公開:東映 1970/01/20
監督:山下耕作
音楽:渡辺岳夫
製作:東映京都内容:極道シリーズ第6作。戦争が終わって、島村清吉(若山富三郎)が釜ヶ崎に帰ってきた。下品で太めで三枚目、てんでカッコ良くない清吉親分が闇市を守って大暴れ。山城新伍、清川虹子ら脇役陣も、人情とペーソスに溢れている。他に大木実、潮健児、天津敏。
音楽の予算はあまり多くはなかったらしい。曲は少なめで、ブリッジ類も無く、さっさとまとめた印象だ。下記にすべてをリストアップできてしまいました。
東映マーク「どどどど・・・」荒波のティンパニが打ち寄せる。どマイナーのトロンボーンでファンファーレして、トランペットでフォローする。この主題は、映画「緋牡丹博徒」('68年)の主題歌B面曲「たった一度の恋」を変形したもので、それをもって極道富三郎のテーマとしている。短い主題をつかまえてそこまで断言する理由は、そのメロディーが劇伴に登場するためだ。
極道ブルース作詞:もず昌平
作曲:島豊
歌:若山富三郎
メインタイトルの主題歌である。若山自らドスを効かせた声で「極道にゃぁ〜♪」と歌うのだ。
リンゴの歌(以下、便宜上つけたタイトルです)空襲後の焼け野原で子供達が歌う「リンゴの歌」に続いて演奏される。同曲のアレンジ音楽だ。
信子の死この映画ではオルガンを多用している。楽器の少なさをカバーするためか。ヴァイオリンの人数が少なくても、オルガンをいっしょに鳴らすと音の厚さを確保可能だ。
夕暮れの上州定国定忠治の血をひくという上州の親分。一時的に喧嘩を仲裁するが、すぐに去っていく。ストーリー上の位置づけが不明確だ。他にもツギハギ的な演出が目立つ。そういった全体の流れとは無関係に、この場面では芝居にピタリと合ったナベタケ人情節がさくれつしている。
自警団の行進映画「緋牡丹博徒」('68年)の主題歌B面曲「たった一度の恋」のメロディーのブラス演奏。独特のグリッサンドをするベースも「たった一度の恋」と同様だ。
肺炎/死男爵夫人の息子は肺炎になる。「信子の死」「夕暮れの上州定」と同じく人情系の音楽だ。
清吉の怒りオルガンはブラスの人数の少なさもごまかせるので便利だ。先に本物ブラスを鳴らしておいて、後から「ぐわぁ〜」と大音量でオルガンをくっつける。
松平男爵夫人の死〜深見の決意とにかく「死ぬ場面で音楽」というパターンが見えてきた。ここでは、いじけていた用心棒・深見が悪に立ち向かう決意を表明するので、後半は明るく展開する。
夫婦の杯最後の決戦を前に夫婦の杯を交わす清吉。悲しさの中に明るさ+少人数弦+オルガン+エレキメロとくれば、TVA「アタックNo.1」('69年)の雰囲気です。ちなみに銃撃アクション場面には、音楽はまったくありません。
悪を殲滅〜エンディング逃げ隠れする悪の親玉を引きずり出して押さえつけておいて拳銃で撃ってからドスで刺し殺したところを警官隊に包囲されたので武器を捨てて逮捕される・・・などと文字で書くと実にカッコ悪いが、これが若山富三郎にハマッているのだ。ラストの音楽は再び極道のテーマで大いに盛り上がってビシッと締める。エンディングの感動は、ニヤリと笑う若山の顔&渡辺岳夫の音楽だけで十分に成り立っている。
CD ABCS-1021~2「若山富三郎主演作品Vol1」
「待っていた極道」音楽:菊池俊輔 19トラック
「釜ケ崎極道」音楽:曽根幸明 15トラック
「極道VSまむし」音楽:広瀬健次郎 21トラック
「極道VS不良番長」音楽:八木正生 19トラック
タイトル | 公開 | 監督 | 音楽 | 製作 | 出演 |
極道 | 東映 1968/03/05 | 山下耕作 | 八木正生 | 東映京都 | 若山富三郎、鶴田浩二、菅原文太 |
帰ってきた極道 | 東映 1968/06/28 | 山下耕作 | 富田勲 | 東映京都 | 若山富三郎、待田京介、大木実 |
兵隊極道 | 東映 1968/09/18 | 佐伯清 | 富田勲 | 東映京都 | 若山富三郎、里見浩太郎、菅原文太 |
待っていた極道 | 東映 1969/01/09 | 山下耕作 | 菊池峻輔 | 東映京都 | 若山富三郎、清川虹子、弓恵子 |
旅に出た極道 | 東映 1969/03/30 | 佐藤純弥 | 富田勲 | 東映京都 | 若山富三郎、菅原文太、清川虹子 |
極道釜ケ崎に帰る | 東映 1970/01/20 | 山下耕作 | 渡辺岳夫 | 東映京都 | 若山富三郎、大木実、山城新伍 |
極道兇状旅 | 東映 1970/10/03 | 山下耕作 | 八木正生 | 東映京都 | 若山富三郎、菅原文太、清川虹子 |
極道罷り通る | 東映 1972/07/03 | 小沢茂弘 | 渡辺宙明 | 東映京都 | 若山富三郎、菅原文太、清川虹子 |
釜ケ崎極道 | 東映 1973/06/20 | 山下耕作 | 曽根幸明 | 東映京都 | 若山富三郎、加賀まり子、山城新伍 |
極道VSまむし | 東映 1974/08/31 | 中島貞夫 | 広瀬健次郎 | 東映京都 | 若山富三郎、菅原文太、川地民夫 |
極道VS不良番長 | 東映 1974/11/22 | 山下耕作 | 八木正生 | 東映京都 | 若山富三郎、梅宮辰夫、ジュディ・オング |
愉快な極道 | 東映 1976/02/14 | 山下耕作 | 青山八郎 | 東映京都 | 若山富三郎、紀比呂子、左とん平 |
VTR TE-B238「極道釜ケ崎に帰る」