北風が雪国超えて吹くと聞き とどくはず無き君の香をかぐ

     雪国に吹く風やさし後朝の残り香とどく尾張の地より

     尾張にも咲けどこの身にやさしきは春兼六の白梅の花

     相聞歌途絶えし君のすむ地にも白梅匂う春は来たるや

     春めぐり梅は匂えど憂いあり心通わす文は途絶えて

     雪解けのころには憂いも消えはてて途絶えし文を待つ吾すがし

     焦がれ待つ心に積もる戻り雪とけて消え去れ春わすれずに

     春をまつ心に降るは名残雪とけゆくころの逢瀬あるらむ

  

かげろうと朧月夜の相聞歌
























































    

 
    名残惜し逢瀬のあとの乱れ髪いま春雨に濡れて隠すか

    春雨に濡れし黒髪そのままに乱るる心秘めることなく

    帰りえず黒髪ぬらす君の背に愛しさこみあげ唇をかむ

    いまもなお重ねしくちびる狂おしき想いかみしめ濡らす枕よ

    抱き合い想い重ねしあの真夜の涙を今も流す君ゆえ

    流れ落つ涙の果てにひとり寝の夢には出でよ吾を抱きに

  
  夢の果て恋路さまよう吾もまた一人目覚める虚しさに耐え

    虚しさを耐えいつの日か雛のごと寄り添う夢にひとりたゆたう