金庸の武侠小説 その2
翻訳(続)
越女剣 傑作武侠中篇集 |
林久之、伊藤未央 訳・全1巻 |
春秋時代、白猿に剣術を授けられた少女・阿青が越の剣術指南役となり、宿敵の呉を打ち破るまでを描いた表題作『越女剣』のほか、西域で両親を殺され、カザフ族の集落で育った少女・李文秀の悲恋を描いた『白馬は西風にいななく』(原題『白馬嘯西風』)、これを得た者は天下無敵となるという宝刀・鴛鴦刀の争奪戦をコミカルに描いた『鴛鴦刀』の三篇の中短編を収録する。
正直言って、三篇ともイマイチであります(^^;) 唯一コメディ調の『鴛鴦刀』が、最後までシャレっ気が利いていてお薦めできるぐらいである。ちなみにこの作品は『碧血剣』の続編というか番外編的な作品でもあり、その点も見所のひとつとなっている。
おすすめ度→☆
飛狐外伝 |
阿部敦子 訳・全3巻 |
『雪山飛狐』の主人公・胡斐の、少年時代の恋と冒険を描く。胡斐は紅花会の三番差配・趙半山に武芸を授けられ、義兄弟の契りを交わす。少年侠客として成長した胡斐は、武林の大物・鳳天南が民に暴虐をはたらくのを見て憤り、鳳天南を倒そうとするが、あと一歩のところまで追い詰めるたびに、謎の少女・袁紫衣に阻まれる。胡斐は袁紫衣に怒りを感じつつも惹かれていく。その頃、乾隆帝の寵臣・福康安は、天下掌門人大会を開き、反清の気運が根強い武林を手中に収めんと画策していた……
前半はボスであるはずの鳳天南が、武芸に特別に秀でているわけでもなく、小物であるせいか、いまひとつ盛り上がりに欠ける。しかし後半の天下掌門人大会のあたりから、『書剣恩仇録』でお馴染み紅花会の面々が続々と登場し、福康安の陰謀が明かとなり、と、俄然話が盛り上がってくる。
前作『雪山飛狐』はもちろん、同時代を舞台にした『書剣〜』の登場人物までもがどんどんと登場するあたり、ファンサービスも充実しており、(というより、元々ファンサービスのために書かれた作品と言うべきか……)全体的に佳作として仕上がっている。
一部、ラストがアレという意見もあるようだが、前作と比べたらよっぽどマシだと思う(^^;)
おすすめ度→☆☆☆
この他にも金庸の作品には北宋末のそれぞれ故国を異にする四人の侠客の生き様を描いた『天龍八部』、清朝康煕年間、武芸の腕前も義侠心も不足している主人公が、持ち前の機知で皇帝の寵臣となっていくさまを描いた『鹿鼎記』があり、それぞれ翻訳が刊行予定である。
次回は『天龍八部』が刊行される予定である。
ガイドブック
武侠小説の巨人 金庸の世界 |
岡崎由美 監修・全1巻 |
金庸の全作品を解説したガイドブック。香港などで映画化されたものの紹介や、金庸作品キャラクター名鑑なども付いている。金庸だけでなく、古龍や梁羽生といった他の武侠小説家の作品についても触れられており、武侠小説全体の解説書としてもよく出来ていると思う。
きわめつき武侠小説指南 |
岡崎由美 監修・全1巻 |
『秘曲笑傲江湖』の一巻と同時に発売されたガイドブック。『笑傲江湖』及び、これから刊行予定の三部作『射G英雄伝』・『神G侠侶』・『倚天屠龍記』の先取り解説がメイン。翻訳者と金庸氏とのインタビューなども付いており、前回同様読みごたえはバッチリ。