クリスマス島

海でのフライフィッシングをクリスマス島で経験しました。1995年のことです。ハワイで1日トランジットし、翌日キリバス共和国、クリスマス島の空港に到着しました。
着いたとたん衝撃が走ります。
なにもないのです。おみやげ屋もレストランもいっさいなにもないのです。管制塔までないのです。
空港のまえにはやしの木が貿易風に揺れているだけなのです(ハワイから週1便しか飛んでいない)
ちなみに空港関係の人は全て裸足でした。
こんな景色をみると私はうれしくなります。みたこともない景色にふれるとわくわくします。これからの1週間が楽しみです。(宿泊は1週間単位)
まず荷物をホテルに運びます。キャプテンクックホテルといいます。島で唯一のホテルです。ホテルといっても民宿みたいなレベルのものです。コテージという名の小屋です。
 そして一息ついたとたんに釣りに行くことになってしまいました。ねらうはボーンフィッシュ。
キスとニゴイをたして2で割ったような魚です。すごい走りだと話しには聞いていますが、はたしてそれがどんなものか想像できません。
ガイドといっしょに膝までくらいのエメラルド色の海を歩きます。突然フィフティーンフィートと指をさされます。私にはきれいな海しか見えません。どうも15フィート先にボーンフィッシュがいるらしいのですが、どうもはっきり見えません。日本の川で培ったあまご探しの目がさっぱり役にたちません。いわれるがままの距離、方向にキャストします。そしていわれるがままのリトリーブをします。ストップ、ロング、ショート、ファースト、スロウ、ロボットになって対応します。何回か繰り返すうちに、突然フィッシュオンとガイドの声とともにリールが逆転し始めます。逆転の早さがどんどん早くなり、リールのクリック音が悲鳴をあげます。F1の排気音のうなりのようです。リールからこんな音を聞くのは始めての経験です。
しばらくのやりとりの後、銀色に光る魚を手にしたわけですが、ニゴイに似たちょっとねぼけたような顔なのですが、すごい引きを味わったあとには、引き締まった素敵な顔に見えました。
そして毎日毎日、釣り釣りの日々を送りました。最初なかなか探すことができなかったボーンフィッシュもだんだん探せるようになりました。ガイドがいなくてもなんとかボーンフィッシュを釣れるようになりました。ボーンフィッシュと同じ体型でミルクフィッシュという魚がいて、私のボーンフィッシュ探しを混乱させるのです。このミルクフィッシュはフライには反応しない魚ですから、やっかいなのです。
魚釣りにも感動したのですが、景色にも感動しました。
標高は高い所で7メートル、ほとんど平らな珊瑚の砂で出来た島。やしの木以外何もない島、そして、エメラルドグリーンの海、幻想の景色の中にいるようでした。そして最初は美しいと感じた風景もしばらくいると荒涼とした景色に変わって見えてきました.荒涼としていますが、美しいことにかわりはありません。
 もうひとつ感激したことに、GTことジャイアントトレバリーを釣ったことです。これはフライではありません、どでかいルアーでです。
木の葉のような船ですごい波のなかへ行きます。波のくだけているところへ全力でルアーをキャストして全力でまきとります。
すると突然水柱があがります。玄関ドアくらいの大きさの魚が暴力的な力でリールからラインを引き出していきます。
小さめな魚、何匹かにタッチしましたが、多くの魚はラインを切って逃げていきました。
逃げるだけならまだしも、リールは壊すは、ロッドは折るはで、おおさわぎでした。
アドレナリンが吹き出るような釣りでした。興奮しました。釣なんてものではなく、戦いといった感じのものでした。(命の危険を感じた)
そして自分のなかに、“大きな魚に挑んでいく魂”があったことにおどろきました。新しい自分を発見しました。
新しい自分を見つけられるとは嬉しいことです。そんな意味でも楽しい、うれしい釣行でした。
そして何日も釣りの日々を過ごすと、釣りに飽きてきた自分もみることができました。
毎日毎日釣りでは、仕事と同じではないかと感じてしまい、楽しめなくなってきたのです。
私は仲間のみんなが魚釣りをしている中、一日、一人貝拾いをしました。いつもの私かもしれません。
 違う場所に自分を置くと、新しい自分が見えたり、友人の新しい部分がみえてきたりして面白いものです。
そんな意味でもまたどこか変な場所に自分を置いてみたいな。

クリスマス島の写真