三侠五義
6 艾虎と沙姉妹
さて馬強の事件があった後に、洪沢湖が水害を起こしたという報が都に伝わった。仁宗皇帝は若手の官僚・顔査散にその水害の調査と治水の監督を命じた。顔査散は義兄弟の白玉堂を引き連れて洪沢湖に赴いた。ところが付近の住民は「湖に妖怪が住み着いて治水工事の邪魔をする。」などと妙なことを言う。果たして白玉堂が調べてみると、水賊の一味が妖怪に変装して人々を脅かしていたのだと分かった。そこで助っ人として蒋平が駆けつけて来た。彼は水賊の首魁・沢(うたく)を捕らえて尋問すると、水賊たちは襄陽王の命を受けて治水の妨害をし、水上交通の要である洪沢湖を占拠してしまうはらだったと言う。
帝は包拯と相談し、顔査散たちを襄陽の地に巡察させることにした。同時に北侠・欧陽春を武官として招聘するために、蒋平を茉花村へと派遣した。蒋平はその途上で、茉花村にいるはずの艾虎と出会う。話を聞くと、襄陽王は既に片腕と頼む金面神の藍驍(らんぎょう)と飛叉太保の鍾雄(しょうゆう)に、襄陽の守りを固めさせたという。そして智化と欧陽春、丁兆は、以前から交流のあった臥虎溝を治める鉄面金剛・沙竜のもとまで出向いて行ったという。艾虎も茉花村で彼らの帰りを待ちきれなかったので、丁家を飛び出して来たのである。二人は一緒に臥虎溝まで行くことにした。
だが、濡口から河を舟で渡っている時に蒋平は盗賊に襲われている雷震という男を助け、これがもとで艾虎と離れ離れになってしまう。艾虎は仕方なしに一人で旅を続ける。その途中で施俊という書生と出会い、彼と義兄弟になった。しかし二人は一旦別れ、それぞれの旅を続けることにする。
施俊は父の友人であった金輝の娘・牡丹を訪ね、彼女と婚約を取り結ぶために旅をしていたのであった。金一家は施俊を暖かく迎えるが、金輝の妾・巧娘は不機嫌である。彼女は牡丹を逆恨みしており、金輝に、「牡丹と施俊が父親の目を盗んで逢い引きをしている。」と偽って告げ口をした。金輝はその話を真に受けて激怒し、娘に自害せよと迫り、施俊も屋敷から追い出してしまった。牡丹の母親は密かに娘を屋敷から脱出させ、夫には自殺したように見せかけた。
だが、牡丹は親戚の家に逃れる途中で乗った舟が盗賊に襲われ、舟から突き落とされたあげくに水流に流されて、張立という漁師に拾われた。張立夫婦には子供が無かったので、牡丹を実の娘のようにかわいがった。その張立の漁師村に、一体どういう巡り合わせか、艾虎がやって来たのである。牡丹が義兄の婚約者とも知らず、張立夫妻に養女が出来たことを祝って酒をガブガブと飲みほす。その様子に漁師たちの頭目・史雲も呆れ果てる。
そうこうしているうちに、藍驍の部下・葛瑤明(かつようめい)が、牡丹のことを聞きつけて張立の家に乗り込んできた。彼が牡丹をさらおうとしたので、艾虎と史雲は葛瑤明に襲いかかった。葛瑤明は形勢不利と見て逃げ出し、山中まで艾虎をおびき寄せ、罠をかけてこれを捕らえた。そこで艾虎を助けたのが、元々の目的地であった臥虎溝を治める沙竜の娘・鳳仙と秋葵であった。二人の少女は得意の弓術でもって葛瑤明の一党を蹴散らした。やがてその場に沙竜自身も駆けつけて、艾虎を臥虎溝へと案内した。
実は沙竜と欧陽春たちとの間で、艾虎と鳳仙とを縁組みさせようという話が持ち上がっていた。沙竜は自分の目で艾虎の人となりを確かめてから、縁組みさせるかどうかを決めようと考えていた。
さて、張立の漁師村は襄陽王の部下である金面神・藍驍の縄張りであり、彼も牡丹を我がものにしようと狙っていた。そこでいっそのこと、牡丹だけと言わず漁師村の人々を全て臥虎溝に非難させることにした。沙竜の雄名は一帯に鳴り響いており、藍驍といえどもうかつに手を出せない。鳳仙と秋葵は早速牡丹と友人になった。
艾虎は臥虎溝に来てるはずの義父たちを見かけないので、沙竜にその事を尋ねた。すると欧陽春・智化・丁兆の三人は三日も前に襄陽へと向かったと言うではないか。それを聞くと艾虎は居ても立ってもいられなくなり、一同に別れを告げて襄陽へと発った。
いままさに起こらんとする鉄面金剛と金面神の戦い!果たして艾虎は義父と再会出来るのであろうか?そして牡丹は施俊と結ばれるのか?はたまた蒋平の行方は?全ては次回のお楽しみ。