広島仁義
人質奪回作戦


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映画 広島仁義 人質奪回作戦


公開:東映 1976/12/04
監督:牧口雄二
音楽:渡辺岳夫
製作:東映京都

内容:8年の刑期を終えて出所した松方弘樹が、やくざから総会屋に転身。義兄の小林旭と対立し、血で血を洗う凄惨な抗争に突入する。ドキュメントタッチで迫る東映やくざ映画です。他に中島ゆたか、佐藤友美、夏八木勲、室田日出男。


オープニングシークエンス

オープニング
 東映の荒波を背景に、緊迫したオルガン。そしてダルシマのグリッサンドによる「ざんばら」一閃!。ダルシマといえば「非情のライセンス('73年)」でおなじみ。凶悪表現には欠かせない(?)楽器です。
 さらに口笛系シンセメロが「γE↑ACBAC↓E|↑B〜」「ゴッドファーザー('72年)/愛のテーマ」(作曲:ニーノ・ロータ)みたいです。「ゴッドファーザー」といえば、説明不要のヤクザ映画の古典であります。

イントロ〜サブテーマA
 ドラマの背景をナレーションで説明する。Am一発の、いわゆるBGM。やや低音のギターが「AA  |AB、C、D、E」音のパターンを繰り返す。

イントロ〜サブテーマB
 チャカチャカエレキも鮮やかに、AmとBmでロックからフュージョンを指向する。ABのサブテーマは連続してひとつの曲になっている。このテーマは本編で何度も繰り返し演奏される。

メインテーマ(スタッフロール)
 テーマ曲に相当する音楽の主題は、ダルシマによる演奏。ただし、凶悪サスペンスではなく、意外にも叙情的な音楽である。その出だしが「ゴッドファーザー」に似ているワケです。ただし少しメロを変えて「γE↑ABCBA↓E|E〜FD〜」としている。これでは「ゴッドファーザー」には聞こえません。オープニング(とその他一部)だけ「ゴッドファーザー」に似せたのは、意図しての事か?。

タイトル
 「広島仁義 人質奪回作戦」のタイトルが出現し、背景は血のような赤に!。ダルシマの「ざんばら」やらオルガンやらフルートやらエレキ楽器やらをAm一発にブチまけて、果てしなき暴力抗争へ導入する。


メインテーマアレンジ

メインテーマをダルシマが無伴奏単音で淡々と演奏。出所した松方の帰宅、涙で迎える妻。

ダルシマに口笛シンセが寄り添うバージョンもあり。

ビブラフォンとアコギの演奏。兄妹のダイアログを邪魔しない程度にBGしている。

オルガンとアコギの演奏。小林旭親分のセリフを邪魔しない程度にBGしている。

映画後半では、さらにフルートやギターも加わって豪華さを増していく。

クライマックスで、松方は血まみれで銃撃戦する。ここでもテーマ音楽は平気で叙情的なのです。牧口雄二監督&渡辺岳夫音楽劇場作品は本作で6本目だが、牧口監督が渡辺音楽を起用した演出意図は、このあたりにあったと想像される。


サブテーマ

 いきなり「ざんばら」ではじまり、チャカチャカエレキでアクションするサブテーマB。ほとんどAmだが、ときおり4小節Bmするという一発系の展開で、悪の爽快感があります。長く演奏するときは、サブテーマAもからめます。
 株主総会において、総会屋が爽快に演説する。「26番!異議あり!」とか、「ただいまの異議は、いいがかりであります!」など。警備員ともみ合いながら、体当たりで総会活動するのです。映画後半では、抗争アクションのための劇伴になっています。


サスペンス劇伴

「びゅい〜ん」という、発音しながらレゾナンスやカットオフを変化させるシンセ音。

ピアノ低音を「ごりごり」独奏。悪のたくらみのBGだが、やくざ連合の悪巧みを邪魔しないように陰で「ごりごり」鳴る。

「GF#D〜」というサスペンス動機。ダルシマでこの3音を繰り返す。あるいいは「ざんばら」の直後にシンセで「GF#D〜」など。このラインは「白い巨塔('78年)」や「ガンダム('79年)」で聴かれる。


その他の特徴

 以上にまとめたごとく、「メインテーマひとつ、サブテーマAとB、その他少々」という構成。劇場作品にしては、さほど豪華な音楽ではないと言えます。しかし、同じ牧口監督作品「戦後猟奇犯罪史(同'76年)」と比較すると、まとまったサウンド構成になっていることがわかります。実際の作曲と演奏だけでなく、映画全体の音楽演出にかける手間暇に差があるものと推測されます。




VTR VRTC-00013「広島仁義人質奪回作戦」




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