謎の図象記号
− 君はトリケラトプスを見たか!? −
古代の青銅器に鋳込まれた銘文を金文と呼ぶが、その金文の中には図象記号(族標識などと呼ぶ学者もいる)と呼ばれる、一種の絵文字も含まれる。この図象記号、殷代の金文に多く見られ、青銅器の持ち主の職掌を表したのであろう、とか、或いは部族の紋章やトーテムを表したものであると言われている。
しかしその中には、現代の我々の目からはとても部族の紋章やトーテムとは思えないような、まるで冗談で描いたようにしか見えない奇怪な図柄も存在する。そういった図象記号を高明 編『古文字類編』(1980年・中華書局)から以下に抜粋してみた。(同様の図柄は、容庚『金文編』でも御覧になれます。)
御存知トリケラトプス。 |
クリクリお目目に |
恐怖! |
見よ!太古の |
そーら、 |
まるで子供の落書きの |
アッと驚く |
UFO降臨! |
危うし! |
図像の下に書いてある文字は、その図像の拓本を収録している書名(但し略称で記してある)と、青銅器の名前であります。例えば上の「落書きのような牛」の場合、『三代吉金文存』の第二巻第二葉に収録されており、「牛鼎」という器名であるということになる。書名の略称と正式名称の対応は以下の通り。
「続殷附」→王辰『続殷文存』
「三代」→羅振玉『三代吉金文存』
「録遺」→于省吾『商周金文録遺』
「美銅器集録」→『美帝国主義刧掠的我国殷周銅器集録』