<原作とアニメ作品の違い>

   26年前に『ルパン三世』をテレビ化したいという話がきて、
   編集者とぼくと制作会社の人、3人でテレビ局に行きました。
   会議室でテレビ局の偉い人に聞かれて、当時35〜36歳のぼ
   くは「冗談じゃない。悪いですけど、こんなの絶対にアニメ
   ーションになりっこない。」と言ってしまったんです。ツッ
   パってたわけじゃないんだけど…。制作会社の人があわてて
   中に入って違う方向に話をもっていきましたが、それ以来、
   局で会議があるときは一切ぼくが呼ばれなくなりました。

   いろいろあって、大阪の読売テレビで放映がはじまったんで
   すが(1971年)、視聴率は1%台とひどい状態で、だんだん
   悪くなってきて0.8%。局の人が怒って、演出家は降ろされ
   てしまいました。その後、宮崎駿さんが演出を担当し年齢層
   を下げるようにしたけど、うまくいきません。(第1回目の
   シリーズの)最後は2.8%で終りました。
   その後、再放送されたり、2回目のシリーズがスタートした
   りで、だんだんルパンのよさがわかってきたのか、視聴率も
   よくなってきました。以前放映していた7時台では、大人も
   子供も中途半端な時間帯だったのかもしれません。わかって
   もらえるのに2〜3年、いや4〜5年かかりました。北海道か
   らヒットの兆しがみえてきて、それから南下したそうです。
   その後も、スペシャルや映画とかいろいろあって、みなさん
   に支持されてきたわけですね。

   ぼくが原作を描いていた漫画アクションは、女性の人がほと
   んど読まないので、女性にやさしいルパンではストーリーと
   して盛り上がりません。だからぼくのルパンは、クールで危
   険を感じさせる人物に設定しました。
   先月(1998年9月)、宮崎駿さんがこの大学に来てたと先
   ほど聞きましたが、宮崎さんの描くルパンはどっちかという
   と、かなり女性にやさしい。テレビで放映されたシリーズの
   アニメーションの場合は、年齢の低い人が見るので、それを
   考えながら描いたと思われます。

   「五右ェ門の斬鉄剣はなぜこんにゃくが斬れないのですか?」
   とか聞かれると、ぼくはキョトンとしてしまいます。テレビ
   のアニメは見てないですし、アニメはぼくの設定とは変わっ
   てます。
   原作でルパンの持っている拳銃はワルサーではなくて、ワル
   サーらしきものという形で描きました。なぜかというと、拳
   銃をワルサーに決めると必ずワルサーを描かなけりゃいけな
   い。向きが変ったりすると、ちゃんとそういう風に描かなけ
   ればいけなくて、アシスタントとかがしんどいでしょ。
   エンディングのテーマ曲でも「ワルサーP-38〜」と歌われ
   ますが、作詞家がそうしたんでしょ。

   アニメではルパンの乗る車はフィアットです。でも、原作で
   はまちまちです。テレビ用のアニメをつくる時に、アニメー
   ターが描けないということなので、それなら駐車場に行って
   見てこいとなったのです。アニメの作画監督の大塚さんが乗
   っていた車がフィアットだったので、近くにあったものがア
   ニメの素材となったようです。ぼくはディティールを一切決
   めない姿勢です。

   週刊誌のマンガでは、赤と黒のせいぜい2色しか使えないの
   で、ぼくの原作ではルパンのジャケットは赤です。ところが
   宮崎さんのルパンは緑のジャケット。当時テレビでは、赤だ
   とぼやっとしてしまい赤の発色が悪かったので、青とか緑の
   ジャケットに変えたわけですね。その時その時の状況で決ま
   ったり、必要に迫られてやってることが多いんです。