漫画文庫傑作選 −少年漫画編−
最近、昔の作品を復刻した漫画文庫を買い集めるのに凝っています。(というか、年のせいか億劫になって最近の作品に手を出せなくなった……)その中でもお気に入りの四編を選び出し、ここに紹介したいと思う。
伊賀の影丸 |
横山光輝・秋田文庫・1〜11巻 |
忍者漫画の古典的名作。主人公・影丸は幕府御用のお庭番。少年ながら伊賀忍者中最強との誉れも高い。彼は仲間達とともに、日々幕府転覆を企む悪党どもと死闘を繰り広げる……
この漫画のキーマンは主人公の影丸などではなく、誰が何と言おうと敵役の不死身の邪鬼である。彼は文庫版二巻、若葉城の巻で初登場する。甲賀忍者の首領で、将軍暗殺を企む若葉家に仕えて影丸たちと刃を交えるという役所である。この邪鬼、「不死身の」と付くことでわかるように、200年もの間生きているということになっている。何百年たっても老いることなく、敵にバッサリと刀で斬られても2、3時間も待てば自然に傷が回復していくという、まさに不死身の体を持っているのである。
面白いことに、横山氏はわざわざ邪鬼が不死身である理由というのを作中で解説しており、それがまた振るっているのだ。曰く、甲賀の里の忍びはみな、生まれながらに動物の能力を受け継いでいる。ある者はカメレオンのように、皮膚の色を土や草むらと同じ色に変えることができる。またある者は魚のように、長時間水中に潜っていられる、といった具合である。では邪鬼はどの動物の能力を持って生まれてきたのか?答えはトカゲである。つまりトカゲがしっぽを切られてもまた生えてくるように、彼も敵にやられてもすぐに回復する能力を持っているのである!
横山氏は荒唐無稽なものを荒唐無稽のままにしておくのが嫌いのようで、妖術だの超能力だのに、すぐこういう科学的な(に見える)解説をつけようとする悪癖がある。(この悪癖は『三国志』とか、最新作の『殷周伝説』でも遺憾なく発揮されている。)
この不死身の邪鬼、影丸に将軍暗殺の陰謀を阻まれた後も、チョコチョコと登場しては彼の邪魔をする。大体は反幕府側の忍者の助っ人となるのだが、あくまで一匹狼として彼らに完全に心を許すわけでもなく、また影丸に完全に敵対するわけでもない。いや、時には影丸を助けることさえある。まあ要するに、邪鬼は『ドラゴンボール』のピッコロやベジータ、『聖闘士星矢』の一輝、『幽遊白書』の飛影らのご先祖にあたるわけである。
邪鬼は巻によって出てきたり出てこなかったりするわけだが、読み進めていくうちに彼が出てこない巻は、どうも物足りなさを感じてくるようになってくる。しかしながら八巻「邪鬼秘帳」以降、彼は物語中に登場していない。十二巻以後、また以前のように不死身の邪鬼が登場して、物語を引っかき回してくれることを期待している。
以後、『リングにかけろ』・『風魔の小次郎』・『花の慶次』の紹介を順次アップしていく予定です。しばらくお待ち下さいm(_ _)m