第25回欠陥住宅を正す会定時総会のご報告
   かねてご案内を差し上げましたように、本年5月18日(日)午後1時より、東京品川の国民生活センターホールで当会第25回定時総会が開催されました。また、大阪においてはそれに先行して、ほぼ同内容の議案についてあらかじめ大阪事務局会員の意見を集約する大阪事務局拡大幹事会を5月10日(日)に大阪中之島の中央公会堂で行いました。これらの具体的な議事については、既にお送りしたスケジュール記載のとおりです。
 
1.定時総会 | 2.発会25年記念シンポジウム | 3.懇親会
  1.定時総会
 総会は、プログラムのとおり、総会議事事項を午後1時から2時まで行いました。開会のあいさつを兼ねて、東京事務局長河合敏男会員から本総会の会則上の根拠と議長の選出方法について説明された後、会則27条に基づき、代表幹事の指名によって東京事務局の河合敏男会員と大阪事務局の中井洋恵会員が議長に選任されました。

 次いで、会則28条に基づいて総会成立の確認を議長団が行いました。会則の規定では、当会は大衆団体で、ご自分の紛争が終わられた会員は総会から遠ざかられる傾向があり、しかも現在も継続して会員の意思を有するか否かの確認も煩雑を極めますので、あらかじめ定足数を定めることをせず、総会として議事審議するのに相当程度の出席があるか、または代理委任状の提出があるかについて、当日の出席者の意向を確認して決めるというシステムがとられているのです。そこで、当日の出席者46名、委任状によるもの134名、合計180名として議長団が議場に諮ったところ、本日の出席者で相当と認める旨の拍手による確認が行われました。

 次いで、会則24条による前年度活動報告が行われました。まず、澤田和也代表幹事が一般報告をいたしました。特に今年は当会発会25年目に当たる折節の年でありますので、前年度の一般報告だけではなく、25年間の集約的な報告がなされました。その詳細は、別紙「第25回欠陥住宅を正す会定時会員総会及び大阪事務局拡大幹事会での年次報告」記載のとおりです。

 その骨子は、当会が25年間例会活動を続けてきたのは、会則の原則である当会自体が他団体の制約を受けず、「ためにする運動」をしないということ、住宅が個性ある土地の上に個別性の高い消費者の要求によってつくられているという住宅そのものの個別契約性の高さに着目し、単なる集団的交渉活動だけで問題解決を図らず、むしろ個別紛争の解決を通じて共通事項に還元されるべき判例を獲得し、法改正に結びつけるという運動展開が成功したこと、欠陥住宅紛争に対する理論的認識及びその解決方法についての技術的な問題や欠陥判断の基準等の解決理論、特に建物の欠陥を雨漏りや傾きといった建物の欠陥現象、または不具合事象だけでしかとらえることができなかった当時の法律家等に対して、たとえ同じ欠陥現象を呈していてもさまざまな欠陥原因があり、その欠陥原因を正しく究明し個別住宅ごとに相当補修方法を割り出さない限り個別紛争の解決はあり得ず、業者のごまかし補修に対抗できないという認識のもとに、心ある建築士や弁護士を集めて理論武装化を図ったこと、また例会での相談はボランティアで行い、具体的な調査鑑定、裁判等は個別性が高く専門家でも多大の時間を要することから、その費用は個別紛争ごとに依頼者である消費者が負担するという、例会でのボランティア性と専門家に対する個別依頼の有償性を両立させる方法を選択したことなどが成功の要因であったことが述べました。つまり、消費者が自力解決を図るというのが当会の原則であり、具体的な処理に当たって専門家の知見や補助を求めるために費用を負担するというのも自力解決の一端であるという認識であります。

 また、大阪では月2回、東京では月1回の例会における個別相談会がこの25年間休みなく行われたことがまさしく継続は力となってあらわれ、社会各層に対する信用に結びつき、当会が欠陥住宅を正す消費者運動の中核としての地位を獲得することができた大きな原動力となっていることも述べました。

 さらに、当初より当会は欠陥住宅被害者が集まってつくった団体であって、会員間に欠陥住宅解決運動を新築契約受注の商業(営業)目的のために利用する傾向には反発する空気が強いため、当会はあくまでも欠陥住宅のない快適な住まいづくりをするための相談には応じるが、施工活動や業者の紹介は行わないということが原則として守られたことも、今日の状況を築くにあずかって力があったことも述べました。

 当会の25年にわたる目覚ましい活動成果として、取り壊し建てかえ損を民法634条にいう損害賠償の対象として認めるという昨年の最高裁判所の判決にもあらわれていること、発会以来の当会の目標として、住宅建築の一回性と取り壊し建てかえ要求の問題、及び住宅の欠陥を財物としての住宅の欠陥としてだけではなく、住宅に住まう家族や家庭の平和の侵害ととらえ、取り壊し建てかえるほかないような重大な欠陥の場合には必ず取り壊し建てかえ相当損とともに慰謝料の請求を行うという方針をとり続けてきたこと、そして早くは昭和57年に慰謝料認容の大阪地裁判決、また昭和59年には取り壊し相当損を初め関連各損害を認める大阪地裁判決を獲得し、その後も地方裁判所、高等裁判所レベルで、売買、請負、新築、中古を問わず、重大な欠陥のある場合には、取り壊し建てかえ損、慰謝料のほか関連損害請求を認めるという、従来ではなかなか認められなかった消費者サイドの判例を獲得し続けてきたこと、その結果、平成7年の阪神震災後を契機に住宅の品質確保の促進等に関する法律が制定される理論的な基盤を提供したことを挙げました。特に契約のクレームと技術クレームとを混同し、欠陥住宅紛争が住宅の品質性能に関する争いであることを理解せず、単なる仕様違いに藉口するいわゆる値切り訴訟と見てきた従来の法律界に対し、欠陥判断の基準、適用法条、特に欠陥判断の基準では、契約図書に適合すべきは当然のこととして、契約図書が前提としている建物の品質性能に関する諸法規やその具体的な解釈基準としての告示、通達はもとより、標準的技術基準も判断基準とすべきとの理論的な解明の結果、品確法の規定する日本住宅性能表示基準において、住宅の品質を特定可能な性能項目とその性能項目における等級分けという形がとられたことに深く影響を与えたと自負している旨報告しました。以上のように、当会の25年の活動はいうならば日本における欠陥住宅紛争解決史の一時代を画したものとして、高く評価されるものと自負している旨の一般報告が行われました。

 次いで、大阪事務局の中井洋恵会員より、昨年度の大阪における事件処理結果の報告がなされました。この報告では、裁判での判決・和解の結果やその具体的な問題点が簡潔に述べられています。その報告の要旨は、欠陥判断については我々が主張している判断基準で認定されるようにはなったが、損害に関してはその認定に幅があり、まだまだ相当補修方法や相当工費の主張立証等に工夫を要することが述べられました。また、欠陥住宅の頻度の高い住宅の種類では、相変わらず階下車庫つきの3階建て建売住宅が目立っているようです。

 続いて、東京事務局での状況について河合敏男会員より報告がなされました。その内容は大阪事務局の中井洋恵会員の事件処理結果報告と同様、裁判所は損害の認定を主張どおり認めることがやはり難しく、ともすればその厳格化を図ろうとしている点、それに対する我々のいま一段の努力が要求される点が述べられました。

 その後、会則規定に基づいて前年度会計報告が、大阪事務局については澤田和也代表幹事より、東京事務局については河合敏男東京事務局長よりなされ、議場の承認を得ました。当会の会計状況は、従来どおり、1万円の入会金と専門委員の受任した事件報酬による受任寄付金とで構成されており、その予算の範囲内で事業執行が行われていること、原則として会務運営についての人件費は支出されていないこと、交通費は東京、大阪の出張に対してのみ支出されていること、大方の費用は総会開健費用やシンポジウム等の行事執行費用に充てられていることなどが報告されました。この会計の透明性と他団体よりの援助や補助金等に頼らずに会員の拠出で自立運営していることが、当会の独立性を担保するものであります。

 次いで、新年度の役員選出が東京・大阪各事務局拡大幹事会で作成された推薦名簿に基づいて行われ、満場一致でその推薦を了承することとして、別紙のごとき新役員が選出されました。

 また、新役員を代表して、澤田和哉代表幹事が新年度の方針について言及しましたが、これは従来からの個別紛争の解決を原則とすること、例会を中心とすることに集約され、これを今後とも厳格に遵守していくことが述べられました。
 
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