ん?これは誰?
れっきとした、J・S・バッハである。
バッハの肖像画といえば、例のむくんだような、ちょっと意地悪そうな、そして偉そうな顔つきをした画が有名である。
私はあれがどうも好きになれない。
お約束ですが、中学生の頃、音楽室に飾ってあったあの画を見て、バッハって好きになれないなー、と聴いてもいないのに思い込んでいたのである。
それほどまでに、第一印象、先入観というのは大きな影響を与えるものである。
しかし、この画を見付けてからは少し考えも変わった。
あれ!いい感じのヤツじゃん。
02年12月19日(木)
さて、ロ短調ミサをたくさん買い込んで破産しそうだという話である。
| ルドルフ・マウスベルガー ドレスデン国立O Dresden Kreuzchor ★ |
マリア・シュターダー(S) Sieglinde Wagner(A) エルンスト・ヘフリガー(T) テオ・アダム(B) |
1958/10+11 Dresden Kreuzkirchi BC 0091712 |
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| ヘルマン・シェルヘン ウィーン国立歌劇場O ウィーンアカデミー室内合唱団 ★ |
Pierrette
Alarie(S) Nan Merriman(CA) Leopold Simoneau(T) Gustav Neidlinger(B) Willi BoskoVsky(Solo-Vn) Franz Holetschek(Org) |
1959/4 ウィーン・コンツェルトハウス・モーツァルトホール UM 471 253-2 |
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| カール・リヒター ミュンヘン・バッハ管弦楽団 ミュンヘン・バッハ合唱団 ★☆ |
マリア・シュターダー(S) ヘルタ・テッパー(A) エルンスト・ヘフリガー(T) ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(B) キート・エンゲン(B) |
1961年ミュンヘン ARCHIV POCA9060/1 |
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| カルロ・マリア・ジュリーニ ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 ニュー・フィルハーモニア合唱団 (→ジュリーニのページ) ★★★ |
Jenny
Hill(S) Janet Baker(CA) Peter Pears(T) Jhon Shirley(B) |
1972/6/10 セント・ポール教会;ロンドン[L] BBCL |
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| ペーター・シュライアー ドレスデン国立O ライプチヒ放送合唱団 ★★ |
アイリーン・オジェー(S) アン・マレー(S) Marjana Lipovsek(A) ペーター・シュライアー(T) Anton Scharinger(B) |
PHILIPS 446
779-2 録音年代不詳 |
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| ペーター・シュライアー Neues Bachisches Collegiumu Musicum ライプチヒ放送合唱団;Jogn Peter Weigle ★ |
ルチア・ポップ(S) Carolyn Watkinson(A) Eberhard Buchner(T) Siegfried Lorenz(Bariton) テオ・アダム(B) |
1981/11,1982/2
Leiptig,Paul-Gerhardt-Kirche BC 0021232BC |
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| ジョン・エリオット・ガーディナー イングリッシュ・バロック・ソロイスツ モンテヴェルディ合唱団 ★ |
ナンシー・アージェンタ(S) リン・ドーソン(S) ジェーン・フェアフィールド(S) ジーン・ニッブズ(S) パトリツィア・クウエッラ(S) キャロル・ホール(MS) メアリー・ニコルズ(MS) マイケル・チャンス(C-T) パトリック・コリン(C-T) アシュリー・スタッフォード(C-T) ウィンフィード・エヴァンズ(T) ハワード・ミルナー(T) アンドリュー・マーガットロイド(T) リチャード・ロイド・モーガン(B) スティーブン・ヴァーコー(B) |
1985年2月ロンドン UCCA-3146/7 |
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| アンドリュー・パロット タヴァナー・コンソート タヴァナー・プレイヤーズ ☆ |
1985 EMI/Virgin |
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| ヘルムート・リリング シュトゥットガルト・バッハ合奏団 ゲヒンゲン聖歌隊 ★★★ |
アーリン・オジェー(S) アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(A) アルド・バルディン(T) ウォルフガング・シェーン(B) |
1988年国際バッハフェスティバル(シュトゥットガルト)[L] コロムビア/プラッツ PLLC-5440/5(LD) |
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| リチャード・ヒコックス コレギウム・ムジクム90 ★ |
ナンシー・アージェンタ(S) キャサリン・デンリー(A) マーク・タッカー(T) スティーブン・ヴァーコー(Br) |
1992年6月 ロンドン・聖ユダ教会 CHAN 0533/4 |
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| エリック・エリクソン ドロットニングホルム・バロック・アンサンブル エリクソン室内合唱団 ★★★ |
バーバラ・ボニー(S) モニカ・グロープ(A) クラス・ヘドルンド(T) ギュナー・ルンドベリ(B) |
1992/11 The
Berwald Hall [L] PROPRIUS 2014/5 |
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| カルロ・マリア・ジュリーニ バイエルン放送交響楽団 バイエルン放送合唱団;Michael Glaser (→ジュリーニのページ) ★★★ |
Ruth
Ziesak(S) Roberta Alexander(S) Jard Van Nes(C-A,A) Keith Lewis(T) David Wilson-Jhonson(B,Baritone) |
1994/6
ミュンヘン SC S2K66354 |
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| カール=フリードリッヒ・ベリンガー Windsbacher Knabenchor Deutsche Kammerakademie Neuss Trompetenesemble Laubin Stefan Gagelmann,Pake ★★★☆ |
クリスティーネ・シェーファー(S) インゲボルグ・ダンツ(A) Markus Schafer(T) Thomas Quasthoff(B) |
1994年7月
Munster zu Heilsbronn hanssler CD94.036 |
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| ヘルムート・リリング バッハ・コレギウム・シュトゥットガルト ゲッチング・カントレイ (→バンゼのページ) ★★☆ |
シビラ・ルーベンス(S) ユリアーネ・バンゼ(S) インゲホルク・ダンツ(A) ジェイムス・テイラー(T) アンドレアス・シュミット(B) トマス・クヴァストフフ(B) |
1999年3月 ジンデルフィンゲン市民ホール hanssler CD92.070 KKCC-4315/6 |
|
| ゲオルグ・クリストフ・ビラー ライプチヒ・ゲバントハウス管弦楽団 聖トーマス教会合唱団 ★★☆ |
ルース・ホルトン(S) マティアス・レクスロート(A,C-T) クリストフ・ゲンツ(T) クラウス・メンテス(B) |
2000年7月28日ライプチヒ・聖トーマス教会[L] TDK TDBA-0013(DVD) |
|
| ハリー・クリストファー ザ・シクスティーン・コーラス&オーケストラ ☆ |
Catherine
Dubosc(S1) Catherine Denley(S2) James Bowman(A/C-T) John Mark Ainsley(T) Michael Georg(B) |
2000年? Regis RRC2002 |
録音年代順に並べた。
このように一堂に並べて数値(★)評価するのは大変難しい。個々に対する絶対評価と、他と比較した場合の相対評価の間に必ず矛盾が生じる。
この評価も時が経てば変わる可能性もある。暫定的なものとお考え下さい。
聞くところによると、同曲の録音は70種類以上はあるらしい。しかし私は最早これ以上増やす気持ちはない。
以前から持っていた、ジュリーニの新旧両盤、リリングのhanssler盤、今回ご紹介した、ベリンガー、エリクソン、ビラー、このあたりが私の「お気に入り」である。
(リリングにはLD版もあるが、入手困難でもあり、ガイドライン(そんなものあったの?)に抵触するので、公式にはコメントしないが、これまた素晴らしい。女声陣は涙ものである。)
パロット、クリストファー。(実はガーディナーも×に近い。)
私はこういうスタイルは全く気にくわない。「通」の方の評論などによると、「構造が浮き彫りになり、透明なハーモニであり、新鮮なナニであり、斬新なカニであり、画期的なワニである」らしいのだが、私に言わせれば「貧相、貧弱、貧乏くさい・・・。」言いたい放題ではあるが。
言うまでもなく、聴き手の感性は千差万別、十人十色、百人一首である。(千変万化、変幻自在でも可。)私が良いというものをあなたが聴いて良いと思う確率は、よくて50%。
そもそも音楽を聴く目的からして違うのだからどうしようもない。前提が違うのである。
私が何と言おうと、どういう演奏なのか、どういう録音なのか、気になる向きには聴いてみていただくしかない。結果は聴いたあなたが大根すりおろし。・・・ウタマロです。
03年2月23日(日)
バッハ:ロ短調ミサ
ペーター・シュライヤー指揮/ドレスデン国立O(DSK)
ライプチヒ放送合唱団
Arleen Auger/Ann Murray
Marjana Lipovsek/Peter Schureier/Anton Scharinger
Ph 446 779-2(12CD)
1:マウスベルガー/ドレスデン国立O(BC)
2:シュライヤー/Neues Bachisches Collegiumu Musicum(BC)
3:本盤
私は、この3枚を「シュライヤー−DSK−BC」3種と、勝手に括っている。この3枚の中では、これが穏健中庸・平均標準・録音優秀として最もお勧めできる。
その代わりといってはなんだが、可も無く不可も無い。文字通りスタンダードと呼んでいい演奏である。「ロ短調ミサ」とは何か?その疑問に突き当たったとき、ここに帰ってみる。そういう価値のある?録音である。
但し、これは12枚組みという不利な条件で(マタイ、ヨハネ受難曲他)、簡単に手を出すわけにはいかない。私もさんざん迷っていたが、ある日店頭で出会ってしまった。これも何かの縁、と購入してしまったわけである。
こんなCD、店頭に並んでるの当たり前じゃないか、首都圏にお住まいの方ならそう思うかもしれない。しかし地方の事情は違うのである。私に欲しいと思わせるCDは店頭になどない、のである。(名古屋でさえ。)
とまれ、これはレーベルがその威信をかけた選集で、フィリップス、シュライヤー、DSK、それぞれのの代表盤としても欠かすことはできない、その筋のファン必携のアイテムである。
★★
02年12月25日(水)
バッハ:ロ短調ミサ
リチャード・ヒコックス指揮/コレギウム・ムジクム90
ナンシー・アージェンタ(S)/キャサリン・デンリー(A)
マーク・タッカー(T)/スティーブン・ヴァーコー(Br)
1992年6月 ロンドン・聖ユダ教会
CHAN 0533/4
クリスマスである。クリスマスとは、確か「キリストのミサ」という意味ではなかったか。だとしたらこれ以上ふさわしい話題はないといえよう。
さて、ロ短調ミサをたくさん買い込んで、ついに倒産、不良債権化しているという話である。
まずはこれを読んでいただこう。
| 日本における英国の指揮者の評価は、ひと頃に比べてかなり高くなってきました。その中にあってリチャード・ヒコックスは、さまざまな経験をベースとした確かな実力を備えている指揮者の代表格だと言えるでしょう。 ロンドン交響楽団合唱団の指揮者だった時代に、プレヴィン、ジュリーニ、コリン・デイヴィス、アバドらの録音をサポートして名前を挙げたヒコックスは、自らリチャード・ヒコックス・シンガーズやシティ・オヴ・ロンドン・シンフォニアなどを組織し、ArgoやEMI、ASVなど各レーベルヘの録音を通じて、特に英国音楽ファンには欠かせない指揮者となっていきます。 頑丈な体型とダイナミックな指揮ぶり、そして人懐っこさと厳しさを兼ね備えた眼光は、彼の音楽そのもの。敬愛する指揮者として、迷わずサー・コリン・デイヴィスの名前を挙げるところにも、彼の目標としている音楽性がそのまま反映されています。 2000年9月より、BBCウエールズ・ナショナル管弦楽団の首席指揮者を務めているヒコックスは(彼の実力を考えれば、ロンドンの5大オケからポストを提供されてもまったくおかしくありません)、1992年に新日本フィルハーモニー交響楽団に招聴されて初来日。以来、数回の来日公演によって、ようやく日本のリスナーは彼の実力を目の当たりにすることができました。 しかし彼は根っからのレコーディング・アーティストでもあり、実演と録音の差はほとんどありません。専属契約を結んでいるChandosには「もっとも愛する音楽」である英国の作品を中心に、声楽を伴った作品(オペラや宗教音楽など)、そして多くの古楽系指揮者同様に長い期間を研究に費やしてきたバロック作品など、広範囲のレパートリーを録音。どの演奏を聴いても、力強い音楽がリスナーの心を捕まえてくれるでしょう。 作品の中に宿る個性をしっかりと描き出すヒコックスは、“英国の正統派”という称号を与えられるべき指揮者なのです。 山緒敦史(英国音楽紹介家) 2002年10月 ◇ 新旧の録音がひしめく「ロ短調ミサ」でも、ヒコックス盤の完成度はすこぶる高い。ピリオド楽器を用いているが、いたずらに先鋭的な解釈を弄したりせず、バッハの宗教曲に我々が求めるイメージを自然体の音楽作りで具現化していく。 |
カタログ及びライナーノーツからの引用ですが、どうです。これだけで目がウルウルしてきてしまいます。もし、これを読んで聴かざれば、非人、非国民のそしりは免れないでしょう。
このところ、ヒコックスの叙勲?に伴い、シャンドスが特別セールを打っているようです。通販にオーダーしたんですが、何と史上最短(速)で入手できました。3〜4日でした。それはそれは驚きました。
ジャケットを見てさらに驚きました。この写真では写りが悪いですが、実物は深みのある素晴らしい絵です。ジャケ買いしてもいいくらいです。
さて、第一声「キ〜リ〜エッ!」
ん、これはいいかもしれない。大いに期待させました。録音も申し分ない。
ところが、ところがですよ、よかったのはそこまで。(って、あんた・・・「キ〜リ〜エッ!」の一声だけ?)
そうなんです。はっきり言ってしまいましょう。スカです。
まず、テンポ感がよくない。
極端すぎます。部分部分では我慢できるんですが、前後のつながりでギクシャクしてしまいます。早すぎるところと遅すぎるところ、その対比の限度(私の感覚での)を越えています。
全体のまとまりがない。これも言ってしまえば、まとめる手腕がないのでは。やはりそこまでの人材ということでしょうか。
各声部がバラバラです。これは異質のものが同時進行する様式感とは違います。(あまり偉そうにポリフォニー、ポリフォニーとは言いたくないですが。)
多分録音のせいでもあると思います。これは全くの想像ですが、マルチマイクで録音したものの寄せ集めのような感じ。個々の音は明確なんですが、全体として合奏、合唱になっていない。ハーモニーとして溶け合っていない。繰り返しますが、全くまとまりがない。
私は彼の経歴に免じ?3回チャンスを与えました。
日をおいて、3回聴き直したということですが、どうにもいけません。3回目には聴き通すのが苦痛でした。過日申し上げましたが、不満な演奏に付き合っている時間など全くありません。
もう中古屋へ処分しても全く惜しいとすら思いません。
聴いた上で、改めてライナーノーツ(上記引用文)を読んで、なるほどなぁ、と思いました。間違いないんです。少なくとも書いてあることはその通りなんです。ところが、それ以外の(書いてない)部分は全くなっていないんです。
一流ソリストは確かに素晴らしいかもしれない。でも全体としてはまとまっていない。悪くいえば自分勝手。
「グロリア」の「地上に平和を」も「ホザンナ」も「神の子羊」も確かに良い。その部分だけ見れ(聴け)ば。それだけよけりゃ十分じゃないか、と言う意見もあるかもしれない。しかし全体としての有機性は全くない。
どこかで聞いたような話で恐縮だが、ルーペを持って部分部分を拡大しながらずーっと進んで行き、終わりまで来たが、全体のことはさっぱりわからなかったという感じ。
全体に鑑みて、なぜここでそういう表現をするのかの必然性が感じられない。「全体は部分の集合」であると言われるが、私は敢えてこう言おう。これは「部分の寄せ集め」である。
さて、私がそこまで言う演奏とは、果たしてどういう演奏なのか、どういう録音なのか、気になる向きには聴いてみていただくしかない。結果は聴いたあなたが判断するよろし。
★
02年12月13日(金)
バッハ:ロ短調ミサ
ゲオルグ・クリストフ・ビラー指揮/ライプチヒ・ゲバントハウス管弦楽団
聖トーマス教会合唱団
ルース・ホルトン(S)/マティアス・レクスロート(A,C-T)
クリストフ・ゲンツ(T)/クラウス・メンテス(B)
2000年7月28日ライプチヒ・聖トーマス教会[L]
TDK TDBA-0013(DVD)
ロ短調ミサをたくさん買い込んで散財したという話である。
このソフトの存在を知ったのは3月頃だった。店頭でデモしているのを見掛けた。「あ、ロ短調ミサの映像だ・・・。」しかし直後にそれは失望に変わった。これもまたボーイソプラノだったのである。「なーんだ。」
しかしロ短調ミサにはまりこむにつれ、どうしても気になってきた。おそらくDVDで観られるのはこれしかないだろう。そしてある時めでたく購入の運びとなったわけである。
映像はきれいだ。だいたいこのジャケットのイメージ通りの映像が見られる。演奏自体はそれほど優れているとは言い難い。しかし映像に注意が向くから総合的な感銘度は高い。ライヴであることも手伝ってポイントは高い。拍手のシーンも感動的だ。
ここでは、ライナーノートから引用して紹介に替えさせていただこう。
「大バッハがカントルをつとめた聖トーマス教会。バッハ没後250年の命日に聖トーマス教会合唱団、ゲヴァントハウス管が奏でるバッハ畢生の大作「ミサ曲ロ短調」。敬虔な祈り、霊的な交感に満ちた至福の調べを伝える感動のドキュメント。」
ボーイソプラノということだが、映像で彼らを見ていると確かに健気な感じを受け、一定の感心はする。しかしながら一体どれだけのことが分かってこのミサを歌っているのか言えば、甚だ疑問である。
私は西洋の(キリスト教)文化についてはほとんど理解していないが、少なくともミサを捧げることの意味、生と死の意味が、ほんの僅かに分かりかけてきたのはようやく35才を過ぎてからのことであった。
少なくとも30才に満たない演奏家を聴く意義を見出せない理由はここにある。音楽芸術とは人生そのものを映し出す鑑だからである。
さて、現在(DVDでの)唯一の映像版ロ短調ミサとは、いかなるものか。気になる向きには・・・以下同文。
★★☆
02年12月12日(木)
バッハ:ロ短調ミサ
エリック・エリクソン指揮/ドロットニングホルム・バロック・アンサンブル
エリクソン室内合唱団
バーバラ・ボニー(S)/モニカ・グロープ(A)
クラス・ヘドルンド(T)/ギュナー・ルンドベリ(B)
1992/11 The Berwald Hall [Live]
(PROPRIUS 2014/5)
ロ短調ミサをたくさん買い込んだという話である。
エリック・エリクソン(合唱団)。聞いた事のない名前だ。あるいは第九などの合唱曲で参加しているのをどこかで聴いたことはあるかもしれない。しかしそれと意識したことはない。
まず、ジャケットを見て引く・・・。このおっさんが・・・?
次に値段を見てもう一歩引く・・・。フルプライスである。確か5600円位だったと思う。
やめとこか・・・。
しかし、ソリストの中にバーバラ・ボニーの名前を見つけて、かろうじてそこで踏み止まった。やはりこれは聴いてみなくてはいけない。
だが、これでもしハズレだったら一体誰がどう責任とってくれるというのだ。先駆者?とはかくも辛いものである。前輪駆動なのである。要するに毒見なのである。生贄なのである。犠牲者なのである。神の羔(子羊)なのである。
ミサやレクイエムを捧げられるべきは、この私なのではないか!?
しかし幸いなことにこれは掘り出し物であった。合唱の神様とのふれこみであった(このおっさんが?)。「精妙」なる合唱が聴かれるということであった。その噂は違(たが)わなかった。
古楽系、オーケストラ系、スペクタクル系、ホラー系?などさまざまなスタイルが聴かれるこの曲であるが、そのどれとも違った合唱系の音楽が聴かれた。雲上を浮遊するような、ミューズの歌声である。(ちょっとホメすぎ?)
うれしいことにこれはライヴである。そしてほとんど手を加えた様子がないところがまたよい。かなり強めにノイズ(間接音、暗騒音)が残っている。
このおっさんもよく一緒に歌詞をなぞるのだが、その声がよく聴こえる。誰かのように下品な唸り声になってしまわないから、それほど気にはならない。
楽章間では、楽譜をめくる音や、ごそごそする音がきちんと録られている。私の装置は今絶好調とまでは言えないので、「そういう音がよく聴こえる」程度だが、良い状態の装置で聴けば「楽譜をめくるところが見える」に違いない。それほどこの録音もまた優秀である。
この団体が古楽系の楽器を使っているのかどうかはよくわからない。少なくとも奏法としてはそういう傾向があるようだ。しかし音色までその傾向になってしまわないため、カビ臭くならない。
古楽系の弦楽の「みゃーん」という気の抜けた猫(私は猫は嫌いではないが)のような音、ティンパニの「ポンポコリン」という間抜けな音を聴くと、私はがっかりしてしまうのだが、これは違う。
弦楽は風琴かハーモニカを思わせる柔らかい音色で、シルク(月並みだが)のような合唱と絶妙なブレンドを見せる。そこにティンパニが意外にも力強く踏み込む(業界では「抉る」というんですか?)のでハッとさせられる。
録音に手を加えていない、ということは、ミスがそのまま残されていることからもわかる。
例えば終曲のこれまたフィナーレで、トランペット(多分)が一部吹き損なっているところがある。
普通ならこういうミスがあれば、ごまかして(修正)やろうと考えるに違いない。しかしそれをしていない。
考えてみれば、2時間の大曲で最後の最後で盛り上がって感極まっているところに、別テイクのバンソウコウなんぞ貼ろうもんなら、ぶち壊しになろういというものである。
このおっさんの判断か、エンジニアの判断かはわからないが、素晴らしい見識であった。
それとも、ただ予算と時間がなかっただけのことか?
私は思う。この大曲の締めくくりで、つい興奮してあるいは感激して、結果それがミスにつながってしまったとしても、一体誰がそれを責められよう。「うん、よくやった。その気持ち、とてもよくわかるよ。」かえってそういう共感を呼べるのではないか。
大逆フィルハーモニーが「展覧会の絵」のプロムナードでトランペットをミスるのとは訳が違うのである。(本当だろうか。本質的には何も変わらないような気もするが。)
やっぱりこのおっさん、只者ではなかった。
ではこのおっさんが何者なのか、どういう演奏なのか、どういう録音なのか、気になる向きには聴いてみていただくしかない。結果は聴いたあなたが判断するよろし。(いとをかし・・・ウタマロです。)
★★★
02年12月11日(水)
バッハ:ロ短調ミサ
カール=フリードリッヒ・ベリンガー指揮/ドイツ・カンマーアカデミー
Windsbacher Knabenchor ウィンズバッハー少年合唱団
Trompetenesemble Laubin
Stefan Gagelmann,Pake
Christine Schafer(S) クリスティーネ・シェーファー
Ingeborg Danz(A) インゲボルグ・ダンツ
Markus Schafer(T)
Thomas Quasthoff(B)
1994年7月 Munster zu Heilsbronn/hanssler CD94.036
お待たせしました。いよいよ2002年のベスト盤の発表です。
来日公演もあり、シェーファーの人気が高まりつつあるようです。私も興味を持っていたんですが、これというレコードもなく、ずっと気になる存在でした。
そんな中、特に何も期待することもなくカタログをぼんやり眺めていたら、ちゃんとあるじゃないですか。しかもロ短調ミサ。これは聴くしかありません。
モノを入手してみると、’94年の録音で、リリースは’01年のようです。また、これは規格替えで現在の型番になったようですが、いまだかつてこのレコードが出ているという情報は見た事がありません。
こりゃすげぇ、と思わせるコアなバッハ通もおられますが、そういう方たちのリストにも載っていません。
いったいこれは何なのか。海のものなのか山のものなのか。
ところが、蓋を開けて(聴いて)みて、腰を抜かすほど驚嘆しました。何なんだこれは!
シェーファーの素晴らしさはもちろん、ポリフォニーはここに極まり、それらを見事とらえ切った目の醒めるような超優秀録音。一聴して今年のベストに決まりでした。
楽曲よし、演奏(者)よし、録音よし、ジャケットよし・・・その他まとめて全部よし。全てにおいて完璧なレコードである。しかも廉価盤。(2CDなので1800円。)
ただひとつ残念なことは合唱がボーイソプラノであることだ。
「やっぱり子供じゃーねー・・・。」いくらおきれいでお上手でも、それ以上のものが期待できない。
音楽というものは、楽譜通りの音が、(あるいは)正確に出ていればそれでいい、というものではない。そんなことなら今やコンピューターに任せておけば完璧にできるだろう。
音楽(芸術)というのは作曲家や演奏者の全人格が出るものである。否、出るべきものである。少なくとも私はそう期待する。
だから円熟した演奏家からはそれなりの深みのある音楽が聴こえてくるものだ。人生の酸いも甘いも知り尽くした、その後に出てくるものが。
私が神童(天才少年少女)をまったく相手にしないのもそこに理由がある。
しかしこの盤は、そういうハンデをものともせず、私を納得させてくれた。でもどうしてもそれが耳についてしまいますけどね。
これまで同曲といえばジュリーニの新旧両盤(旧録たるBBC盤が意外にもよい)、これも以前にご紹介したリリング/バッハコレギウム/バンゼ盤(やはりhanssler)で満足していたのだが、これを聴いて以来すっかりはまりこんでしまいました。
このレコードを入手したのが7月初頭でしたが、それから約3ヶ月の間、新たに10種類ほど買い込んでこの曲ばかり聴いていました。
すると何が起こったか?
それ以降どんな曲を聴いてもつまらなく聴こえるようになってしまったのです。ベートーヴェンだろうとブルックナーだろうと、それがまた誰の演奏であろうと。
それからしばらくの間、他の曲が聴けるようになるまでリハビリが必要でした。いかにこの曲が偉大なものであるかを認識しました。
本盤は彗星のごとく現れた画期的名盤である。
さあ諸君!?、はたしてこれがどういう演奏なのか、どういう録音なのか、気になる向きには聴いてみていただくしかない。結果は聴いたあなたが判断するよろし。(こればっか・・・)
★★★☆
バッハ:ミサ曲ロ短調 BWV232
リヒター/ミュンヘン・バッハO/(ARCHIV)'61
場所の関係で、ピアノ曲のそばにバッハものが置いてあるんですが、ある日、ピアノ曲を棚に戻そうとして、不審な紙箱があるのに気付きました。
「すわ、サリンか、タンソ菌か、消火器爆弾か・・・!?」
バカな・・・。
一体何だろうと思ったら、これでした。
BMWである。しかも(鄭)明勲である。(ミュンフン。念のため・・・。)
「をを!こんなものいつ買ったのだろう。ほとんど聴いた記憶もない。」
今や批判など許されないと言われるリヒターです。リヒターのバッハ聴いてりゃまちがいないと思われています。しかし、そこをなんとか無理やりマイナーな視点から眺めてみれば・・・、やっぱりおかしいんです。
「あっ、明るい!」 とっても明るいんです。
「これは、王宮の花火の音楽ではないのか?」 あるいは「おぉ、ブレネリッ、あなたのっ、おうちはどこっ? ヨッーホッー、ホートラッラッラッ♪」そういうノリなんですよ。とてもイキイキしているんです。楽しそうにやってしまっているんです。
これはミサ曲だろ? もしかしたら大いなる勘違いではないのか。
編成はそれほど大きくないと思われるんですが、「力感」はあります。「音力」といってもいいでしょうか。一生懸命やっているのもよくわかるんです。しかしそれが必ず報われる、というものでもありません。力で押してしまっている感があります。ぜんぜん美しくなんです。あまりそういうことに頓着していないような。
あるいは録音のせいかもしれません。古い時代のものですから。(ステレオですけど。)
しかし、これほど平常心で、あっけらかんと、この曲を聴き通せてしまったことはありません。
これは古典的ザッハリッヒなのか・・・。
★☆
◇
オランダ・ブリュッヘンと17世紀オーケストラの同曲をライヴで聴いたことがあります。しかし、私にはどこがいいのか、さっぱりわかりませんでした。
休憩時に、ロビーでこういう会話が耳に入ってきました。
「いやー、いいハイドンでしたねー。」
「あれっ、ビバルヂィぢゃーなかったんですか?」
完全に終わってました。
いえ、ウソです。
「いやー、いいですねー。特に女声がいい。日本人と全然違いますねー。イキイキしてました。」
「ホントでしたねー。」
へー、そういう聴き方をするもんなのかなー。
2002年1月25日(金)