ATX電源の製作 -Version2-

1.今回の製作目標
 ケースを交換した際、とりあえずケース付属のATX電源を使用していましたが、やはり満足出来ませんでした。(-_-;)
今回は前回同様、市販のスイッチング電源を用いてATX電源を構成しますが、折角だからちょっと目標を立ててみました。

【大容量化】
 Power Supply Design Guide Revision 2.01(詳細はこちら→Form Factorsorg)にも記載されていますが、+12V系の強化が必須となってきています。同じ電力を得るには、高電圧の方が消費電流が少ないのでCPU等、大電力を必要とする機器は+12V電源を利用する事が増えています。今後は、+12V容量が対応CPUを左右する事になりそうです。従って、前回の出力13A(150W)から大幅に容量アップする事を目標とします。

【小型化】
 前回は駆動回路におまけ?回路を搭載したり、手持ち部品を流用した結果、大型化してしまいました。今回は大容量化を行う事により、前回以上の大型化が想像されます。少しでも小型化が出来る様、駆動回路や端子台等を見直したいですね。

【低騒音】
 市販ATX電源でも話題となっておりますが、やはり静音化は必須でしょうか。元々うるさいマシンですが、ケース外設置の電源がうるさいのは致命的ですからね。
ただ、大容量化を前提に、前回同様にファンレスで構成出来るかはちょっと疑問。。。



2.電源仕様・その他

−電源部−
名称 前回仕様 今回仕様 備考
+12V 13A(150W) 27A(300W) イーター電機工業叶サ WRF12SX-U
 仕様 入力85〜132V/170〜264V自動切換型、過電流保護、過電圧保護 効率82%
 外形 120×170×93
+5V 30A(150W) コーセル叶サ R150-5N
 仕様 入力85〜132V、過電流保護、過電圧保護 効率78%
 外形 44.5×93×175(W×H×D)/900g(カバーは含まず)
+3.3V 20A(100W) コーセル叶サ R150-5N
 仕様 入力85〜132V、過電流保護、過電圧保護 効率75%
 外形 34.5×93×160(W×H×D)/600g(カバーは含まず)
-5V 無し Power Supply Design Guide Revision 2.01では-5V電源は定義されていませんので、完全に不要です。
-12V 1.3A(15W) 無し -12VはRS232C以外では使われていないと思いますので、搭載しません。
 不具合が出た時点で考える事にしましょう
+5VSB 2A(10W) コーセル叶サ R150-5N
 仕様 入力85〜132V、過電流保護、過電圧保護 効率72%
 外形 50×17×115o(W×H×D)/80g
駆動回路 自作回路+SSR
最大25A
SSRキット
最大35A
鰹H月電子通商製 ソリッド・ステート・リレー(半導体リレー)キット 35Aタイプ
 お馴染み、秋月電子さんのSSRキットです。
 入力制御電圧がDC3〜8V/5mAとパソコンと直結可。小型で専用基板タイプ
コンデンサ 47000MF/16V BHC Aerovox社製 47000MF/16V
 仕様 等価直列抵抗(ESR)15ミリオーム(at20℃) 許容リップル電流9.6A(at100Hz)、10.4A(at10kHz)
 +12V/+5V/+3.3Vラインに1個取付

−制御回路部−
名称 制御方法
PWR_OK 信号仕様 TTL compatible
電源正常でHレベルになる信号です。この信号を接続しないと、マザーボードが起動しません。
今回は個々の電源に保護装置を備えており、マザーを破損する危険が無いと判断して使用しません。(+5V電源に接続します)
PS_ON# 信号仕様 active-low, TTL-compatible
電源ON/OFF信号です。Lレベルで電源ONです。

−鰹H月電子通商製 ソリッド・ステート・リレー(半導体リレー)キット 35Aタイプとの接続方法−
 ・駆動入力の+側を5VSB電源に接続します。(5Vではなくて5VSBですよ!)
 ・駆動入力の-側をマザーのPS_ON#信号に接続します。このキットの場合、直接駆動出来ます。

−自作ATX電源Ver2 回路図−






3.電源の製作

1) SSRキットを製作、取付

SSRキットはこんなにシンプルです。すばらしい!
前回は駆動基板にSSRと別々だった上、個々の部品が大きく、取付に苦労しましたが。。。
この小さい基板にマザーからのPS_ON#信号を接続するだけで駆動部の完成です。

35Aまで対応ですが、実際には数Aです。でも、念の為に放熱用アルミ板を取り付けます。
実使用では温度上昇はホンの僅かですので、ケース、その他金属部に取り付ける程度で十分です。
2) 市販ATX電源のケースを利用して組み込みます

ケース付属のATX電源を解体してフレームを流用します。
 ACソケット、電源スイッチ、ラインフィルタはそのまま流用しています。
 ファンは残していますが、今のところ未使用です。
3) こんな感じです

AC100Vラインの電線が太く見えますが、ガラス管ヒューズ(10A)を内蔵しています。
ちゃんとしたヒューズホルダーを使用したかったのですが、手持ちが無かった事、絶縁処理が面倒と言った理由で電線を直接半田付けしてテーピング絶縁する結果になりました。

まあ、交換が頻繁に発生する訳では無いので、問題無いでしょう。^^;
切れた時に考えます。
4) HDD用電源配線を行います

+12V、+5V電源をHDDやCD-ROM等のドライブ類に供給する為の端子台として使用します。
やす坊の使用しているケースはマザー側とドライブ側の2つに区別されたサーバーケースです。このケースの場合、ATX電源を設置する側はドライブ側ですので、ドライブ用の4ピンコネクタのみ接続しています。
5) ドライブ側の電源が完成しました

ドライブ用電源だけの端子台とした事で配線がすっきりしました。
でも、HDDだけでもかなりの台数が有るので、見た目はそれほどすっきりはしてませんね。^^;
ATX電源が無くなった分、発熱を抑える効果が期待できそうです。
6) 電源をケース上部に設置します

電源は金具で連結固定し、棒状の防震ゴムをクッションにして乗せてあります。
ケースが大きいので、設置場所には苦労しませんでした。
7) 5VSB電源は3.3V電源のカバーに固定しました

5VSB電源はオープンフレームタイプですので、固定方法に悩みましたが。。。
なるべく薄くする為に10ミリ絶縁スペーサーを7ミリに加工して使用しています。
高圧部分が露出していますので、安全性には問題があります。
将来的にはパンチングメタル等で全体を覆うカバーを設置したいですね。
8) 12V電源はファンによる強制空冷です

ファンを使用すると塵が溜まるので、80ミリ角ファン用の市販フィルターを設置します。
これで、長期使用による塵溜まりを防ぐ事が出来ます。
9) 12V電源の強制空冷ファンの電圧制御回路です

工業用製品ですので、静音より長期安定性優先! 室内では驚くほどの運転音でビックリ!
三端子レギュレター素子による電圧可変回路を構成してファン回転数を制御します。
ファン回転数の監視回路が搭載されており、回転数を極端に下げると出力が停止します。

<ファンの電圧制御回路図>
10) 改造を終えた12V電源です

フィルターと電圧制御回路の改造を終えた電源の外観です。
制御回路は電源内部に内蔵した方が綺麗に仕上がりますが、電圧変更が容易に出来る構造です。
11) 配線状態です

配線は以下の通りです
 マザー用+12V  3.5sq太さ電線を2本並列配線(+/-側、それぞれ2本並列で端子台まで配線)
 マザー用+5V  3.5sq太さ電線を2本並列配線(+/-側、それぞれ2本並列で端子台まで配線)
 マザー用+3.3V  3.5sq太さ電線を2本並列配線(+/-側、それぞれ2本並列で端子台まで配線)
 マザー用+5VSB  0.5sq太さ電線
 HDD用+12V  3.5sq太さ電線
 HDD用+5V  3.5sq太さ電線
 AC回路等  1.25ssq太さ電線
 センス回路  シールド線(+12V、+5V、+3.3V電源。マザー用端子台)
12) 配線の引き回し状態です

美しいとはとても言えませんが。。。
マザー用配線は未使用のDsubコネクタ取付穴を利用しました。
HDD用配線は冷却ファンの通気口を利用しました。

AC回路とDC回路は一応分離しています。が、余計に見苦しい配線となりました^^;
13) マザー用電源端子台とコンデンサです

マザー用電源コネクタ、ATX12Vコネクタ、グラフィックカード用電源に分配するコネクタです。
コンデンサが2個しか見えませんが、別の場所にもう一つあります。
センス信号はこの端子台へ接続してあります。
 本当はマザーへ半田付けして電圧を取りたかった所ですが、とりあえずは様子見です。



4.最後に
 前回の製作は初めてだった事もあり、見栄え良く作る事が出ませんでしたが、今回はまずまずの出来でしょうか。制御回路の小型化や+12Vの大容量化が達成でき、今後のCPU交換や周辺機器増設時も改造する事無く対応が出来そうです。
5VSB電源の露出さえ何とか工夫すれば満足の出来る仕上がりになりそうです。

 さて、肝心の使用感ですが、全く問題なしです。
8台のHDDにAthlon64の組合せでも電源系のトラブルは全く発生していません。強いて言うならば、+12V電源の強制冷却ファンの動作音が大きい事でしょうか。制御回路で回転数を落として使用していますが、元々動作音(風切り音、軸受けの振動等)が大きい、使えんファンの用です。時期を見て、静かなファンに交換したいですね。