「…!?。イヤよ!あんたくれるって言ったじゃん!!」

 王子は無理矢理襲いかかってきた。ヤレヤレ。

「ヘケマカヘケマキ!王子は消えちゃえ〜!!」

…馬鹿な奴。

 さ、これで邪魔者はいなくなったし、寝るとしますか。
…それにしても、就寝中のレディの部屋にフホーシンニューするなんて、とんだ変態王子…。あ!そーだ!!

「ヘケマカヘケマキ!真吾クン今すぐここに来て!!」

 目の前に突然真吾が現れた。パンツいっちょで。きゃっ(^^*。
(なんて言ってる私はスッパダカで寝てるんだケド。)

「え?アレ!?ここは…??」
「…嬉しい。真吾クンが私の部屋に来てくれるなんて!」
「マキ??い、いや、俺は…その…」
「いいの。私…真吾クンなら…来て…」

 そう言って布団を広げ、ベッドに誘うケド、真吾は動かない。
ったく、真吾といいバカ山といい、男ってヤツは…。
 ま、そんなウブなトコもカワイイんだけど、今夜は、今夜だけは…。

「ヘケマカヘケマキ!真吾クンも私も、ドスケベになれ〜!!」




 その後、どうなったかはヒ・ミ・ツ。

 いつか、あなたも魔法を使えるようになったら、自分のシアワセの為だけに使ってネ!それじゃ、バイバ〜イ!!

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