Pentium2 L2Cache発熱量について 1998/10/26

 Pentium2のS.E.C.カートリッジを分解すると、Tag-RAMやCPUなど、色々な部品が見えます。これらの部品を眺めていると、L2Cacheはサーマルプレートに熱結合されています。構造に感心しながらも、ひとつの疑問が。どの程度発熱するのだろう?そんな事がきっかけとなり、今回の調査を実施する事になりました。




Pentium2 L2Cache動作温度測定 1998/10/26

ハード構成(1998年10月26日現在)

CPU Pentium2/350MHz B80523P350512E SL2SF 2.0V 98110373 MALAY
マザー ASUS P2B改
メモリ SDRAM 128MByte PC100対応メモリ
メルコ VSF-64M×2枚 (PC100非対応メモリを100MHz超で動作中)
 合計256MByte
HDD
・HDD1 6.4GByte Western製WDAC-36400
 5400rpm 256KByteバッファ、10msシークUltraDMA33-IDE接続 IDE#0マスターに接続
・HDD2 1.2GByte メルコ製DBI-V1200
 IDE#0スレーブに接続
・HDD3 1.0GByte SCSI-2接続
その他 AHA-2910B、SC970、WGP-VG4DX、PowerCapturePRO(全てPCIバスカード)


【測定風景】
 今回使用したハンディデジタル温度計です。横河電機叶サ MODEL2455、K形熱電対使用で、-160〜+1372℃まで測定できます。
  


1. Pentium2 S.E.C.C.カートリッジを分解したところです
 S.E.C.C.カートリッジ分解は簡単には出来ません。最悪CPUを壊すことがあります。自信の無い方は真似しない方が無難です。もしチャレンジされるなら、自己責任で行ってください。やす坊は一切保証もしませんし、分解の奨励もしません。
  


2. サーマルプレートから分解したCPU基板です
 左右2個付いているのがL2、中央がCPUです。CPUはサーマルプレートと接触していますが、L2Cacheはサーマルプレートとの隙間が約1o弱あります。この隙間を、写真で見える灰色の充填材で埋めて熱結合させています。L2Cacheに付いている充填材を除去し、センサーを取り付けてからCPUを組み立て、温度測定を行います。
  


【測定条件】

外気温
電圧
動作クロック
別途デジタル温度計にて測定。測定開始から終了までの約6分間、約24℃
コア電圧2.05V、L2/DIMM電圧3.4V (P2Bでは3.4Vがノーマルです)
103MHz×4倍 = 412MHz
測定手順 1. L2Cacheが周囲温度とほぼ同じことを確認してパソコンを起動させる。
2. WindowsNT4.0WS起動完了後、直にSuperπ104万桁を実行させ、計算完了時の温度を測定する。


【測定結果】
 ・WindowsNTWS起動完了時のL2Cache温度は約30℃ (約6℃上昇)
 ・Superπ計算完了時のL2Cache温度は39.4℃ (約15℃上昇)


【考察】
 L2Cacheとサーマルプレートの熱結合を無くした状態でテストした為、これ以上の測定はL2Cacheを熱破壊する危険があり、テストを中止しました。サーマルプレートと熱結合している程ですから、有る程度の発熱は予想していましたが、予想以上の発熱でした。L2Cacheの発熱を効率良くサーマルプレートに伝達し、更に効率良くサーマルプレートの熱をCPUクーラーで冷却する事が重要でしょう。OverClock時に、L2Cacheでコケる場合にはL2Cacheの発熱対策で大きな効果を得ることが出来るかもしれません。何れにしろ、安定性向上の為、L2Cache発熱対策実施の必要性を痛感する結果となりました。




Pentium2 L2Cache発熱対策 1998/10/26

1. L2Cacheです(充填物を除去して撮影しました)
 私のPentium2/350MHzにはSEC KOREA 805 / KM736V604MT-55 / SBK070JAのL2Cacheが搭載されていました。(一般的な情報と同じ、5.5nS)
  


2. CPUです(充填物を除去して撮影しました)
 私の場合、「L8093264-0051」と、表面に刻印?(レーザー印刷?)されていました。
  


3. 厚さ0.5o×幅10oの銅板を取りつけます
 サーマルプレートとの隙間に銅板を挿入する事により、熱伝導効率の改善を行います。サーマルプレートの凸部と銅板の間には当然、シリコングリスを塗布します。銅板は加工後、バリを十分に取り、綺麗に仕上げてください(加工クズが付着していると、大変です)。銅板は動かない様にエポキシ接着剤で固定して有ります。更に安全を考え、接着剤から剥離しても動かない様に折り曲げ、サーマルプレートに引っ掛けます。(銅板が内部で動くと、最悪ショートします)
注記:写真で見えるビスは自作CPUクーラー5号で説明しています。
  


4. CPU基板を組み立てます
 L2Cache、CPU共にヒートシンクとの接触面にはシリコングリスを塗布します。個人的には高効率のシリコングリス(銅紛を練りこんだ物)を使いたいところですが、はみ出したグリスが心配なので止めました。一般的なシリコングリスを使用しました。一般的なシリコングリスは絶縁性が高いので、L2Cacheのピンに付着しても大丈夫です。前項にて説明した銅板の折り曲げが見えます。
注記:シリコングリスはたっぷり使用すれば良い!は間違いです。
  


5. S.E.C.C.カートリッジを組み立てます
 銅板の折り曲げ部分は、蓋と干渉する為、蓋に切り込み加工を施します。荒業ですが、ペンチでむしり取り、ヤスリで仕上げました。
  


6. 完成です
 (ファンは、作業の邪魔にになる為、取ってあります。)
  


【考察】
 これでL2Cacheの放熱効率は大幅に改善されたと考えております。熱結合状態で温度測定が出来ると、効果の確認が出来ますが、センサー設置が出来なかったので諦めました。後は、CPUクーラーの効率アップが課題となります。