blueball.gif (1613 バイト)  はじめに  blueball.gif (1613 バイト)


唐代伝奇とは、唐の時代に文人によって書かれた短編小説の総称である。仙人や妖怪など怪異な物が出てくる話が多いので、「伝奇」と呼ぶわけである。唐の前の六朝時代にもこのような短編の怪異譚は多く書かれていたのだが、これらはほとんど「史実」、つまりノンフィクションであると考えられていた。

ところが唐代になると、文人たちはフィクションとして続々と怪異譚を創作するようになった。その作者の中には、牛僧孺のように有名な政治家も含まれている。彼らは『三国志演義』や『水滸伝』等の明清の小説とは違って、文語文(いわゆる漢文)で物語を著した。それらの物語は唐から宋代にかけて多く作られ、『玄怪録』・『続玄怪録』・『宣室志』・『太平広記』・『夷堅志』といった物語集にまとめて収録された。

これらの物語は小説の祖として、後代の物語創作に大きな影響を与えた。例えば京劇の「白蛇伝」のもとになった話が既に存在するし、「聶隠娘」・「崑崙奴」なんかは後の武侠小説の源流の一つになった。『東遊記』や『隋唐演義』といった長編小説に直接取り入れられたものも多いし(本ダイジェスト未収録の「王積薪」・「枕中記」等)、「李娃伝」のように後に中国ばかりか日本で翻案化された物も多い。ちなみに「杜子春」は芥川龍之介の同名の小説の元ネタであり、今回未収録の「李徴」は中島敦の『山月記』の元ネタである。

また「定婚店」・「葉限」のようにどこかで聞いたような話も含まれているが、そういうおなじみのおとぎ話の元ネタが唐代に作られていたという事も含めて、リストに挙げてある八編の物語をご賞味いただきたいと思っている。


blueball.gif (1613 バイト)  各話リスト  blueball.gif (1613 バイト)


今回のダイジェストでは以下の八編を掲載することにした。一応話のバラエティを考えて選抜しようと考えていたが、結局は個人的な好みで選んでしまった(^_^;)
「何であの話が入ってないのだ!?」と不満を抱いた方もおられましょうが、平にご容赦願います。

1.補江総白猿伝

梁の将軍・欧陽kotsu.gif (126 バイト)(おうようこつ)は南方遠征に赴いたときに、妻を白猿神にさらわれてしまう。彼は妻を取り戻そうと、兵を率いて白猿神の住まう山洞に忍び込む……

2.杜子春

杜子春は若い頃から正業にも就かず遊び暮らしていたが、財産が尽きて衣食に困るようになった。そんな折り、彼の前に不思議な老人が現れて、杜子春に大金を与えた。しかし彼はその金をも使い切ってしまう。しまいに老人は杜子春に、仙人になるべく試練を受けさせようとする……

3.李娃伝

名門・鄭氏の若様は眉目秀麗で詩文を善くし、科挙を受験するために都に旅立つこととなった。しかし彼は遊女の李娃(りあ)に夢中になって学問をおろそかにし、身を持ち崩してしまった。李娃はそれに責任を感じ、若者に再び学問をさせようとする……

4.崑崙奴

朝廷の高官である崔氏の屋敷には、不思議な力を持つ崑崙人の奴隷・磨勒が奉公を勤めていた。ある日、崔家の若様は他の高官に仕える妓女に一目惚れし、何とかもう一度彼女に会いたいと言い出した。磨勒は主人の願いを叶えるべく力を貸す……

5.定婚店

いわゆる「運命の赤い糸」の物語。主人公の韋固はある老人から、貧しい家の醜い娘子が将来の自分の結婚相手だと聞かされて腹を立てる。何とかその娘子を殺して自らの運命を変ようと企む……

6.南柯太守伝

侠士の淳于fun.gif (118 バイト)(じゅんうふん)はある日酒を飲んでいて夢うつつとなった。その時、目の前に突然「槐安国王の使者」と名乗る人物が現れて、彼を別世界へと連れ去って行った。彼は国王に会見し、気に入られて王女を授けられた上に南柯の太守に任命された……

7.葉限

中華版シンデレラとして有名な物語。秦・漢の頃、南方の異民族の長である呉洞には葉限(しょうげん)という娘がいた。しかし呉洞の死後、彼女は日々継母にいじめられる……

8.聶隠娘

聶隠娘(じょういんじょう)は節度使の娘であったが、幼い頃尼僧にさらわれて武術や妖術を仕込まれた。一流の暗殺者となった彼女は下界に戻り、劉昌裔という節度使の配下となる。聶隠娘は劉の命を狙う暗殺者・精精児と空空児を相手に妖術合戦を繰り広げる……


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