1.OverClockの基本と原発乗っ取りの必要性

1. OverClockの方法について
 ベースクロック、及び倍率変更によるクロックアップが基本です。 CPU動作周波数=FSB×倍率 つまり、ベースクロック、倍率が任意に設定できるマザーであれば、すぐに実験する事が可能です(改造不要)。その後、更に上を求めたり、安定性を改善する為に電圧アップや冷却強化等の改造を行うことになります。


2. ASUS P2Bマザーの場合
 P2Bの場合、下記ベース周波数、倍率設定が可能です。

FSB
(MHz)
50.0 66.8 75.0 83.3 100.2 103 112 133
PCI Clock
(MHz)
25.0 33.4 37.5 41.65 33.3 34.3 37.3 44.3
倍率 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0

 つまり、この設定が全て有効と考えれば
CPU動作周波数下限=FSB50.0MHz×1.5=100MHz / CPU動作周波数上限=FSB133MHz×8.0=1064MHz
ジャンパー設定変更のみで、任意の組合わせが実現できます。 注意! 単に組合せの話しです。実際に動作するとは限りません。


3. 何故、原発乗っ取りが必要か?
  ジャンパー変更では、設定周波数に限界があります。例えば、ベース周波数112MHzでは動作するが、133MHzでは動作しない場合、112MHzで諦める事になります。でも、120MHzでは動作するかも知れません。このように、設定範囲外の周波数を設定出来る様に改造する事により、限界への挑戦が可能となります。これが原発乗っ取りです。




2.原発乗っ取りの方法 1998/12/05

1. 原発乗っ取りの方法
 簡単に言えば、基準となる水晶発振子を交換する事です。例えば、標準の水晶発振子(14.318MHz)を16MHzに交換する事により、ジャンパー設定値より約1.12倍の周波数を得る事が出来ます。しかし、この方法はベース周波数以外のクロック信号も同じ倍率で変化させてしまう為に不具合が発生します。周波数が変化する事により、不具合が生じるクロックには14.318MHz(基準クロック)、24MHz(FDD用)、48MHz(USB用)があります。原発乗っ取りを成功させる為には、これらの周波数を固定させる為にマザー外部よりクロックを供給する必要があります。外部供給方法には色々ありますが、やす坊は安定性重視の観点から3.3Vレベルでの供給が可能なローカル拡張基板を使用しました。ローカル拡張基板は、WorkshopExcraftさんにて開発された、クロック発生基板です。


2. これがWorkshopEXcraftさんから購入した "ローカル拡張基板" です

    WorkshopExcraftさんでは改造サービスを行っています。
改造に自信のない方でも原発乗っ取りが可能です。
詳細は、WorkshopExcraftさんのHPを参照して下さい。

     ←詳細はここ!

 この基板に3.3V電源を供給するだけで、14.318MHz2系統、24MHz、48MHzクロックを得る事が出来る、非常に便利な基板です。購入当時では、3.3Vレベルのクロックを発生する市販モジュールは無く、救世主的な存在です。




3.ASUS P2Bの原発乗っ取り 1998/12/05

1. ローカル拡張基板をP2Bへ接続します
  "ローカル拡張基板" はマザー取り付けビス穴を利用します。
  

 水晶振動子は取り外し、チェックピンを半田付けします。本当はソケットにする方が良いのですが、FEXT'97を接続する為、チェックピンとしました。とりあえず動作チェックを行う為に16.000MHzの水晶発振子を半田付けします。
  


2. 動作チェック
 配線を再チェックして、必要最小限(CPU+最小限メモリ+ビデオカードのみ)で電源を投入します。見事にBIOSが起動しました。とりあえず、最悪の結果は無いようです。 マシンを復元し、詳細動作チェックを実施する事にします。


3. 問題発生
 起動する度に、BIOSでのCPU周波数表示やWCPUIDでのクロック周波数が狂っています。どうも、基準クロックである14.318MHzが正常ではない様です。さあ、困りました。配線を再チェックしても問題無し。波形をシンクロで測定しても特に不具合は見当たらない! その上、クロック乗っ取り時の不具合で良く聞く、FDDトラブルも無し。!原因がわからない!色々テストを行っている最中、インターネットで情報収集しようとしたら、接続できない!シリアルポートが動作不安定のようです。!まあ、改造すると決めた時点から覚悟を決めていましたので、ゆっくり対策を検討する事としましょう。


4. 不具合対策 その1
 ローカル拡張基板の14.318MHz出力は2系統、しかしP2Bの14.318MHzは3系統必要である点に着眼し、対策を考える。3系統のクロックを2系統出力に接続する方法を、以下の全ての組み合わせで実施しましたが、結果は同じ。但し、接続方法によって表示されるCPUクロックに違いが見られる事から、14.318MHzの問題である事は確かな様です。


5. 不具合対策 その2
 拡張基板上に実装されている整合抵抗(22オーム)を除去し、本来の抵抗値の整合抵抗を使用します。チップ抵抗は扱いにくいので、1/4Wカーボン抵抗にて構成しました。抵抗値はR80=33オーム、R97=47オーム、R78=10オームです。結果は最悪! まったく起動しない状態となってしまいました。
  


6. 不具合対策 その3
 KAZ氏著「パソコン改造スーパーテクニック」や、その他情報を加味し、下記方法で試す。
 ・出力1は33オーム抵抗を経由してR80のPLL-IC反対側パターンに接続。
 ・出力2は22オーム抵抗経由後、2系統に分岐する。
   33オーム抵抗を経由してR97、33オーム抵抗を経由してR78のPLL-IC反対側パターンに接続。
 結果はかなり改善されたようです!表示されるCPUクロックは正常、COM1接続のモデムも正常に動作しているようです。しかし、COM2接続のデジタルカメラの通信が出来ません。まだシリアルポートが不安定のようです。
  


7. 不具合対策 その4
 こうなったら最終手段です。バッファを追加して14.318MHzを分岐する事とします。手持ちの都合上、バッファ用にTC74HC08AP(2入力AND×4)を使用しました。当然3.3V駆動とし、電源ピンにパスコン(0.33MF積層セラミック)を取り付け、両面テープで固定しました。拡張基板出力を22オーム抵抗経由で74HC08APの入力へ接続します。
 ・出力1は33オーム抵抗を経由してR80のPLL-IC反対側パターンに接続。
 ・出力2は47オーム抵抗を経由してR97のPLL-IC反対側パターンに接続。
 ・出力3は10オーム抵抗を経由してR78のPLL-IC反対側パターンに接続。
  
 結果は大成功!問題は全て解決され、全てのハードが正常に認識、動作しています。クロック乗っ取り改造開始から約1週間、やっと解決。今回の問題は、やす坊所有マザー特有の問題なのか、P2B自体の問題なのかは分かりませんが、バッファIC使用は正解のようです。


8. まとめ
 改造を終え、今感じる事は非常に難しい!の一言です。改造ショップに依頼するのがやはり妥当、と言うより、正しい選択でしょうか?しかし、この困難を乗り越え、OverClock成功を手に入れた今は最高の気分です。今後は、この環境を生かし、色々な実験を行っていく予定です。そしてOverClockと安定性を両立させる為の情報を公開する予定です。




4.配線引き回し修正による安定度改善 1998/12/15

1. 問題発生
 起動後、しばらくするとキーボード、マウスが動作しなくなることが時々発生する様になりました。ノーマルクロックに戻しても発生する事から、今回の改造が怪しそうです。P2Bマザーの場合、PS2インターフェイス等の制御はWinbond社製W83977TF-AWで行っており、このチップはの24MHzクロックで駆動されているので、FEXT97PLLとは無関係の様ですが、安定性を高める為に全体を見直す事とします。


2. 見直し項目
 配線状況を再確認し、下記の方法で対策を実施する事にします。
 1. 配線引き回し方法変更。極力短く、他の配線と一緒に引き回さない。アースは最短距離で接続する。
 2. バッファIC設置位置変更。PLL素子上にバッファICを設置し、14MHz配線長を短くする。

 バッファICをマザー上、PLL素子真上に配置して、バッファ後の配線長を短くしました。また、写真では分かりませんが、拡張基盤、バッファ用電源の引き回しを修正しました。24MHz、48MHz配線も同様に配線長を短くしました。
  

 改造を終えた原発乗っ取り周辺です。
  


3. まとめ
 電源やアースの接続には十分注意しましょう。かなりの影響があります。配線が空中配線の様ですが、他の配線との干渉(誘導)を避ける為に行った結果です。今回の改造と、FEXT97PLL安定化改造の結果、現在のところ不具合は発生しておりません。